第三十話 もう一つの準決勝
聞き飽きる程耳に染み付いた声が聞こえた。
ジッキ『では!準決勝、第一試合の結果はガンノール選手が勝ち上がるという結果になりました』
そう声を上げたのは…えっと誰だっけ?まぁいいや。そして、目の前にいるこの男は僕の対戦相手で…確か名前はジェンナードだ。
ジェンナード『…』
選手間で沈黙が漂う中、高らかに声を上げたのは実況の人だった。
ジッキ『では!これより!準決勝、第二試合を始めたいと思います!』
『準決勝第二試合開始!』
悪いけど、僕の目的のために沈んでもらうよ。
ーーーあの男モブールは見た目こそ普通だが、実力はブッタテすら太刀打ちできないほどだ。
今までの試合を見てきたからこそ分かる。
それはこの隣におられるデミレラ先生も気づいているだろう。
ジッキ『ん?どうされたんですか?デミレラ先生』
私は小声でそう話したが、デミレラ先生は『大丈夫』とだけ言葉を返した。
心配ではあるが、今は試合の実況をしなくては…。
ーーーーーー
唖然とした。最初の方は確実にモブールが圧倒していたはずなのに…。
唖然とした。だが、ジッキの口角は上がっていた。
ジッキ『何ということでしょうか!モブール選手が圧倒していたように思えましたが…立場逆転しました!』
モブールは膝を突き、目の前にいたジェンナードに鋭い眼光を突き刺した。
モブール『卑怯者』
ジェンナード『…』
ジェンナードは言葉を返さず、ただ、モブールを見て呟いた。
ジェンナード『やれ』
モブール『ぁ…』
その瞬間、モブールが倒れた。そして、誰もが思った。この瞬間決着がついたのだと。
だがこの時、ジェンナードはある違和感を覚えた。…覚えたのだが。
この武闘会で優勝、優勝することだけ考えろ。
そうやって自分を抑え込んだ。
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俺『まじかよ』
正直俺は驚いたよね。まさかジェンナードが勝っちゃうとは…まぁモブールも特段強そうには感じなかったけど…。
ロウド『まぁ、奴は恐らく、違うだろうからな』
突然ロウドが出てきたと思ったら、意味の分からないことをほざくので俺は言ってやったね。
俺『言葉の使い方下手すぎない?ていうか、誰が、何が違うんだよ?』
だが、ロウドがそれに応えることはなかった。
俺にはお前がよく分からないよ…。毎回意味深なことだけ言って…。
さてと…いよいよか。
準決勝が終わった次は…
俺『決勝戦か』
俺はそう言って出場選手待機場所に向かおうとした…のだが、あいつの声が、ジェンナードの声が聞こえた。
ジェンナード『くそ…勝つ…勝つんだ…父様と母様に、認めてもらうんだ!認めてもらわなくてはならないんだ!』
ジェンナードはそう言って一つの写真を取り出し、こう言った。
ジェンナード『見ててくれ……』
俺『…』
ざまぁ…ははっ!。…あ?いやいや、何言ってんだ?いやいや。これじゃあいつと一緒じゃないか。
俺は込み上げてきた言葉を抑え込み、その場を離れた。
ーーーーーーーーー
出場選手待機場所にてーー
俺は考え事をしていた。
俺『…』
ロウド『貴様、あの貴族のことを気にしているのか?』
いや、別に気にしてないけど…。いや、気にしてはいるけど。でも、勝つことが目的だし。手加減するつもりないし。
ロウド『そうか、ならばそれでいい』
耳に染み付いた声が聞こえてきた。
さぁいよいよ決勝戦の始まりだ。
準決勝と同じように何の変化もない平らな舞台に俺とジェンナードが立った。
ジッキ『では!いよいよ決勝戦です!最後を占めてくれるのは!ガンノール選手!そしてジェンナード選手です!皆さま!熱い声援を!』
『ガンノール!勝てやぁ!』
『ジェンナード、負けたら容赦しねぇ!』
声援なのか分からない言葉が飛び交っているが、
それでもあいつらの声は聞こえた。
レリエル『負けたら、容赦しないわよ!』
レリエル…お前もそう言うのかよ。
俺『まぁいいや、ここまで来たんだ勝たせてもらうぜ!』
ジェンナード『……』
ジェンナードが俺に鋭い眼光を突き刺さし、俺の頭を貫通した。
怖えぇ…。
ジッキ『さぁ!!では!決勝戦!開始です!』
ぜってぇ勝つ!
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『お、無事だったんすね』
そう言ったのはあのチャラ男である。
その目の前にいたのは何処か怪しげな雰囲気を放つ糸目男である。
『まぁね、時間はかかったけど、任務は達成しましたよ。貴方の方は?』
血のついた手をハンカチで拭いて、チャラ男に結果はどうだったのかと聞いた。そう言うと、チャラ男は親指を立てて言った。
『ノープログレムっすよ、完璧っす』
『そうか、まぁ君の方の任務は別に後回しでよかったんだけどね』
『やっぱ、そうっすよね?あの計画実行するのは随分先だったはずっすもんね?』
『そうだね』
『もし、バレたら…』
『ははっ…君は面白いこと言うだね、「賢者」でさえ、気づくことはできないんだから、他の奴らは……考えるまでもないだろう?』
その言葉にチャラ男は納得したように頷き、相槌を打った。
『まっ、それもそうっすね』
次回 卑怯者




