第二十四話 特訓の成果
前回の話なんですが、第二試合と書いてあったんですが、第三試合です。
ジッキ『さぁ!衝撃の第一試合でしたが!まだまだ武闘会は続きます!一回戦!第三試合が始まります!皆さん!見逃さないで!』
ジッキがやや短絡的にそう言うと共に俺は試合の場である闘技場の中に足を踏み入れ、一歩ずつ緊張の念を噛み締めながら歩いていく。その一歩が俺には重く感じた。
俺『緊張しすぎだな、俺』
俺はそう呟いて階段を登り、対面にいるナノルサナマと目を見合わせる。
そして今回もデミレラが舞台を出現させる。
今回は地面一体が水面の舞台だ。
ジッキ『第一試合ではジョルスが勝利を納め!第二試合では前回優勝者のブッタテが勝利しました!そんな中での第三試合!いよいよ始まります!』
俺は血液操作を使い、血の剣を作り、ナノルサナマは弓【陰才の弓】を出現させ、互いに構えた。
ジッキ『双方準備が整いました!』
ジッキ『第三試合!ガンノール対ナノルサナマ!
開始!』
ナノルサナマ『行くぜ!…カットオブ、アイ!』
ナノルサナマはそう言うと、たちまち俺の視界は暗闇に包まれていく…そのせいか、妙に鮮明に見えてしまった。ナノルサナマがニヤリと不敵に笑う光景を。
俺『何が…どうなって…』
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ーーー混乱に陥ったのは俺だけではない。観客席の者達も皆またもや困惑していたーーー
ライラ『な、何が起きてるんでしょうか…』
ライラがそう言って見つめる先には観客たちが驚いている原因がそこにある。
黒い煙のようなものが闘技場の全て覆っていて、何も見えないのだ。
ジッキ『これは…困りましたね…前代未聞です…デミレラさん、どうにか出来ますか?』
デミレラ『‥できるにはできるはずなんじゃが…何か干渉しようとすると頭痛が起きてできんわい』
実況席にいる二人もお手上げらしく、表情はずっと笑顔だが、内心はどうしようかと頭を悩ませている。
ライラ『ノルマレス様が居れば…』
生憎こういった場で一番役に立つノルマレスは今回の武闘会の観戦には来ていない。何か用事があるようで。
『おい、もしかしてこのまま何も見えずにぼっ〜、と待ってろってのか!?』
一人の男がそう言うと水紋が広がるようにまた一人また一人と不満を口にする。
ジッキ『皆さん!落ちついてください!』
デミレラ『そうじゃぞ、もっと大人しく出来んのか?』
デミレラが高圧的にそう言うと、観客の皆はその圧に圧倒され、不満に感じながらもその口を閉じた。
その時だった。皆は闘技場に視線を向けた。何故か?それは単純明快、黒煙がどんどんと薄くなってきたからだ。
ジッキ『おぉ?黒い煙が薄くなってきました!
そして中にいる二人も見えてきました!』
その薄い黒煙の中にいたのは…至る所に傷がつき、倒れていたガンノールと、そんなガンノールを見て高らかに笑うナノルサナマだった。
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『にしても、武闘会盛り上がってるすね』
『どうやら…前回準優勝者をボコボコにした奴がいたようですよ』
牛丼を食べながらそう言うチャラい口調の男に目を瞑って淡々と答えたのはいかにもな糸目キャラな手袋をつけた男だ。
チャラチャラ男『ふーん…どうでもいいっすね、
とりあえず食堂のお婆さんにもう一杯牛丼もらいにいきます!』
チャラチャラ男はそう言って席から立ち上がった。
糸目男『えぇ…分かりましたよ。にしても、悪魔崇拝教団でしたか?今回の協力者は……』
糸目男は閉じていた両目を左目だけを少し開き、その協力者の性格の悪さに感服しながら呟いた。
糸目男『つくづく趣味が悪そうだ』
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ナノルサナマ『やぁやぁマラ・ガンノール!』
そう声を響かせたのはナノルサナマである。
俺はそいつを睨みつけて、体勢を保ち、今にでもぶっ倒れそうな疲労感ニ悩まされながらも会話をしようと投げかける。
俺『何したんだ?』
ナノルサナマ『何したって?ふふふ…お前を別空間に転移させたんだよ…何やっても無駄さ!助けなんて来ない!外の世界では俺たちがこの世界にいるなんて気付けない!』
俺『…』
落ち着け、俺…お願いだから…落ち着いてくれ…。
いくら心を落ちつかせようとしても意味がない。俺の心は焦ったままだ。
ナノルサナマ『このまま帰って、お前を置き去りにしてもいいんだが…俺のストレス発散に付き合ってくれよ!』
奴はそう言って小型のナイフを出現させた。
俺『武器は一つまで…じゃなかったか?』
心臓の鼓動が俺の中で鳴り響いている。
口は達者だが、そろそろ限界が来ている証拠だ。
