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第三十三話 立ち向かう戦士たち


ーーーーーーーーーー


 ジノルはひたすらに走る。友人たちの元へと走る。

冷や汗を垂らしながら走る彼の焦りぶりは初めて見たと言って相違ないぐらい衝撃的だった。


 それほど焦っている原因はマラの失踪にある。


 話を聞けば、マラは武闘会が終了した瞬間からその存在を晦ましていたそうだ。


 ジノル『何処行ったんだよ!』


 僕は休憩室(夢の世界への入り口)から廊下に出て、そこから無我夢中に走り続けている。教師に見つかっても走るのをやめない。

 周囲を見渡しながら猛ダッシュで駆け抜けていると何やらよく見る面子がある一つの部屋に集まっていたのが見えた。


 ジノル『レリエルちゃん!』


 僕はその面子の中にいた一人の名前を呼び、どういう状況なのか教えてもらうことにした。


 聞くと、どうやら目の前にある宿泊用の部屋の中に籠りきりなんだそうだ。そして、何か独り言をぶつぶつ呟いているらしく…あまり刺激しない方がいいと皆は言うが…僕は耳を貸さずにその部屋の扉を叩いた。



 ジノル『マラ!開けろ!!』


 途端に口調が変わったので周りの空気が一変したのを感じたが、それでも僕はその口を止めずに声を響き渡らせた。


 ジノル『何で開けないの!?理由を教えてくれよ!なぁ!マラ!!』


 と、そんなふうに高圧的にそう指示しても、マラは答えなかった。

 だが、僕の高圧的な態度に乗っかるようにして獣男のザラルルが続けた。


 ザラルル『こいつの言う通りだ!てめぇ!雑魚の分際で師匠の睡眠邪魔すんじゃねぞ!?さっさと開けやがれぇやぁ!!』


 どうやらザラルルの発言の中にあった言葉が気になったらしくレリエルは忍び足でサデラルに近寄り理由を聴いてみることにした。



 レリエル『ねぇねぇ、前から思ってたんだけど…どうしてあんた、師匠って呼ばれてんの?』


 サデラル『授業で…戦って…勝った…それだけ』


 レリエル『あぁ、そう』

 

 興味を持って話しかけたのに、答えがあまりにつまらないものであったから、やや失望してレリエルは下を向いた。


 自分から聞いたのに…なんとも図々しい人だ。だけど、そんな事にうつつを抜かしているわけにはいかない、今はもっと重要な問題を解決しなければ…。


 


 ジノル『一体どうしたんだよ…』



 皆が頭を悩ませる中、ザラルルはさらなる異変に気づいたようで…





 ザラルル『ん?この匂い…』


 サデラル『…?…どうか…したか…?』


 そんな風にサデラルはザラルルに話しかけたが、返答は返ってこない。

 珍しくサデラルの声も聞こえていないようで、ザラルルはくんくんと…それこそ本物の犬のように周囲の匂いを嗅ぎ回っている。



 そして一瞬、止まったかと思えば……ザラルルは地面に手足をつけた獣のような体勢から途端に立ち上がり、こう叫んだ。



 ザラルル『へっ…!強い奴が一匹!』


 ザラルルはそれだけ言い残し、この場を去った。



 ライラ『え!?ど、何処に行くんですか!?』


 サデラル『何か…見つけた…ようだ…我も…行く』


 サデラルはそれだけ言い残し、この場を去った。

そんな二人の去る姿を見て面々は余計何とも言えなくなり、微妙な空気が流れた。




        ーーーーーーーー

 ジェンナードはマラ・ガンノールに勝たせてもらった恩を返すべく、今この場にいる。

 否、元はと言えばこの惨事を引き起こした原因は私にあるのだから、私なのだからこうすべきなのは当然だろう。





 そして、前方にいる食堂の婆さんになりすました悪魔トリウン……確か、そう呼ばれていた。


 トリウン『こんな時に…考え事かよぉ!』



 トリウンは唸り声を上げながら、手持ちの出刃包丁を振り上げ、ジェンナードの頭をかち割るように勢いよく振り下ろした。


 ジェンナードはそれを間一髪で避けた。しかし、ジェンナードは避けた衝撃で体勢を崩し、膝から崩れ落ちた。

 

 トリウン『は…あんた!弱いね!』


 あれだけ啖呵を切って挑んでこう言うのも何だが…その通りだ。私は弱い。知っての通りジェンナードは固有魔法がない。扱えるのは普通魔法のみ。その上、体術も優れていない。…。



 でも。それでも、私は抗う。ここで抗わなければならないんだ。そうだろ…お爺。


 トリウン『また考え事かぁ!?ガキィァ!よえぇくせにぃ!』



 ジェンナードは死に物狂いでもう一度その攻撃を避けると、次は反撃の構えを見せ、叫んだ。


 『オーシャンウェーブ!』


 オーシャンウェーブ。


 普通魔法である内の上位魔法に分類される魔法。

固有魔法がない私はこれらの上位魔法を必死に習得し、何とか固有魔法持ちにも対抗できるようにした。


 しかし、いくら上位の普通魔法だとしても固有魔法持ちとの根本的な差は埋まらない。普通魔法は魔力さえあれば誰にだって習得できる。固有魔法持ちでありながら上位の普通魔法を操れる者はそんじゅそこらにいる。


 結局のところ、私では勝ち目がない。いくらどれだけ思考を割いても奴の固有魔法にはきっと敵わない。それに相手は悪魔、根本から魔法を知り尽くしてる奴らだ。どんな手を使っても負ける。


