第二十三話 武闘会は危険だ
ま
『さぁ!始まりました!学園武闘会!今回の実況は〜この私!ジッキが〜担当します!そして解説は〜!』
ジッキと名乗る者が身に宿る熱い心を解き放つように声を上げ、解説を担当する者の名を呼ぼうとした時、解説担当の人はジッキの唇を綺麗な人差し指で押さえつけ、彼の言葉を紡いだ。
デミレラ『解説のデミレラじゃ』
彼はデミレラの予想外の行動に慌てたが、そこは流石の適応力で咳払いを行い、言葉を続けた。
ジッキ『解説に口を閉じられてしまいましたが!私の口は止まらず実況をしていくので!よろしくお願いします!ちょっと嬉しいです!』
ジッキ『まずは今回の武闘会を行うに当たって!いくつかのルールがあります!まずは参加者の皆さんにです!勝利条件についてです!相手を場外に出すか、殺すかしたら勝利となります!そして、観客の皆様は観客席から物を投げつけるような行為はやめてください!』
デミレラ『ゴミ拾うの大変なんじゃぞ?まぁわしは拾うのではなく、食べておるのだがな』
ジッキ『とんでもない爆弾発言を聞いたような気がしましたが…ま!気を取り直して…では!これより武闘会のメンバーを紹介しましょう!』
ジッキはそう言って懐にある紙を取り出し、目の前にあるマイクのようなものに顔を突き合わせ、深く息を吸ってその紙に書いてあることを読み始めた。
ジッキ『どんな奴がいるのでしょうか!
ナンバーOne!「筋肉が全て!」
自称「筋肉王」!モリモリマツ!』
モリモリマツ『全部握りつぶしてやるぜ!』
ジッキ『続けて〜「特にないです」
自称「地味男」!モブール!』
モブール『あ、お願いします』
ジッキ『お次は〜「それ以上近づくな、死ぬぜ!」
自称「ダンディなアゴ」ケツアーコ!』
ケツアーコ『ダンディだろうぅぉ?』
ジッキ『ナンバー四!「俺、天才なんだよね」
自称「陽キャ」ナノルサナマ!』
ナノルサナマ『…あいつを所詮で敗退させれば…へへっ』
小声で呟く。自称陽キャ。
ジッキ『ナンバー5!「全員ぶっ倒す」
自称「喧嘩屋」ジョルス!』
ジョルス『楽しみだぜ…』
ジッキ『ナンバー六!「よろしく!」
自称「吸血鬼」ガンノール!』
俺『お金!』
ジッキ『ナンバーseven!「勝つ」
自称「男」那画座!』
那画座『強い奴と戦える…それだけで十分だ』
ジッキ『ナンバー八!「跪きなさい!」
自称「華奢な女王」!ノーメイルスヴァルントス!』
ノーメイルヴァルントス『私の姿を刮目しなさい!』
ジッキ『ナンバー9!「楽しませてくれよ!?」
自称「前回優勝者」!ちなみにこの人は前回準優勝でした!モッルネス!』
モッルネス『おい!余計なこと言うな!俺は優勝したんだ!』
ジッキ『そしてお次が本当の前回優勝者!
ナンバーTEN!「俺の本気受け止めきれるかな?」
自称「Aクラスの中で最強!」ブッタテ!』
ブッタテ『突っ込んで押し潰す!これで十分だ!』
ジッキ『ナンバーeleven!ーーー
ーーーそんな感じで武闘会に出場する十五名が発表された。残すは後一名。この場にいる俺以外の出場者は皆強そうで独特のオーラを放っている。最後に出てくるのは大抵この中で最強の奴に決まってる。
俺の心は心配という感情に支配されていたが、
一方で一体どんな奴なのかという矛盾した好奇心もあった。
そんな中でいよいよジッキは口を開き最後の出場者の名を力強く叫んだ。
ジッキ『ナンバー16!えーと「ない」
自称「ない」ジェンナード!』
俺『え?』
その時俺は始めて心から震え上がり、恐怖した…というのは嘘だが俺の体は確かに震えていたのだ。予想外の名を聞いた以上に俺は、あのトイレでの一件がフラッシュバックし、恐怖したのだ。
ジェンナード『…』
ジェンナードは何も言わずスッとステージに立った。彼が今何を考えれば考える程、俺は震え上がった。何を企てているのか…嫌でもそう思ってしまう。
俺は何とかその思考を断ち切り、優勝という二文字だけを見るようにした。
ジッキ『では!毎度のことながらですが!』
ジッキはそう言って一呼吸置くと、深く息を吸うと突如陽気な音楽が流れ始め、彼は陽気な口調で声を張り上げ、デミレラもそれに続いた。
ジッキ『一体誰と誰が戦うの〜?』
デミレラ『気になるのじゃ〜』
ジッキ『でも、どうやって決めればいいか分からない〜』
デミレラ『そうじゃの〜』
ジッキ『決めた!』
デミレラ『運も実力の内とよく言われておるし〜』
ジッキ『誰と戦うのかワクワクするし〜』
『『ルーレットにしよう!』』
二人が息を揃えてそう言うと会場は盛り上がりを見せた。そしてそれに応えるかのように俺たちの前にルーレットダーツが現れた。
ルーレットは突然回り始め、俺たちの運命の行先を示していく。
そして、すべての人物の運命は定まった。
ジッキ『これが〜今回の!トーナメント表だ〜!』
ジッキはそう言ってトーナメント表を出現させ、
