第四話 魔法神聖協会
ニレス『…というのが今回の依頼内容だ』
レリス『毎回、運搬作業なのね…いい加減飽きてきた……』
ニレス『だが、それが仕事だ……だが、まぁ他に無いわけではない』
レリス『え?何何!?教えてよ!』
ニレス『…めちゃくちゃ食いついてくるじゃねぇか……魔法神聖協会は知ってるよな?』
レリス『えぇ、知ってるわよ?』
魔法を探求する者たちのための協会。魔法への誠意と充分な実力があれば誰でも参加は可能らしい。
レリス『それがどうしたの?』
ニレス『どうやら、問題が発生しているらしくてな…なんでも重要機密が盗もうとしている奴がいるらしい』
レリスが質問を投げかけようとした時、それを遮るようにニレスは言葉を続けた。
ニレス『ま、細かいことは魔法神聖教会に行ってから教えてもらってくれ』
レリス『………』
レリスは言葉を遮ったことに腹を立て、ニレスを無言で見つめた。しかし、彼は目を合わせようとはしなかった。
レリス『はぁ…じゃあ依頼はその盗人を捕えるってことでいいの?』
ニレス『……』
ニレスが空を見上げた。その時、先程から隣にいたツノの生えた女の子がニレスの裾を掴んで何度も引っ張った。
ニレス『分かった…分かった……今から行く……レリス、後は頼んだぞ』
レリス『はいはい……』
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レリス『…ということなんだけど……協力してくれる?』
俺『まぁ別にいいけど…』
レリエル『もちろん協力するわ!あ、言っとくけど、楽しみとか思ってないから!やっぱり、レリスの役に立ちたいなぁって思ってるだけで…だから、私は冷静よ!』
ライラ『ぼ、僕もついていきます…』
ジノル『ま、みんな行くなら僕も行くよ!』
各々が承諾を出し、皆が一切にネルエの方を向いた。
ネルエ『……なんだ?』
レリス『ネルエは?』
ネルエ『……』
ネルエは言うまでもないと言いそうな雰囲気で無言で頷き、席を立った。
レリス『あ、待って、まだ座って、一応注意事項だけ……』
ネルエは少し頬を赤らめ、靦汗した様子を見せながら、席についた。
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レリス『たーのもー』
レリスが若干の棒読みのような声色で勢いよく声を上げた。唐突に声を上げたので俺の心臓が少しだけ波打ったのを感じたのは黙っておこう。
『何者だ、貴様ら』
黒装束に身を包んだ男がそう問いただすと、レリスは無言で何かの紙を差し出した。男は決して扉の外に出ようとはせずに、それを受け取り、その紙に目を通すと…。
『これは…人外保護団体の…なるほど、お前たちか』
レリス『そうそう、出来れば中を案内してくれない?』
『元よりその予定だ、ついてこい。説明は中でする』
そう言われるがままに俺たちは協会の本部へと足を踏み入れた。
俺たちは黒装束に案内され、一つの部屋へと案内された…すると、そこには、白装束を身に包み、白と黄金によって出来た仮面をつけた人間が二人いた。
『こちらのお二方も貴方方と同じ今回の件の協力者だ』
すると白装束を身に纏った人間の一人がレリスの方へと近づき、握手を求めた。レリスはそれに応えると口を開いた。
レリス『私の名前はレリス…貴方は?』
アラガン『私はアラガンで…こっちは…』
アラガンはそう言ってもう一人の白装束を指差すと、そいつは口を開いた。
グラース『グラース……』
アラガン『あ、ちなみに私たち乙女だから、発言には気を遣ってね?』
俺が丁度、性別を聞こうとした時に、先手を打たれてしまった。やるな…。
待て、よく考えれば中々に失礼な発言をしようとしまっていたな。もし、その言葉を口にしてしまったら…きっと俺の双眸は使い道を無くし、脳は避け、体は破裂していたことだろう。
そういう雰囲気の謎の威圧感を俺は感じたが、俺たちはその三人に続いて自己紹介を行っていった。
『説明は終わったようだな…今回、貴様らへの依頼は、重要機密を盗んだ犯人の確保だ』
レリス『……誰が犯人なのかは分かっているの?』