ナノルサナマ『へっ、見えやしねぇんだから!意味ねぇよ!そんなルール!』
ナノルサナマは何度も何度も俺の腹部を鋭い刃物で切りつけた。
俺は必死で抵抗しようとするが、恐怖のせいか、体はそれを拒んだ。
ナノルサナマ『どうだ?いてぇだろ!!』
俺『くっそが!』
俺は唐突にそう叫んだ。動かない体を無理矢理動かして、ナノルサナマの肩を掴んだ。
ナノルサナマ『え?』
突然動いたガンノールに困惑するナノルサナマは情けない声を溢した。そんな彼に俺は一発食らわせてやった。
ナノルサナマ『がぁ!?』
ゴン、と言う打撃音が響いた。
俺はナノルサナマの頭をかち割る勢いで自らの頭で突進したのだ。
俺『どうだ!…ハァハァ…』
ナノルサナマは鼻血を放出し、見事なまでにずっこけた。
ナノルサナマ『い、痛い!くそっ!許さないぞ!』
ナノルサナマは立ち上がり、怒りに身を任せ、【陰才の弓】で俺に何度も何度も矢を放った…だが、ナノルサナマの弓を引く力が弱いのか、俺には届かない。
ナノルサナマ『ほらほら!』
なのに…なんだ、この胸のざわめきは。
なんで、俺はこんなに焦ってるんだ。
そんな時一つの言葉が俺に浮かんだ。
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ノルマレス『いいかい?焦った時こそ、集中だよ』
俺『焦った時こそ…そんなこと、無理だろ、焦ってんだから』
ノルマレス『うんうん、そう言うよね!だから、僕の家訓を教えてあげる!』
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そうだ、ナノルサナマは直接俺に攻撃してるんじゃない、恐らくあれは精神攻撃の類い、本来なら禁止されているはずだが…ここではルールが通用しないとあいつも言っていた。
ーー思い描くんだ、君の理想を…そうすれば自ずと見えてくる。
俺『そうだ、俺はもう過去を克服した…』
ナノルサナマ『ん?何言って…』
俺『そして俺は仲間たちを守りたいと願った‥』
ナノルサナマ『おい』
俺『俺は!無敵だぜ!』
ナノルサナマ『は?』
俺が叫ぶと同時にナノルサナマは困惑の表情を思い浮かべた。
現実逃避とも呼べるその一連の自分に言葉を投げかけた行動は間違いなのだろう。
だが、今に置いてはそうではない。今、この状況でこれが正解なのだ。
マラ・ガンノールは手に握りしめた血の剣を華麗に振り回す。
ナンジェルに叩き込まれた剣の基本…そしてノルマレスに教えられた知識その全てを使う。
ナンジェルは言った。
ナンジェル『剣と言うものにはいくつかの型があります』
ナンジェル『そんな体勢ではすぐに崩されてしまいますよ!ほら!もっと腰を!』
ナンジェル『何処から来るかわからない剣こそ、もっとも恐ろしいものです…ですから私はこの型を使っているのです』
ナンジェルがいつも使っていた型を俺の中で思い描き、複写する。剣を振る直前までその手を隠し、隙を伺う。
ナノルサナマ『攻撃しないのか?だったら死ね!!!無様に…』
ナノルサナマが言葉を吐き散らしながら、その小型ナイフを突き刺そうとした時、その瞬間に見えた!
俺『これが虚剣真狩流の力だ!くらいやがれ!』
俺は曲線を描きながら、奴の体にその矛を向かわせる。奴が逃げられないように…確実に。
俺は奴の首を切り付けた。
ナノルサナマ『痛い!痛い痛い!なんでだ!さっきおまえは痛がってなかったじゃねぇか!』
俺『いや、そもそもお前が別の空間に飛ばしたって言ってたじゃん、それに元々腹部に痛覚はねぇんだよ、まぁダメージは受けてるけど…』
ノルマレスは言った。『焦った敵程倒しやすいものはないよ』と…だから、相手が怯えても、困惑しても、俺の口が動くだけで、俺の手は止まらない。
俺はこの時、感じていた。これが特訓の成果だと。
俺『食らえ!これで…』
しかし、その気持ちが結果的に相手に隙を与えることとなった。はっきりと言おう、俺は少し浮かれていた。
ナノルサナマ『くそぉ!くそぉ!!』
俺は奴の脳天にこの矛を突き刺さそうとした。
しかし、それはナンジェルから学んだ剣ではなかった。
高鳴りすぎた心臓、若さ故の慢心、好調による油断、それらが結果的に失敗を招いてしまったのだ。
…とりあえず許してください
俺『あ、やべ』
俺がそう漏らしたのは、血液によって創造した剣が形を崩したからだ。
理由は明白、単純に使いすぎたせいだ。
戦いに重きを置きすぎて、肝心の血液がなくなっていたことに気づかなかった。
ナノルサナマは俺の失敗を見逃さなかった。
ナノルサナマ『こうなったら!最終手段だ!』
奴がそう言うと、俺の視界は黒煙に包まれ、次第に心が恐怖に支配された。
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