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第三十九話 予想外

      ーーーーーーーーーーー

 サデラル『Bクラス三人共に………移動開始』


 俺『了解』


 よし、一応順調ではある。本来予定にはなかったネクタイの襲撃があったが、どうやら人選に間違いなかったようだ。


 現状三対四でこちらが優勢。だが油断は禁物。


 俺『こちら側も移動を開始する』


 今、俺たちの位置としてはザラルルが中心辺り。

そしてそれ以外は今外周付近にいる。距離が遠すぎるため、ザラルルの方で何が起こっているかは分からない。まぁやられた時は放送がなるから、敵が死んだってことは分かるが…。


 俺『ザラルル、今どんな…』


 それに言葉を続けようとするが、阻まれて


 ザラルル『うるせぇ!!今、交戦中なんだよ!俺様の楽しみを邪魔すんな!こちとら二人相手なんだよ!』


 俺『え?まじ?』


 ヤケクソで飛び出してきたのか?それとも何か作戦が…。


 俺『ははっ…やっぱあんま上手くいかないもんだな、こういうのは』


 俺は少し溜息をつき、少し策を変えることにした。


         ーーーーーーーーーー

 マータ『現状はこちらが有利そうに見えますが…』


 ジェンナード『だろうな、だが、両者の動きは極めて冷静だ、どちらが勝つかは分からないな』

 

 サミナ『ナオ〜!!ここで負けたら恥ずかしいですわよ〜!』


 ジェンナード『聞こえていないのだから、その行為に意味はないぞ』


 サミナ『ジェンナードは分かっていませんことね!こういうのは気持ちなのよ!』


 誇らしげに話すサミナを見て、『そ、そうなのか』とジェンナードが親指を顎に当てて黙り込んだ。


 ジェンナード『それが俗に言う友情か…』


 サミナ『そう!』


 ミルマ『てめぇら!さっきからウルセェ!あぁ…私の旦那さん素敵ですわ』


 ザイル『相変わらずのキャラ崩壊だね、結婚しない?』


 ミルマ『死ねッ!』


 三種三様な彼らであったが、彼らが願っているものは同じだろう。Sクラスの完全勝利。ただそれだけだ。


 そしてそれに呼応するように盤面が動き出した。

これからどんなことが起こるか、彼らは知ることが出来なかった。


         ーーーーーーーーーー

 思考力を働かせながら颯爽と森林の木々を駆け抜けていく。


 ザラルルと対峙しているのはソジェルとボンボン。ソジェルの感じから見るに苦戦を強いられているようだ。ザラルル、やはりその実力は侮れない。


 現状、三体四でこちらが不利。しかも、その内居場所がバレていないのは僕だけ。まぁザラルルが報告をしなかったりしたらある程度状況は緩和されるが、そんなことに希望を持っても仕方がない。


 不利な時に勝つ方法は二つ。相手がミスをするか、こちらが無茶をして成功を勝ち取るかの二択。だが、前者はほとんど運頼みのようなもの。先程も言ったが、そんなことに希望を持っても仕方ないのだ。


 だから僕がすべきことは一つだ。マラを倒す。ただそれだけ。僕はそれに全部の集中力を使う。


         ーーーーーーーーー

 ザラルル『はっ…!テメェらつえぇじゃねぇかぁ?いいぜぇ!オレは強い奴ぶっ飛ばすの好きだからなぁ!!』


 ソジェル『物騒ちんねぇ』


 ザラルル、馬鹿そうに見えて中々しぶといちんね。

動きに無駄がない上にフェイントもかけてくるちん。これは、勝てないちんね…。まぁでも別に倒せなくても計画には支障はないちんから、適当に一発入れた後、逃げるちんね。


 ソジェルはそう考えながら、ボンボンに目配せをして合図した。ボンボンは頷いた。その反応を見たソジェルは右手を前に出して叫んだ。


 ソジェル『オーシャンウェーブ!』


 ザラルル『なっ…!?』


        ーーーーーーーーーー

 ジノル『やっぱり、マラならここに来ると思ったよ』


 辺りを見渡すのに最適な場所で戦局を伺える位置。君ならここに来ると思った。ジノルがそう言うと前屈みで地面に右手を当てていたマラがこちらを向いて片方の眉毛を下げて、こう言った。


