第二十九話 ジョルスとの対決
ジッキ『これにて二回戦は終了ということですが!どうでしたか?解説のデミレラ先生!』
デミレラ『まぁ前回程の驚きはないが、面白い試合だったと思うぞ』
ジッキ『それに…以外だったのはモブール選手でしたね!圧倒的な力を見せつていた那画座選手に圧勝でしたから!』
ジッキ『では、この二回戦を経て、次の準決勝出場選手を発表します!』
そう言ってジッキは高らかに声を上げ、その四人の名を呼んだ。
ーーーー出場選手待機場所にて
ジョルス『やはり…勝ち上がってきたか』
俺『え?えっと…はじめまして…?』
初対面のはずなのに急に話しかけられたので適当にそう言葉を返したが、ジョルスは口に手を当てたかと思えば二度咳き込んでこう言った。
ジョルス『あぁ…次の試合楽しみにしている』
俺『あ…オケ…オケオケ』
ジョルスから放たられる言葉に圧を感じたのでそそっかしい態度でそう答えてしまった。
そんな明らかに異質なオーラを纏ったジョルスの後ろにはモブールと…それと……ジェンナードがいた。
それから時が過ぎたが、特に何も事は起こらなかった。
モブールとジェンナードは何か言葉を発することはなかったし、ジョルスとも大した会話はしていない。強いて言えばジェンナードが俺を睨みつけてきたことだろうか。正直ビビったよね。
そしてそんな緊張感満載な空間の中で俺はただ待った。待って時間を進ませた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ジッキ『では…この武闘会も終わりへと向かってきました!そしていよいよ、準決勝第一試合が始まるわけですが…どう思われますか?解説のデミレラさん』
デミレラ『まぁ前回優勝者であるブッタテに勝利したジョルスもじゃが、相手のガンノールも中々の実力者…能力だけ見ればジョルスの方が強いが…武闘会には必ずしも結果が実力だけで決まることはないのでな。どうなるかは見ものじゃな』
ジッキ『つまり!ガンノール選手が勝つ可能性も十分にあるという事ですね!』
ジッキ『では!参りましょう!準決勝第一試合出場選手!入場です!』
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外であるにも関わらず観客の歓声がこだまする。
それほど大きい歓声なのか…はたまた夢の世界だからか…俺には分からないし、考えても仕方ない。
そう、今集中すべき事は目の前にある。
何の形状の変化もない舞台を挟んだ向こう側にいる男。
衣装が俺と全く同じな男。前大会優勝者を倒す実力を持つジョルスをどう対処するか…
そんな考え事をしていると声が聞こえた。その声と共に金属音が鳴った。試合開始の合図だ。
ジョルス『来い、マラ・ガンノール』
ジョルスはそれだけ呟き、攻撃を開始した。
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『おい、ブッタテ!…ジョルスに負けるとは…貴様も弱いな!フハハ!』
そう高らかに笑うのはいつも俺のライバルを気取るモッルネスだ。
モッルネス『実際に戦ってみてどうだった?奴の実力は』
強い。これに尽きるが…単に力が強い。だけではなく…
ブッタテ『あれは…正に…』
『"暗殺者"だな』
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めっちゃくちゃピンチなんだけど…やば過ぎるだろ、ジョルス…
俺は苦戦していた。このジョルスという男に…。
なんて言えばいいのか…ただ単に力が強いとか、
そう言うんじゃない。むしろ、ブッタテよりは下だ。
なのにブッタテは負けた。その理由が分かった気がする。一つ一つが急所を的確に突いている。正に暗殺者並の隙の無さだ。暗殺者と戦ったことなんてないが…直感的にそう感じた。
まるで隙がない。
でも、焦る必要はない。実力ではこちらも遅れを取っていない…冷静に相手の意図を読み取れれば。
合理的に行くなら…
俺『ここだよな!?ウィンドステップ!』
俺はそう叫び、死角から来る攻撃を風の力を借りて避ける。
ジョルス『殺し合いには慣れていないと見ていたが…』
俺『それは…ふぅ…間違いだな!こう見えて百戦錬磨だ!』
ゲームの世界だけどね!
