第二十二話 鍛錬開始
今日も短いよぉん
ノルマレス『あ、「狂……じゃなくて「喧嘩王」!長らくその名を聞かなかったけど…ここに身を潜めてたんだね…成程、人も寄り付かないし、その…うーんと、いい隠れ場所だね!』
「喧嘩王」その名は学園の外でも響いている存在で、言うにはこの法の国で犯罪を犯したらしい。
『その名で身を呼ぶんじゃねぇ、身にはジャルスって名があんだよ…「賢者」ノルマレスさんよ、どうした?身を捕まえに来たか?蹴るぞ』
身…どうやらそれが彼の「喧嘩王」の名を持つジャルスの一人称らしい。なんて言うか違和感しかない。
しかも後につく『蹴るぞ』と言う単語もただ適当に繋げたようにしか聞こえない。
ノルマレス『僕たちは別に喧嘩しに来たわけじゃないんだよ?ちょっとこの鍛錬場を使いたいだけだよ、いいかな?』
ジャルス『好きにしろ、元々、身の物じゃねぇし…蹴るぞ』
ノルマレス『ん?どこにいくんだい?』
ジャルス『住んでる場所がバレたんだ…逃げるに決まってるだろ、蹴るぞ』
ジャルスはノルマレスの問いにそう答え、どこか虚しい表情で決して響くことのない静かな足音をたてながら、この場を去り、再び姿を闇に潜めた。
そのジャルスの行動に彼女は何も言わなかった。それもそのはず、彼女はジャルスのことを何も信用しない男として認識している。どうせ何も聞いちゃくれないと分かっている。
だからこそ、彼を止めようとはしない。
それに今気にするべき問題はそこにあるのだから。
ノルマレスは気を取り直し、『じゃ!鍛錬開始!』と叫んだ。
もちろん俺は「喧嘩王」の件について知りたかったがノルマレスに話す気がないのなら無理して聞き出す必要もない。なので俺は息を深く吸う。
俺『おう!』
と背一杯応えたのだった。
ーーー三日目
俺は武闘会に備えるため、今鍛錬を積んでいる。
俺『よし!!準備よし!』
サデラル『我も…』
俺とサデラルは互いに準備が出来たことを伝え、戦闘の体勢に入る。
見たところサデラルの武器は魔力の供給を行ってくれる便利な魔具である石白の指輪だろう。他にそれといった物がないので確定だろう。
俺はというと、【神託の武】を使うにしても俺だけの力では持つことすら不可能に近い。
これでは武器なしのようなものだ。
そこでノルマレスに言われたのは血液操作で武器を作るということだ。
最初こそ、全然練度が悪すぎて形にもならなかったが…今では剣として機能している。
俺は血液操作によって生み出した剣、血液剣とでも言おうか…それを右手で持ち、剣を突き刺する構えを見せて、サデラルとの戦闘の歯車を開始させる。
ナオマ『では!始め!』
まず最初に動いたのはサデラル、彼の固有魔法は魔力を吸い取ることが出来る砂のワームを作り出し、敵にダメージを与えることが出来る、『砂王蠕虫』
サデラルはその魔法を使い、自らの魔力をワームに与え、俺に攻撃を加えようとする。
あのワームは魔力を奪うことが出来る、無闇矢鱈に突っ込むのは危険だ。
ワームを避けながら付け入る隙を伺う。
武闘会は制限時間ありの一対一で行う。
勝利条件は相手を殺すことだ。厳密に言えば現実世界で殺すわけではないが。
この武闘会は俺の知ってるような感じじゃない、作られた夢の中…空想世界に入り、そこで死んだ者が負けるのだ。
その他の武闘会のルールとして持てる武器は一つで、最初から出現させなければならなかったり、ドーピングを禁止などがある。
ちなみに殺すことが目的と言ったが空想世界で殺されても現実世界ではちゃんと生きてるので大丈夫らしい。ただ痛みは感じるらしく、時々精神に異常をきたす人もいるようだ。
さてと、そんな感じで武闘会の主なルールを語っているといよいよ決着がついたらしい。
サデラルによって作り出されたワームはみるみる大きくなり、俺の血液操作によって作った剣が剣の意味を成さなくなってしまう程にそのワームの体が突き刺せなくなってしまった。