 俺『へぇ〜…俺が来るって分かってるのにここに一人で来るとか…。何か策でもあんのかよ、言っとくけどお前との実力差はこっちの方が上だぞ?』


 その通り。僕じゃあどうやたって勝てない。だから……。


 ジノル『光糸屈折(こうしくっせつ)!』


 ジノルがそう叫ぶと、ジノルの前や後ろといった周囲に光を纏った糸が飛び出していき、何かの障害物に当たれば当たるほどその糸は屈折していく、そしてそれらの糸を避けようと体を動かせば動かすほど糸は周りを支配していき、俺は身動きが取れなくなってしまった。



 もちろんその糸の屈折はジノル自身には細かく操ることが出来ず、せいぜい糸を出すのを止めるかしか出来ない。そうなったら当然ジノルも動けなくなる。そうして俺たち二人の周りを糸が周りを囲むとピタリと動きを止めた。


 これはつまり…。


 俺『おいおい、時間稼ぎかよ』


 ジノル『いや、違う。僕は勝ちに来てるんだ。もちろん君と戦うためさ、さぁ我慢比べといこうよ、マラ』


 この固有魔法は大した操作も出来ない上に自分に糸が当たる可能性もあるが故にそこまで強くない固有魔法だが…。今回はそうはいかないらしい。


 俺『こりゃ、まいったまいった』


 ジノル『何だよ、慌てる振りか?』


 俺『ははっ…そんな分かりやすかったか?その通りだ、お前の行動…全部予想通りだよ!』


 俺がそう言うと、俺が元々設置しておいた術式を魔法陣として具現化させ、発動させる。術式とは言わば数学だ。ある公式に数字を当てはめ、応用する。

 これを行うことによってこの世界の人々はあらゆる術式を組み立て、スマホのようなものを作ったり、自分の不得意な普通魔法を扱ったりしてきた。


 俺『術式、発動!』


 今回発動した術式は自らの体を粒子状にし、それを浮上させ、再び肉体に戻す術式で、これによって瞬間移動を可能とした。

 複雑な術式が故に手間がかかったが…。幸いジノルと対峙する時にまでは間に合った。


 ジノルは消えた俺を見て慌てて顔の向きを空へと動かした。

しかし、もう手遅れである。


 俺『血液操作!!』


 俺は血液の塊を剣の形に変化させ、それをジノルの腹目掛けて突き刺した。

 そして最後にジノルが呟くように言った。


 ジノル『やっぱ…お前には敵わないわ』


 これで終わる…はずだった。何の隙も与えないつもりだったのに…。俺は急所を外してしまった。それによって僅かな隙が生まれた。もちろん、ジノルはここから反撃することは出来ない。


 なら何故?何故、俺は今。宙に浮いている?


 それを理解するのは案外早かった。



 俺『ソジェルか!』


 どうやら、俺はソジェルの杖【超克の杖】の武器魔法によって俺は宙に浮かされてしまったらしい。


 そして今俺は地面に向かって一直線で落ちている。

これは実にまずい状況だ。何とか落下死を免れても生まれた隙をソジェルにつかれるだろう。ソジェルの攻撃を頑張って避けようとしても、せいぜい一発免れるぐらいが関の山だ。