各々の運命を語った。
ジッキ『まず一回戦目は〜!』
そうして語られるジッキの言葉に皆がいろんな反応を見せた。驚きの声、興奮の声、いろんな声が上がっていき、ジッキはその声のさらなる盛り上がりを期待したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
俺は今、個室でトーナメント表を見つめている。
試合が始まるまでもう少しだが、どうしても実感が湧かないのだ。というのも今我々は夢の世界の中にいるわけだが。
俺『何て言うか…こう…感覚があるのにないような感じがするんだよな』
この表現をもっと適切に詳しく伝えるならば、今、君は砂糖の入っていないコーヒーを飲んでいるとしよう。
君はそれを嫌がり、コーヒーに砂糖を一個入れた。
君は砂糖入りのコーヒーを飲んだ。
君はそれをおいしいと感じる…そこで君は砂糖をもう五つ入れた。当然先程より、甘くなっているはずだが…何故かそうではなく砂糖一個入りの時と全く変わっていないように感じるのだ。
言うなれば有か無か、それしか感じ取ることができない、1と0しか存在しないのだ。そこにそれ以上やそれ以下はない。
何故こんなことをするのかと言えば、十中八九、精神の安全を守るためなのであろう。死んだということだけを認識させ、どんな死に方をしたのかは感じさせないようにする。
俺『これがデミレラ先生の固有魔法…』
相手の頭に触れ、眠らせ、夢を見させる。
そしてデミレラ自身の思い描く世界を想像する。
頭に触れて眠らさせてしまえば、即詰みの魔法。
俺『恐ろしい』
思わず溢してしまった一言を掻き消すような歓声が聞こえた。
どうやら試合が始まったらしい。
俺『そういや俺の初戦の相手って誰だっけ』
たしか、ナノルサナマとか言う奴だったな。
自分のことを天才と自称する程馬鹿な者はいないと、相場が決まってくるから…
俺『頭脳戦に関してはゲームの知識がある俺の方が上手かな?』
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ジッキ『さぁ始まりました!最初の試合!』
ジッキ『今回戦うのは〜!?』
ジッキがそう言ってデミレラの方を向いた。
どうやらそれは合図らしく、彼女はそれに応えて、言葉を紡ぐ。
デミレラ『前回準優勝者のモッルネスと初参加のジョルスじゃな、ちなみにわしが儲かるために賭博を皆に勧めたが、どうやら1番期待値が高いのはモッルネスらしいぞ』
ジッキ『これは楽しみですね!賭けがあったことについてはノーコメントで』
賭博が違法であることを知っているはずなのに、平気でそれをして、しかも堂々と話す姿勢に驚いたジッキであったが、例え冗談だとしても触れてはならないと考え、ノーコメントという答えを出した。
ジッキ『では!デミレラさん!舞台の用意を』
ちなみに夢の主がこの世界を自由に変えることが出来ていつも夢の主を担当しているのがデミレラである。
デミレラが目を瞑ると瞬く間に景色が移り変わり、
岩に囲まれ、凹凸のある岩場が戦いの舞台として誕生した。
このように試合の舞台はいつも変わる。
つまり次の試合はまた違った舞台が用意されている。
そして今回戦うジョルスとモッルネスの双方が舞台へと入っていく。
ジッキ『では!第一試合!ジョルス対モッルネス!
開始!』
ジッキの掛け声と共に戦火が切られ、モッルネスはメリケンサック【暗炎の拳】を身につけ確かな自信を…ジョルスは拳のまま戦いに興奮を抱きながら…
ぶつかりあった。
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俺『えぐ』
そんな感想が出てきたのはきっと俺だけでなく、観客たちも、実況席の人たちもだろう。
何があったのか…ジョルスが前回準優勝者を人殴りで沈めたのだ。最初に双方とも突っ込んでいった。
前回準優勝者が弱すぎたと普通なら思うだろうがそれは違う、前回準優勝者は強かった。強かったからこそ突っ込んだ。
そう、ジョルスが強すぎたのだ。
みんなが困惑する中ジッキは冷静に対応した。
流石は実況を担当する者だ。
ジッキ『何が起こったんでしょうか?デミレラさん』
デミレラ『単純な話ぞ、二人は自分の実力に自信があった、だからこそ突っ込んだ…そしてジョルスの方が強かった…ただそれだけの話じゃ』
デミレラは声一つ変えずにそれを当然だと言ったが、観客の皆はモッルネスが勝つと信じて疑わなかったのだ。前回優勝者とまた戦うのだろうと…そう思われていたから。
こうして第一試合から予想だに出来ない事が起こり、第二試合もブッタテが大暴れした。皆が混乱しながらも、第三試合の準備が始まる。
第三試合は俺とナノルサナマが出場する。
この時、すでに皆は気づくておくべきだった。
今回の武闘会は歴代でも類を見ない出来事が起きる…と。
次回 特訓の成果