その時点で魔力を使い果たし、意識も朦朧としてしまたっていた俺は見事やられてしまった。
ノルマレス『うん…まだまだだね、血液操作によって作った剣の攻撃力を上げる必要があるね、後…魔力の減りも早いから、上手いこと調整していかないと…』
どちらにせよ俺はまだまだ鍛錬を積む必要がある。
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何回も何回も立ち上がり、何回も鍛錬した。
その過程を経て、俺の体は完全に疲れ切っていた。
俺は目を開いた。どうやら、他の皆はもうすでに帰ってたようだ。
俺『俺も帰るか』
疲れ切ったせいか、肩に重荷がかかったような体勢で俺は学園の寝床ろへ帰ろうとしている。
そんな時であった。一つ、何かの影を見た。
俺『ん?なんだ?』
気にはなったものの、疲労している頭のせいで上手く考えることができない。
俺は気のせいなのだと、言い捨て、若干気味悪く感じながら、俺はまた足を進めた。
だが、運命はそれを許さない。
一人の叫び声が聞こえた。その声は幼女のような声色で耳に響く程だ。
流石に無視するわけには行かないと俺の本能が訴えかけてきたので疲労しきった体を無理矢理動かして、その声の鳴る方へと走り出した。
ーーーそこには一人の幼女がいた。紫の髪を縦ロングにした幼女。見た目がどう見ても某魔法少女にしか見えない衣装を身に纏った幼女。
その幼女は俺に気づいたのかすぐに俺に抱きついて
来た。その握りしめてくる幼女は見た目から察することができない程の強い腕力だ。
『お化け!お化け!!』
俺『痛い痛い!落ちついて!』
幼女は俺の声にも気づかない程怯えている。
俺は仕方ないので少女の言っていた幽霊とやらを見てみることにした。
影が見えたので恐る恐る近づいてみると、そこにいたのは……カエルだ。
だが、こういうのは大体俺は見えてないけど幼女には見えるパターンが鉄則だ。だから、とりあえず医療室に連れて行こう。幸いあそこは安全で二十四時間営業なのだから。
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メルメラ『あなた…名前は?』
『メロー!メローって言う…です!』
メルメラ『うん、どうしてこの学園に居たの?』
メロー『分かんない!全然分かんない…です!』
そんな一通りの会話を交わしたメルメラは一つの結論を導き出した。
メルメラ『途中途中の記憶が抜けている…でも覚えてる内容もある、これはおそらく…誰かが意図的に記憶を消したんだわ、この子を知ってるって言う人はいなかったし…外の子なんでしょうけど』
俺『え、どうするんですか?学園に預けておくことは出来ないでしょうし』
メルメラ『うーん…よし!あなたに任せたわ』
俺『ん?』
メルメラ『安心して、育てるのは私よ』
俺『んん?』
どういうことなのだろうか、先程の発言では任せたと言ってきたのに育てるのは自分だと、エロメラは言った。
そんな矛盾した発言に思わず困惑の表情になった俺に気づいたメルメラは片方の人差し指を宙でくるくると回し俺の視線を虜にし、彼女は言った。
メルメラ『あなたってここで合宿してるんでしょう?』
俺『えぇ、まぁ』
俺はまだ真意を見極められずにいたがとりあえずその言葉は事実なので頷くことにした。
メルメラ『この学園って年齢、身分問わず、学園に属していない者が簡単にこの学園で出入りすることは固く禁じられているの…例え、生徒の両親でも。だけど流石にメローちゃんをほっぽり出すのは可哀想でしょ?だから…特別措置よ』
俺『特別措置???』
メルメラ『えぇ、この学園のルールとして特別に学園の生徒の関係者であり、尚且つその生徒からの許可を得ていて、教師の引率があるのならここに出入りしてもいいっていうルールがあるの』