『……盗まれた瞬間に外に出られない結界が自動で発動する仕組みになっているため、犯人が外に出る可能性はほとんどない。何せ、こういった未曾有の事態だ、こちらは混乱状態で皆冷静ではない』
レリエル『待ちなさいよ、じゃあなんで私たちは中に入れたの?』
『……?それは先程も言ったぞ、あくまで外に出られないだけで入ってくることは容易だからな』
レリエル『え?…あっ!あぁ〜、いや、私はもちろん…わかってたわよ!皆を試しただけだから!決して!知らなかったて思われるのは心外よね!』
俺『え?ちょっと待ってくれよ、それじゃあ俺たち帰れないじゃないか』
俺がそれを口にした途端、皆が静まり、静寂の時が訪れた。それを一つのため息で壊したのはレリスだった。
レリス『……私、説明してたわよ?』
あ、やばい。話を聞いてなかったことが露呈してしまった。
俺『続きをお願いします……』
『貴様らにはその犯人の追跡とその確保を依頼する!』
その魔導士はそう言うと、淡々とした表情で注意事項がある…と言葉を続けた。
『鍵の締まった部屋に犯人がいることは絶対にない。断言する。だから、不用意に立ち入らないでくれ、立ち入り禁止の部屋はここに記載された通りだ』
魔導士は懐から地図を取り出し、禁止とかかれた所に指を置いた。何それ、怪しさ全開すぎるんだけど。
『何せ、ここには機密情報がある、もし見てしまったら命の保証はしない……何か質問はあるか?』
暗い音調で威圧的に言い放ったが最終的には元の冷静な表情へと変わっていた。
グラース『一つ質問、自分たちでやろうとは思わなかったのですか?自分たちでやれば機密情報とやらもばれる心配なかったはずでは?』
『悪いが、依頼に関係ない質問には答えてやる義理はない』
グラース『何かやましいことでもあるの?』
そのグラースの言葉にその男は一瞬、苦虫を噛み潰したような表情をしたが、その言葉には反応を示さず、黙秘を貫いた。
アラガン『もう一つ、質問いい?』
『なんだ?』
アラガン『報酬は早い者勝ちなの?』
『基本は平等に分け与えるつもりだが、もし、いち早く見つけ、捕えることが出来たのなら、そいつには他より多くの金を渡そう』
アラガン『そう…なら、私は一足先に〜!』
アラガンはその魔導士の言葉を聞くなり、颯爽と立ち上がり、素早くその場を去った。
レリエル『えぇ?は、早!』
ライラ『ぼ、僕頑張ります!』
レリエル『ライラまで!?ま、待ってライラ!私も…いや、一人が寂しいからというわけじゃなくて…』
俺『いいから…Go!』
レリエル『あ、はい!』
ライラは颯爽と飛び出し、走っていったが、レリエルは行くべきかと悩んでいた所を、俺が無理矢理、ぶった斬って、答えを出させた。
次々と出て行った彼女らを見送り、俺は口を開いた。
俺『そんな喋り方できたんですね』
『…?』
彼,,,いや、ノノは首を傾げた。皆さんは彼を覚えているだろうか。かの昔、ループ事件の時にいた何かと癖の強い人物だった。ノルマレスがループ時の記憶を消去したため、俺のことは覚えていないのだろう。まぁ例えループの記憶があっても俺のことなんて覚えていなさそうだが…。
俺『いや、何でもないです』
俺は気にせずその部屋から黙々と立ち去った。
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俺『え?なんで、お前らここに……』
そこにいたのは、同じ学園の生徒であり、同じクラスの生徒。中二病コンビで知られる二人だが、その正体は兄が中二病であり、妹はただそれに振り回されているだけの可哀想な人物である。その名は妹のマータと兄のムルム。
マータ『あ…マラさん』
ムルム『………!!古の友!再会を心から
望んでいたぞ!』
俺『スウェぞ。って何だよ…何語だよ』
『いや、そんなことはどうでも良くて…何でお前らはここに?』
マータ『本来なら、お父さんの仕事だったんですが…体調を崩してしまって…その代わりに私たちが』
俺『じゃあお前らも盗人の件でここに来たのか?』
マータ『ということはマラさんたちが、外の協力者何ですね…それなら安心…なのですが、いまいちお偉方の考えが分からないんですよね』
俺『…何がだ?』