 ほぼ俺が死ぬことは確定した訳だが…。


 でも、まぁ負けることはないだろう。何せ、ここからは敵の動きがよく見えるからな。


 本来なら空から見ようが木々に邪魔されて敵も味方も見えないだろう。だが、魔力は別だ。魔力を可視化した時、障害物となるのはそれ専用の物でないと意味がない。


 ん?何何?どうやったら魔力が見えるようになる?もちろん魔力は普通に見ることは出来ない。方法は三つ、生まれつき。

道具。そして、魔法だ。




 俺の固有魔法『血液操作(分)』は血液を体の一部の感覚として認識させ、自由に操る。本家の力より精度は劣るものの、それでも役に立つ魔法だ。


 だが、実際の所。今の俺の魔法の使い方には集中力が必要不可欠である。もし、集中力を少しでも落とせば…俺の体外にある血液の感覚は感知できなくなる。


 しかし、そこさえ乗り越えれれば後は木を貫通し、人の肌に血が触れればそれで完了だ。



        ーーーーーーーーーー


 ソジェル『ボンボンちん!ジノルちんの治療を!』


 ボンボンは頷く。そしてボンボンがジノルの方に近づこうとした時、ナオマがそれを妨害し、二人は睨み合いの状態になった。


 ソジェルはボンボンを援護しようとした時、地面が大きく揺れたかと思えば、ソジェルの周りの地面が盛り上がり、瞬時にソジェルの真上にまで到達し、ソジェルは地面の中に閉じ込められた。


 しかし、それで諦めるソジェルではない。ソジェルは即座に武器魔法『スカイアボーブ』を唱え、その場に居た者全てを空に浮かせた。


 だが、サデラルまでは浮かせることが出来なかったようで、ソジェルはまだ地面に閉じ込められたままである。

 そして、宙に浮いている組は皆ソジェルの魔法によって身動きが取れなくなっている。


 つまり、今は膠着状態が続いている状況。そしてこのまま長引けば、ソジェルの体力がつき、Bクラスの負けは必然となる。


 なら、このまま魔法の詠唱を止め、宙に浮いている組を地面に叩きつれば良いのではないか…となるが、生憎それでも勝ちはない。今、空に浮いていないのはサデラルのみ。


 ソジェルは今、視界が閉ざされているため。誰がどこにいて、どれが敵なのか分からない状態だ。無作為に一人落とすにしても代償がデカすぎる。もし、仲間が死んだら?ますます勝機はないだろう。何にせ、ソジェルはSクラスの誰にも勝てないぐらいの実力なのだから。


 こうなったら、ワンチャンスに賭けるしかない。



      ーーーーーーーーーーーーー

 俺『うわぁ、暇だぁ』


 現在、みんなで仲良く浮遊中である。いやはやどこまでこの状況が続くのやら。


 ザラルル『体が動かせねぇ!くそっ!まだヤりたりねぇんだよぉ!!』


 俺『もう、諦めろよ、ザラルル。多分だけどどうせ、このままランダムで一人ずつ落とされていくんだから』


 ナオマ『そうですよ、惨めに慌てないでください、滑稽ですよ』


 ザラルル『あ"ぁ?お前今回大して活躍してなかったじゃねぇか!調子乗んな!』


 ナオマ『ぐっ…!いやいや、確かにザラルル様のご活躍に比べれば私目の実力など…そんなものです。しかし、そうやって自らの実力を誇示し、天狗になるなど…いささか子供がすぎるといいますか…』


 ザラルル『はぁ!?ぶっ殺すぞ!』


 俺『はいはい、お前ら落ち着い…』


 煽り返されたせいで怒ったナオマを宥めるようにと言葉を切り出そうとしたその瞬間。


 突如視界が淡青に染め上げられた。これは、水だ。

そして、理解する。我々は今、地に向かって落下している。


 水が入らないようにと鼻を塞ぎながら、地面を見ているとそこには浮遊したソジェルと岩の中で薄く光る何かが見えた。

 


 見覚えがあった。それもそうだ。だって俺がさっき使った術式と同じなんだもん。

 

次回 誰の敗北か




 

 

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