第三十八話 Bの文字
ヌルデール『これより、練習試合を行う』
ヌルデール先生がいつも通り、声に力を入れてそう言うと、それに呼応するようにその隣にいたBクラス担当の先生である
メルグェル先生だ。
メルグェル『では、まずはルール説明から行うとしましょうか』
メルグェルはそう言って淡々と説明をし始めた。
内容をまとめるとこんな感じだ。
まず、クラスごとにそれぞれ三つのグループを作る。
それらを先鋒、中堅、大将の順に並べ、互いに戦い合い、試合に勝った回数が二回を超えると勝利となる。
大した逆転要素がない時点でだいぶクソゲーな上に、もし先鋒と中堅が立て続けに勝ってしまったら、大将戦がただの消化試合と化すのは些か頂けないが、文句を言っても仕方ない。まぁ特に人気のない試合らしいし、ここまで適当になってしまうのは仕方ないんだろうな。
そして、肝心の試合の内容に関しては実際に見ながらの方がいいだろう。
メルグェル『では、Sクラスの先鋒チームの三名、マータ、ムルム、ジロル!対するBクラスの先鋒チームはムイエィ、ケマム、ゴンゴン!双方位置につけ!』
メルグェルがそう言うと、名を呼ばれた六人は光に包まれ、俺達の視界から消えた。何処に行ったのかと言われればその答えは俺達の目の前にある青いテレビのようなものに写される。
そこにあったのは今回の試合会場である木が生い茂る森林に立つSクラスの三人だった。そして三人は赤い線より後ろに立ち、武器を構えた。もしこの赤い線を越えればルール違反で問答無用の負けになる。
メルグェル『それではこれより!試合開始!』
音響機器目掛けてメルグェルがそう言うとそれに呼応するように耳を割るような機械音が聞こえてきた。
試合開始の合図だ。
先鋒チームの決着は早かった。先に倒れたの大男ケマム、初動から突っ走り、強引に勝とうとしたが、流石と言うべきか、Sクラスの面々は焦ることなく、設置型の普通魔法で嵌めてジロルが雷を浴びせた。
続いてムイエィやゴンゴンなども特に出番なく、終了した。
続いて中堅、Sクラスのメンバーはサミナ、ザイル、ジェンナード、ミルマ。Bクラスはゴルゴン、以下略…である。特に言うこともない地味な試合で、互いに沼っていたので、とりあえずSクラスが勝ったとだけ言っておこう。
この時点で勝利となるが、今回はあくまでも練習試合なので続けることになった。
そしていよいよ大将戦。
メンバーは余った四人。ザラルル、サデラル、俺、ナオマである。そして、相対するのは、ネクタイ、ボンボン、ジノル、ソジェルである。
俺『ふぅ〜…緊張するわぁ〜』
何とか心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返すが、それを妨げるものが一人、観客席からミルマが『頑張って〜♡』と叫んでいるのだ。
ザラルル『あいつ…キャラブレすぎだろ』
正にその通りである。初対面のあの冷静な顔は何処へやら…。
サデラル『試合…始まる』
ザラルル『おぉし!全員ぶちのめす!』
ザラルルが勢いよくそう言うと、隣にいたナオマがそいつの肩をトントンと叩きながらこう言った。
ナオマ『初動から先陣切ってくのはお辞めくださいませ、貴方この中で一番弱いので』
ザラルル『あ!?俺様が一番強いだと?うははッ!当たり前だ!』
ナオマ『は?お前耳悪すぎだろ』
俺『まぁまぁとりあえず頑張ろうぜ、先鋒と中堅が勝って大将だけ勝てなかった…なんて展開は一番嫌だからな』
サデラル『その…通り…』
俺がそう言ってサデラルがそれに対して相槌を打つと、あの耳を割るような機械音が聞こえてきた。
それからまた同じ声が聞こえてきたので、俺達は赤い線の前に立った。
メルグェル『それではこれより!試合開始!』
戦火の狼煙は切られた。