マータ『いえ、今までは非常事態が起きても外からの協力は得ていなかったと思うんですが…』
俺『……確かにな…そうせざるを得ない程の事態なのか……の割には静かだな…』
マータ『まぁ、犯人は今、潜伏中ですからね』
俺『それもそうか。もう一つ聞きたいんだけどよ…』
『立ち入り禁止の部屋には絶対に犯人はいないって言ってたけど、何か確信でもあるのか?』
マータ『多分だけど…そもそも許可を得た内部の者でないと、扉は開かないからだと思うよ……まぁ必ずしも外部から来た人とは限らないから……。詳しくは分からない……です。』
俺『なるほどね…教えてくれてありがとう、マータ』
マータ『あ、はい!こちらこそ、喋ってくれてありがとうございます!』
ちょっと意味の分からない返しをされたが、ここは素直に感謝したい。
ムルム『……』
俺『あ、ムルムにも一応聞いておくわ、何か知ってる?』
ムルム『……』
俺『ご、ごめんて。……放置してごめんね!』
ムルム『許そう!』
許された。
ムルム『我も詳しくは知らない!だが、一つだけ両親から聞いた面白い物語がある!』
俺『そ、そうか、なら教えてくれ!』
そこまで興味はないが、断ってしまってはムルムが可哀想だと俺は考え、素直に聞くことにしたのだった。
ムルム『それはそれは遠き昔の物語……』
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遥か昔、この世界には神がいた。神は原初の空と終焉の海の間にこの世界を作った。神は創造、成長、衰退、破滅を司る神を作り出し、世界を循環させる仕組みを作ったのだ。しかし、大災厄が起こり、その循環は壊れた。
だが、その壊れた循環を元通りにした者がこの地に舞い降りることになる。
「我、アンエーデルという名の異界より舞い降りた神。世界を再生すべく、この地に降り立った」
それは異なる世界から来た者。その者は「神童」と名乗り、天地を再生し、生命を誕生させた。衰退の神はそれに憤怒した。
「異邦より訪れし者。早急に去れ!」
悪しき衰退の神は「神童」と戦い、敗れた。「神童」は勝利を宣言した。
「もはや、この世界に衰退は訪れない!我々は自由になるのだ!」
そうして、安寧は築かれたのだった。
「歴史を記す場所が必要だ」
それから、異邦の神。いやこの世界の神はこの世界の歴史を残すため、この魔法神聖協会を作ったのだ。
そして、時は経て、協会に属する者がこう言った。『この魔法神聖協会で最も優秀な人物を「神童」と呼ぼう』と。
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ムルム『どうだ?面白い話だっただろう?』
俺『いや、さっぱりしすぎて面白くなかったし、重要そうなのは最後だけじゃないか』
ムルム『…っぐ!ふふ…やるではないか…ナイフのように突き刺されたぞ…』
ムルムはそう言って、本当に突き刺されたかのように片膝をついて、胸を掴んだ。
俺『す、すまん』
マータ『では、話も終わったみたいですし、私たちはこれで…』
俺『あぁ、ありがとうな』
俺が感謝を述べるとマータは軽いお辞儀をして未だに胸を抱えているムルムを引きずりながら去って行った。
俺『さてと……』
俺はいよいよ、本当の目的を遂行するとしようか。
話は宿での時まで遡る。て言っても俺はその話を話半分にしか聞いていなかったから。詳しい内容は知らないが……。
だが、目的ならば知っている。
俺たちが二レスという名の人物に頼まれたのは魔法神聖協会の実態調査とその対応だ。もちろん犯人探しも込みだ。
話の節々から何となく、怪しさは感じ取れた。何かあるのは間違いないだろう。
俺『問題はどう調査するか、だが……ま、一番手っ取り早いのは、立ち入り禁止のエリアを調べることだな…』
早速だが、今、俺の目の前にはすでに立ち入り禁止エリアだ。
俺『約束破って…ごめんなさーい!』
その瞬間、俺は謎の障壁に弾き返され、地面に尻を打った。
俺『いてて…なんだよ、これ…』
『あれだけ忠告しておいたはずなんだが7』
俺『うわ、来るの早すぎるだろ』
聞き覚えのある声。そして、口調。今の彼の口調は初めて会った時と同じであり、その瞳には明らかな敵意があった。
