第二十一話 合宿
今回は短いです
俺『駄目だ…何すれば良いのか…分からねぇ〜』
考え始めてから早くも疲労に呑まれてしまった俺は自分の無力感に打ちひしがれていた。
その場にいたサデラルに俺の強さを求める思考が限界であることを告げた。彼は『まだ考え始めてから三分も経ってないぞ』…とでも言いたげな細い目で見つめてきた。お願いだから、そんな目で見ないでくれ。
ちなみに何故、俺は今、こんなにも悩んでいるのかと言うと…これは今日の出来事なんだが…
我らの担当教師ヌルデール先生が、『貴様らは今度行われるクラス対抗戦にて全勝しなければ、退学とする!なんなら、殺す!』と言ったことが原因だ。
これによって俺は学園で泊まることになったのだが、それを伝えた時のレリスの『がんばれよ』と言う目は今でも鮮明に思い出せる。
本当にいい奴だ。てことで、今俺は学園の寝室にいる。
寝室はすべてで三部屋、まず、今俺がいる部屋、人選はジェンナード、サデラル、ザラルル、俺だ。
そして二つ目はムルム、ナオマ、ザイル、ジロルだ。
ちなみにジロルは明日から来るらしい。
三つ目はサミナ、マータ、ミルマだ。
ってな訳なんだが、みんな大体察してくれたと思うが……うん、めっちゃ気まずい。
ジェンナードは黙り込むは、ザラルルはジェンナードを睨みつけるわで…サデラルも喋んないし…
そんな静寂の海の中で、突如嵐が現れ、その海を弾き飛ばした。
本来ならやめてほしい所だが、今のこの空間であるなら、感謝しかない。
ムルム『フフフッ!ベンゴ!』
そう叫ぶムルムだけでなく、他のSクラスメンバーも来てくれた。そして、みんなでなんか風呂とか入ってた。男女はもちろん別々だよ。ザイルなんかは男女混合を提案したそうだが。
こうして、合宿最初の日は無事…かは分からないが終了したのだ。
ーーーそして二日目
俺はジロルを出迎え、Sクラスにて授業を受け終わり、ご飯をいつもの仲間たちと共に食している。
たが、そんな空間の中でさえ、俺は思い悩んでいる。というのも…だ。クラス対抗戦までに各々が修行しとけとかなんとか言われたが、教師が直々に提案する訳じゃない。ヌルデール先生って面倒くさがりなのか?…まぁ教師と特訓みたいなことは流石にできるらしいが。
ジノル『まーだ、悩んでるのか?』
レリエル『ここで悩みの種を私が取り除かないと、私が薄情者になってしまうものね!その悩み聴いてあげるわ!』
ライラ『そ、そうです…ぼぼ、ぼ僕たち、ともっ、友達なんですから…』
ジノルに続いて二人も俺に悩みを話してくれることを望んだ。特に隠す必要はないし、ヌルデール先生にも何も言われてないので、話すことにした。
さっきも言ったが、レリスにだけは合宿することを既に伝えてある。
ーージノル『……昨日レリスさんが言ってた話か!』
なるべく手短にこの学園で合宿を行うこととその目的を話し、クラス対抗戦で全勝しなければならない話もした。
そうすると、ジノルは成程と手を打ち、レリエルはそもそも合宿があることを知らなかったようで目を見開き、ライラはそのあまりに長い期間の合宿であることに驚いた。
そんな三者三様の反応を見せた一方、一人の少女が唇を舌で湿らせ、ニヤリと笑い、興味津々にその合宿の話を聞いていた人物がいた。
『話は聞かせてもらったよ!』
鮮やかな赤のポニーテールが風でなびいているのが
特徴的なその人物の名は
俺『ノルマレス?』
俺は呆気なくその名前を呟くと、ノルマレスはそれに無邪気な笑顔で応えてくれた。とはいえそれは外見的な話で、その内の底は知れた物ではない。
いつノルマレスが何かイタズラをしようとしていると言われても不思議ではない。
何故こんなに疑っているのかと言うと…実は学園の合同授業を受けた時の話なんだが…まぁ簡潔に話すと、サデラルとその他ジノルと愉快な仲間たちとノルマレスに騙されたのだ。
そんなこともあり、大分疑心暗鬼になってしまっているのだ。
ライラ『のっ、の、ノルマレス様!…何故こここに?』
ライラは相変わらずの狼狽えた様子で顎が小刻みに震えているが、それをいつも通りのことと理由をつけてノルマレスは自然に言葉を返した。
ノルマレス『いや〜気まぐれに歩いていたら興味深い話を小耳に挟んだものだからさ…気になっちゃって』
どうやら先程の話を丸々聞いていたらしい。なら話は早い。