ーーーーーーーー
ソジェル『さぁ、作戦はどうするちん?』
ネクタイ『まぁ、しょうでしゅね、ジノルしゃんは何かいい方法はありまじぇんか?』
ジノル『う〜ん、とりあえず、真っ先に突っ込んでいくのはやめよう』
ネクタイ『それは当然でしゅ』
ジノル『うっ…』
何の作戦も立てようとしていないことがバレたジノルは悶絶した。
ソジェル『まぁ、とりあえず各々で潜伏して機を伺うちんか?』
ジノル『まぁ、それでいいと思う』
メルグェル『双方!位置につけ!』
ソジェル『お、もう始まるちんか?じゃ、解散!』
ソジェルの解散と言う言葉を聞いた我々はそれぞれ位置についた。
メルグェル『試合開始!』
その掛け声と共に何か雄叫びのような音が聞こえてきた。
しかも、その音は段々と近づいてくる。焦りながらもジノルは自分の武器、小刀を出現させた。
ジノル『普通の武器しか持ってないんだった…』
しかし、ある以上は仕方ない。これで対応するしかない。
ジノル『ふぅ〜…』
ジノルは深呼吸をし、物事を冷静に見極める。
突っ込んできている人物はザラルル。
誰が見ても分かる。これは陽動だ、と。
しかし、ジノルは考える。こうも単純なのか?
もしや、何か裏の目的が?
ジノル『皆、周りの動きに注意して…』
ソジェル『了解ちん!!』
遠距離でも通信可能なこの魔石に言葉を放つとソジェルの賛同の声が聞こえた。
ジノル『一体何を…』
ーーーーーーーーー
試合開始の合図と共にザラルルが真っ先に前進していった。
目にも止まらぬ速度で…。
とりあえず今回の作戦を説明しておこう。
まず、ザラルルが陽動役を行い、俺達が周りを囲んで仕留める…という大雑把な作戦だ。だが、これでいい。
今まで幾度となく策にハマっていった者たちを見て、少なくとも一人は警戒しているはずだ。…特にジノル。
だからこそ、深読みをしすぎてしまうのだ。
そうして深読みしすぎてしまった者は何が起きても大丈夫なように予防策を立てるはずだ。
それすなわち、守りの構え。守りを全力で突き通してくる者たちに取るべき行動とは?
答えは……。パワー!!!!俺らもザラルルと共に前進し、強行突破を行う!!!
ザラルル『おいおい、ビビってんのかぁ!?おい!出てこいや!!!』
ネクタイ『おのじょみ通り出てきたでしゅ』
ザラルル『はっ!!そりゃどうも!!』
ザラルルは速度を一度も緩めずに前進する。
ネクタイ『ハマったでしゅね』
ザラルルが至近距離に近づいた時、ネクタイは指を鳴らした。そうするとザラルルにまっすぐ飛んで、そして突き刺さる。
この時ネクタイはこいつは馬鹿だと思っていた。…しかし、それは間違いである。確かに馬鹿は馬鹿だが、戦闘での頭脳は一つ抜きん出ている。
ネクタイ『しゃ…!?』
ザラルル『ハマったのはオメェの方だ!!』
ザラルルはそれを予想していたのか、何事もなく体勢を横から縦に戻し、一歩だけ下がることでそれを避けた。ネクタイは油断していた。故に負けるのだ。
ネクタイ『ま、まじゅい!?!』
ザラルル『お返しだ!』
ザラルルは尖った岩をへし折り、それをネクタイの頭蓋骨に突き刺した。
ーーーーーーーーーーー
ソジェル『あれ?ネクタイちーん負けちゃったちん』
ジノル『様子を見てて…ってそう言ったのに…』
ソジェル『仕方ないちん、あいつキレ症ちん』
さて、現在四対三でこちらが不利。でも、まだ焦る必要はない。ここからでも建て直しは…効くと思う。
ジノル『…』
直感が告げている。このまま本当に傍観してていいのか?何か成さなくてもいいのか?と。
ジノル『……作戦変更、こっちも動こう』
ソジェル『お、了解ちん!!!』
ジノルの言葉に他二人は応えるように動き始めた。
そして当然ジノル自身も。
次回 予想外
で