ノノ『888!とりあえず…428!』
ノノはまるで対話する気がなく、真っ先に普通魔法を撃ってきた。
ノノ『焼け42!』
放たれる業火。しかし、俺はそれを防ぐ。
すぐさま指にかすり傷をつけ、血で障壁を作った。正に間一髪でもう一足遅かったら俺の体は燃えていただろう。
ノノは絶えず業火を放っている。このままでは防戦一方だ。しかも、問題はそれだけではなかった。
『やれやれ、ただでさえ忙しいのに…困りましたね』
俺『あんたもいたのか、ナイース・ガンバさん!』
ナイース・ガンバ『何故貴方が私の名前を知っているのかは疑問ですが、今は緊急事態です…。全く……これだから、部外者を巻き込むのは嫌だったんですよ』
ノノ『しっかたねぇだろぉがよぉ!"あれ"の相手なんかしたら。俺たちじゃぁ全滅73よぉ!』
ノノ『それに!なるべく信用できるやつにしといたんだから!69言うんじゃねぇ!』
俺『おいおい、流石に2vs1はキツすぎるだろ』
レリエル『おりゃぁぁ!』
ノノ『…ッ!』
突如レリエルが赤いハンマー壁を突き破った。そして、その瓦礫をノノは間一髪で避けた。
俺『レリエル!?』
レリエル『助けに来たわよ!…あ、迷ってた訳じゃないからね?親切心で助けに来たんだからね?別に道に迷ってたらたまたま貴方がいたって訳じゃないんだからね!?』
俺『あ、そうですか……』
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レリス『これはこれは…一体どういう了見なのかしら?』
レリスたちの目の前にいたのは大量の黒装束たち。恐らく、魔法神聖協会のメンバーたちなのだろうが…。
あろうことか、彼女たちに刃を向けていた。
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アラガン『……えーと…貴方は誰かな?』
グラース『…私は知ってる。そいつ、確かヒィセスとか言うロボットだよ…でも、変。前見た限りではもっとぬるぬる動いてた』
アラガン『模造品とかなのかしらね…』
ヒィセス?『…ピピ……侵入者……排除!!』
ヒィセスは…いや、ここはヒィαとでも呼んでおこうか。ヒィαは右手の手相を光り輝かせた。その光は収束し、剣の形をなした。
ヒィαが攻撃を仕掛けようとしたその時、既に二人は臨戦体制であった。その内の一人であるグラースは鎌を取り出し、刹那の如く速さで、ヒィαの首を跳ねた。
グラース『……脆い…』
しかし、まだ終わりではなかった。
アラガン『冗談でしょ……』
一、二、三……。百は超えていてもおかしくない量のヒィαたちがぞろぞろと魔法陣から出現した。
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マータ『なんだか……騒がしいですね…もしかして犯人が見つかったんでしょうか?』
ムルム『ふっ…!その可能性もなくわない…』
マータは兄の言葉を聞き、少しホッとした。もしかしたら、自分たちが犯人の相手をすることになる…なんていう事態にならないものかと常々不安だったのだ。
だが、どうやら、この雰囲気から察するにもうそのような心配は不要だろう。
ガタン!突如、何かが崩れ落ちるような音がした。
マータ『ひゃい!?』
不意打ちだった。思わず情け無い声を上げてしまった。
ムルム『む…今の音……禁止エリアの方から音がしたような…』
ムルムはそう言うとマータの方を見た。マータは全力で首を振り、行きたくないという意思を明確にしたが、ムルムは何の反応もせず禁止エリアえと進んでいった。
ムルム『……っく!』
その時だった。炎がムルムを焼き尽くさんと向かってきたのだ。ムルムはそれを間一髪で飛んで避けた。体を空中で翻し、マータの近くに着地した。
マータ『貴方は……!!』
炎の中から現れたのは……。
マータ『先代の「神童」様!?』
歴代の「神童」でも特に優れた人物であり、今代「神童」であるムルムの先代に当たるお方。
『その呼び方……辞めてくれないかな?今の僕は…悲壮星の悲哀っていう名前が……あるんだからさ』