息を切らしながら喋る俺を見たジョルスは何感じたのか、動きを止めた。
ジョルス『そうか、なら…身も本気でいくぜ』
俺『ぜ?』
途端に口調が変わったので俺はそう呟いてしまった。その一瞬の戸惑いに乗じてジョルスは俺に不意の一撃を喰らわせた。もちろん、油断していた方が悪いが…
俺『いくらなんでも動きが早すぎるだろ……!』
俺の呟きにジョルスが耳を貸すわけもなく、次の一撃、次の一撃と彼は攻撃を止めない。
俺『大丈夫だ、落ちつけ………はぁ!?』
俺が心を落ちつかせようとした時、事が起こった。
恐らくはジョルスの固有魔法だろうが…。
意味が分からない。俺はそう思ったが驚きのあまりそれを口にすることは出来なかった。
俺は透けていた。自分からでも姿が見えない程に。
ここにあるはずのに目ではそれを捉えることが出来ない。
ジョルス『公平を…きす?…ために、身の固有魔法が何なのか教えてやる』
『透色世界』、奴はそうとだけ呟いていたが…
ジョルス『身が触れた物を透明にする。自分ですらも。そして、ありとあらゆる生き物ですら見えることはない、この程度の魔法ならば夢の主であるデミレラには見えているだろう』
正直厄介な固有魔法だけど、具体的な内容を教えてくれたのはでかい。あれ?でも何でわざわざ俺に使ったんだ?だって俺を透明にした所で、ジョルスが見えなくなるだけじゃないか。
ジョルス『気づいたみたいだな、その答えを教えてやるよ』
ジョルス『感覚共有』
ジョルスがそう唱えたのは二つ目の固有魔法、と言っても他の奴から貰ったものであるが…
彼が『感覚共有』と唱えたその瞬間、俺の体に更なる変化が起こった。ジョルスが消えた?
ジョルス『身の視点だ』
俺『なっ!?え?』
慌てる俺を気にも止めずジョルスは言葉を続ける。
ジョルス『ちょっとしたゲームをしようぜ』
俺『ゲーム?』
ジョルス『あぁ…今、おまえは身の視点になっているが体の主導権を握っているのはおまえだ、つまり…』
俺『お前の視点のままで俺を動かせってことか?』
ジョルス『その通り…そして身は四方八方に攻撃する』
それを避けろ…てか?クソゲーがすぎるだろ。
まぁとにかく、場外落ちずに攻撃避けろってことだろ?でも、どうすりゃいいんだよ今現状、自分が何処にいるかすら分かってないぞ…
ジョルス『説明は終わりだ…始めるぞ』
俺『来いよ!』
ジョルスに向けて高らかにそう言い放った瞬間、顔に激痛を感じた。恐らくジョルスに殴られてのだろうが…
自分の視点では殴られていなかったのに体の感覚では殴られている…この感じ、とても頭がおかしくなりそうだ。
でも、弱音を吐いている場合じゃない。幸い場外にも出ていないっぽいし。まだ何とかなる。ひとまず今自分がどこにいるか確認しなければ…。
俺『血液操作!』
俺は自分の手に傷をつけ、自分を取り囲むように血液を散漫させ、自分の体を血で塗らそうとしたが。
いや、これじゃ駄目だ。ジョルスにも見えてしまう。どうせならジョルスにも気づかれないような…。
ジョルス『そこだな』
俺『ぐぁっ!?何処から!?』
な、なんで…まだ血液すら出してないのに…心の目とかがあるなんて言うつもりか!?ていうか何処!?