 そう負ける。それでいい。それが最大の償い。

奴が必要としてるのは子供の魂、それを求めて奴は私を殺すつもりだ。


 ならば、あるのは自爆。死なば諸共だ。


 トリウンの肉体は本体ではなく、借り物。

中身がいくら強かろうと体がなくなれば魂だけの存在となり、魔界に帰るしか選択肢はなくなる。


 新たな依代を手に入れるには時間がかかるし、受肉させるのにも時間がかかる。悪魔崇拝教団の目的である“何か”の復活は失敗に終わる。


 トリウンは確実に頭と体が切り離さられる力で、出刃包丁を下から上に振り上げた。そして、叫んだ。


 トリウン『腐食切刻(ふしょくせっこく)!』


 トリウンの持っていた固有魔法により変色した出刃包丁がジェンナードの首に到達したその瞬間、一人の獣男がそれを防いだ。ザラルルだ。


 ザラルル『おらぁ!!』


 片方の手で出刃包丁を掴みながら、もう片方の手でトリウンの顔面をへこませるぐらい、思い切り殴った。その突然の強襲にトリウンは足元をふらつかせた。


 トリウンは衝撃であっただろう。トリウンの固有魔法である腐食切刻は数多の戦士を屠った固有魔法だ。

その刃を止めることが出来ても、直ぐに自らの体が腐るほどの魔法であるというのに。


 ちなみにこれを抑え込むことが出来たのはライラの固有魔法のおかげなのだが、ザラルルは気づいていない。もちろん、トリウンがそれを知ることはない。何故ならばここで彼女は死ぬのだから。




 


 トリウン『ぐはっ……!な、なぜっ!なぜお前の手は無事なんだ!?くそ…っ!?』


 『砂王蠕虫』


 その隙を狙い、サデラルの砂の蠕虫(ワーム)がトリウンの足元に絡み付き、勢いよく上に飛びトリウンを地面に叩きつけた。


 地面に落ちる衝撃と砂の蠕虫の圧力によって、トリウンは口から血を吐いた。

 そして、トリウンは意識が朦朧としながらも、すぐさま宙を一回転し、後ろへと退がった。


 だが、攻撃はまだ終わらない、次に攻撃を仕掛けてきたのは毒舌執事ナオとおバカお嬢サミナである。



 二人は止まることなく、トリウンに攻撃を繰り返し、トリウンに反撃の隙を与えない。その二人の連携は正に完璧。トリウンはなすすべなくやられた。…というほど甘くはない。彼女も悪魔の一人だ…この程度では終わらない。


       ーーーーーーーーーー

 分からない。どうすればいい。どう援護すればいいんだ。あの四人の戦士を…



 ジェンナードは頭を抱えて思い悩んでいた。


 この戦いに自分はついていけない、であるならどうするべきか。どうやって恩を返せばいいのか。

 思考が止まる。どうすればいいのか分からなくなる。私は…どうすれば!!


 角を持つ少年…サデラルは言った。


 サデラル『選択肢は…あるはず…後は自分で…決めるだけ…』


 サデラルはそうとだけ言い残して戦火に再び入り込んだ。きっと、サデラルは気づいていたのだろう、私が思い悩んでいるということに…。


 彼には感謝しなければならないな。


 そうだ。私は何を迷っていたんだ。


 お爺はよく言っていた『自分を信じろ』と。


 そうだ。私には私のやるべきことがある。

自爆なんてただの逃避だ。私のやるべきことは一つ。


 あの時、私を見ていたガンノールの目は私と同じ目をしていた。私が…。


 待っていろガンノール、今薄暗い部屋から引っ張りだしてやる。



 そうして、ジェンナードは一度通り過ぎたあの場所へと向かうのであったーーーー




 ーーーーー息が切れてきた。まずいね、これ。

ガキも侮れた物じゃない、と。トリウンは対峙するこの子供たちを前にしてそう思った。


 だが、感心している場合ではない。そう分かっていても…。

 トリウン『ははっ…!』


 最早、任務なんてどうでもいい。今は殺戮の限りを尽くしたくてたまらない。


 トリウン『私を楽しませてくれよ!!戦士たちよ!』


 そう叫んだトリウンはゆっくりと目を閉じ、

細剣【殺戮の剣】を出現させ、武器魔法を唱えた。


 トリウン『殺戮せよ。マサーカースレイ!』


 

 そう叫ぶと、【殺戮の剣】は赤い閃光を浴び始め、視界を切り裂くように剣を振り下ろした。そして、その斬撃はガキ共の頭上を確実に…とはならない。何故か。トリウンの振り下ろした剣はガキ共とは反対方向のところにあった。


 トリウン『な…』


 瞬時にガキ共が何かしたのかと後ろを振り向いてみれば、そこには困惑しているガキ共が。これは…誰の仕業だ?


 そう思考してしまった時点でトリウンの負けだ。もし、数秒でも早く気づけていればまだ命は助かっただろう。


 その斬撃は誰の目に映らずに、ただトリウンの体を切り裂いた。


 トリウンは驚愕した。体が切り裂かれていることに驚いたのではなく、自分の魂が切り裂かれていることだ。

 悪魔は魂さえあれば何度でも蘇ることが出来るだから、いくら攻撃されようが構わない。かまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわないかまわない。あ、

…………



 トリウン『死んだ』


 それだけ呟き、トリウンは魂諸共、塵にかえった。そして、最後の瞬間に見た。自分を殺した奴の顔を…こいつは…何故。何故何故何故何故殺したはず…きさまぁぁぁ!!




        ーーーーーーーーーーーー

 


 モブール『手出したのそっちが先でしょ?』


 明らかな憎悪を向けるトリウンにモブールはそう言ってニヤリと笑った。

 






次回 目を塞いだ過去



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