俺『なんていうか…過程が面倒くさそうですね』
俺は常に物事に消極的であったかのように首を左右に振りながら、首元まで両方の手の平を突き上げて、ヤレヤレと言ってやった。
ちょっとこういう系をやってみたかった。
俺『でも、俺に任せるってのは?どういうことなんですか?』
メルメラ『簡単な話よ貴方にはメローの兄になってもらうの』
俺『ええええええええ!?』
恒例行事だ。いい加減驚くのはやめてほしい。ていうか、獣人のザラルル見た時とかの方が驚けよ。
だれかにそんなことを言われた気がしたか、俺は気にしない。そもそも耳に入って来なかったことにした。俺は精神防衛を行った。
メロー『?』
メローはただ首を傾げていた。
そこからは気が滅入るような体験をした。まずSクラスの奴らに自分の妹であると話した。みんなが驚いていたが正直これだけでも精神が擦り減った。メローは正に子供で、トラブル続きだった。物を壊したりもした。
メルメラ『こら、駄目でしょう物を壊したら……』
メロー『駄目なの?』
幸いメルメラ先生の助けがあったので然程大事は起こらなかったが、育児というのがどれだけ大変か思い知らされた。
メロー『お兄ちゃん!一緒に遊ぼ!』
俺『あ、遊ぶ?俺は今少し忙し……』
メルメラはニコリと笑う。不敵に笑う。怖い。
俺『よーし!一緒に遊ぼうか〜!』
メロー『わ〜い!お兄ちゃん大好き!』
なんていうベタなセリフ……。だが!いい!
口で言われても、結局は自らが体験しなければ理解できない。その言葉に強く納得できたのは久しぶりだ。
このように
いろいろと事が起こってしまったせいで俺の感情は上下に揺れていて情緒が不安定になりそうだが、今は気を取り直す必要がある。
なんせ今日は武闘会なのだから!
俺『おし、準備万端!目指すは優勝!』
ジノル『ガンバ!』
ジノルは拳を突き上げ、
ライラ『お、応援してますぅ!』
ライラは震えながらお気持ち表明し、
レリエル『貴方の優勝にお金を賭けてきたの!だから頑張ってね!あ、こんなこと言うと金のことしか考えてない奴になるものね!まぁ!普通に応援してるわ!』
レリエルは金…ではなく、友のために叫び
サデラル『応援…しているぞ…汝に全財産…賭けた…勝て』
サデラルは全財産を賭け…
ナオマ『負けたらお嬢様に勉強を教えてもらうことになりますからね』
サミナ『うん?全然いいことじゃない 』
ナオマ『へっ』
ハテナを浮かべるサミナにそれを笑うナオマ
メロー『頑張れ〜!おにぃちゃん!』
メルメラの肩に乗り俺を兄呼びするメロー、そのメローを大人気なく睨みつけるミルマ
その他ジロル含め皆も応援してくれた。悪いがマータとムルムは話が長いから耳に入らなかった。
後、ジロルは影薄いし、ザラルルとジェンナードはそもそもいないし、ザイルはキモいし。
皆が多種多様な言葉、行動を残したので、俺は大いに困惑し、自らの思う心が疲労と言う二文字に削ぎ落とされそうになった。
そのまま削ぎ落とされれば良かったと言う自分を恐ろしく感じながらも、俺は武闘会と言うまだ見ぬ世界へとわずかな好奇心を持ち、強く地面に足を踏み入れたのだった。
ーーーちなみにこれは後で聞いた話だが。ザラルルは抽選に選ばれなかったようだ。
ザラルル武闘会に出場出来ず!
ザラルル『何故だぁぁぁ!』
彼はどうしようもない怒りを自らの声で押し潰した。
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『マラ・ガンノール…か』
マラの姿を見つめた。そして、微かに闘志を、戦いに心を躍らせているのを感じながら…
彼は、「喧嘩王」は溢れそうになる笑みを抑えながら、一言呟いた。
『武闘会…久しぶりに参加するか』
次回 武闘会は危険だ