いや、冷静に考えろ。
…そうだ。普通に考えればいい話だ。俺が共有されたのは視覚だけ、他は共有されてない…。
俺『声か』
俺側からじゃあわからないが、ジョルスには俺の声が何処から聞こえているか分かる。
ちょっと待て、これ本当にクソゲーじゃないか?理不尽がすぎるだろ。
いや、言い訳すんな!早く体勢を…
ジョルス『拍子抜けだ、ガンノール』
俺『え?』
俺がそう呟いた瞬間、見えないはずの俺を蹴り飛ばした。
ジョルス『答えはすぐに見つかるはずだ、頭を働かせろ』
そんなこと言われたって…ジョルスの理不尽さに内心イライラしながらも、冷静に、気を保ち、考える。
その時に不意に、何故かは分からないが俺自身のある言葉が浮かんだ。
『俺が共有されたのは視覚だけ、他は共有されてない』
でも、そうだ。よく考えてみれば、変だ。他は共有されていないはずなのに妙に視点が食い違ってた。
ジョルスが『そこだな』と言った時、俺は何処から!?と言った。あの時は単に自分が余計な事を考えていたせいかと思ったけど…それだけじゃない。
そもそも、なんで気づかなかった?今思えば明らかにおかしい所しかなかったのに。
それにてっきり、ジョルスが“感覚共有“なんて言うし、俺と着てる服もいっしょだったから、勝手に共有されていたと勘違いしていたが…いや、ていうかそもそもの話、ジョルスが嘘をついていなかった保証なんて何処にもなかった。
俺が透明になっていたんじゃない。ジョルスが透明になってたんだ。
律儀に待つジョルスに俺は叫んだ。
俺『へっ、誰がお前の問いなんかに答えるかよ!』
俺がそう言うとジョルスは口角を上げ、『来い』と言った。
今、ジョルスは透明、まずはそれをどうにかしないといけないが。方法は考えてある。
俺『血液操作!』
この行動によって俺がジョルスを血に染めて位置を割り出そうとしている。と、彼はそう考え、その血に当たるまいとどうにか逃げようとするだろう。
地面は全て血に濡れていたとなれば残すは、上空のみ。そうしてジョルスは上へと逃げ、様子を伺うはずだ。
俺はそこを狙う。
ーーーーーーーーーーーーー
ガンノールが『血液操作』を唱えた。
恐らくは俺の位置を割り出すためだと思っていたが…
ジョルス『なんだこれは』
縦5メートル横5メートルの部屋が多数建てられた。それは全て血で出来ていたので…血液操作によるものだとは思うが…
ジョルス『何のために…』
身がそう呟いた瞬間、違和感を感じた。いや、違和感なんて物じゃない。体に染み付いた経験が警報を鳴らしていた。
その瞬間無数小さな血の部屋が、一斉に空へと打ち上げられたのだ。
ジョルス『なるほど、誘い込まれたというわけか』
ならば。身は普通魔法である『メテオフレイム』を唱えるとしよう。ほとんどの魔法なんて覚えてなどいないが、あいつに教えてもらった魔法だけは記憶に鮮明に残っていた。
『メテオフレイム』と唱えた瞬間、小さな隕石なようなものが四方八方に落下し、打ち上げられた血の部屋を一個一個と地に落下させた。しかし、全部落とされたわけじゃない。一個だけ、その小さな隕石を受けても尚、動きを止めない部屋があった。
それこそが、ガンノールのいる場所だと理解した。
体が震えた。警報が止まらない。感じた。上に。
ジョルス『な…!』
上にガンノールがいた。ガンノールが細剣【神託の武】を構えていた。
ーーーーーーーーーーーーー
身は満足そうにしてその夢を去り、姿を眩まそうと、学園の外へと足を踏み入れた時、奴がそこにいた。
『負けるとは…情けないですねぇ…クフッ…まさかジョルス…いや、ジャルス様』
その目の前にいたのは悪魔崇拝教団と協力していた時、嫌になるほど見た変態野郎。ゾゼルと言う名の者であった。
ジャルス『黙れ、お前なんだろ?ガンノールの脳に小細工を仕掛けたのは』
ゾゼル『おやおや、貴方のためを思ってのことですよ?それに、私が小細工したのは、ほんの少しです。ククク…人間とはつくづく面白い物ですよ、いやはやこうして見てみると脳の錯覚というものは…
ッッッ…!』
声のボリュームをどんどん上げ、興奮気味になっていく、ゾゼルの胸元を掴んだ。
ジャルス『いい加減にしやがれ!てめぇら、何のつもりだ。何を企ててやがる!ガンノールをどうするつもりだった!』
邪悪に笑い、言った。
ゾゼル『おやおや、酷いことを言うではありませんか、貴方とガンノールくんの接点などほとんどなかったように思えましたが、どうしてそれほど感情移入を?もしかして、昔のお友達に似ていた…とかですか?』
ジャルス『!!…てめぇ、』
ゾゼル『クフフ…無駄ですよ、貴方は何処まで行っても貴方の名前は貴方を呪い続けるのですよ』
ゾゼル『悪魔崇拝教団設立者の子孫。貴方の親のようになりたくないのなら、変な気は残さないことですよ?また、友達を亡くしたくないのなら…フ、クフフフ』
……………………………。
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次回 もう一つの準決勝
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