俺『なぁ、ノルマレス…どうすればいいと思う?』
俺の問いにノルマレスは一瞬言葉が詰まった。
というのも、今、ノルマレスはどうすればいいのか、二択に迫られているからだ。
自分が考える策を話すか、マラ自らにヒントを与えるだけにするか。
そんな葛藤の最中でノルマレスが導き出した答えはすばり…
ノルマレス『なら、まず自分の実力を知ろうよ』
後者の方であった。
俺『実力を知る?』
ノルマレス『うん、まず最初は限界を知らないと!うーん、おススメは武闘会かな』
俺『武闘会?そんなのあるのか?』
立て続けに質問を続ける俺をノルマレスは鬱陶しくは思わず、真摯に受け止め、答えてくれた。
ノルマレス『うん、あるよ』
ノルマレスが言うにはそれは毎日あって、最大十六人で行うものだそうだ。出場選手の選抜方法は、まず参加書を提出して、その中から抽選で選ぶらしい。
まぁつまり運だ。とはいえ毎年出場したがる選手はあまり多いわけではなく、最大でも三十人ぐらいらしい。
俺『ふ〜ん、あまり人気ないのか?』
ノルマレス『いやいや、人気は全然あるよ、ただ自ら参加しようとする人が少ないだけの話だよ』
俺『あ〜なるなる、自分に自信がある奴だけがその武闘会に参加するってことか』
ノルマレス『そ、だいたいそう言う人間ってのは本当に強いか、自分が強いって錯覚してる奴だけだから』
成程だから…武闘会がおススメって訳か。だけど、こう言う武闘会には…
俺『優勝賞品とかあるのか?』
ノルマレス『あるよ』
俺『どんな?』
ノルマレス『お金』
俺『うし、やるか』
決して金のためではないが、自分の実力を知ることは確かに大事だ。丁度おいしいケーキを買うための金を得るためではないが武闘会に出るとしよう。
そう意気込んだ時、聞き覚えのある偉そうな声が聞こえてきた。
ザラルル『ふん、弱者が出たところで無意味だぞ
!』
ジノル『ん?誰?』
獣毛に身を包んだ一人の男が声高らかに叫び、俺を指差した。
ジノルとの面識がなかったのでザラルルは前俺にしたようにまず手始めに指で目を突き刺さそうとした。
目、刺すのが趣味らしい。
だが、それを予知していたノルマレスは素早くジノルの前に立ち、手を前に突き出しザラルルの目刺し攻撃をいとも簡単に弾いた。
ザラルル・ケモナインダーが掲げる主義は実力主義で最も嫌う主義は強者主義だ。弱者が偉そうにしていたり強者を悪だと決めつけ非難するような連中が最も嫌いである。この思想はマサライト国、近衛剣士団団長であるガダルと似た思想だ。
何故そんなことを考えるのかは後々語るとして……
彼は強者と認めた相手には必ず誠意を払う。
だが、彼はこれまで一度も強者に怯えを感じたことはなかった。
強者という者は基本頭がイカれているというのがザラルルの考える強者の法則だ。
しかしノルマレスからは一切そのイカれ具合を感じない。隠すのが異常に上手いのか、本当にイカれていないのかは分からないが…
だからこそケモナインダーは紛れもない恐怖を感じたのだ。とはいえ、強者には違いない。この事実は絶対だ。
ケモナインダー『これが…「賢者」か』
ケモナインダーはその単語を口にして再度このノルマレスの実力を知る。だからこそ、彼は燃える。
ケモナインダー『勝つのは俺だからな!』
ザラルルはそう豪快に言葉吐き捨てて、行先を足に任せて走り出した。
ジノル『ちなみになんだけど…あれって?』
俺『Sクラスメンバーの一人』
俺がその言葉を、出すと『あぁ〜』とだけ口に出し、手を打った。
ザラルルの傲慢ぶりに納得がいったようだ。
俺『ちなみに開催は?』
ノルマレス『明後日だよ』
俺『明後日か…ま、練習とかはしなくてもいいし、充分か』
あくまで実力を知るために行うので、わざわざ練習を行う必要がないというのが俺の考えなのだが、ノルマレスはそれに納得がいかなかったようで、俺のその言葉に反論した。
ノルマレス『いやいや、いくら実力を知るためだけとはいえ、そういう感情で試合に望めば、きっと全力出せないだろうし、練習しなくていいわけじゃないよ…それにお金…欲しかったんじゃないの?お金を手に入れるためには優勝しかないよ』
俺『うぐっ!』
正直に言おう俺の心に正論と言う矛が突き刺さった。そうだ、俺は…
俺『金が欲しい!!』
大衆の面前で俺がそう言ったので周りのジノルたちは顔を赤らめたり、笑ったり、など多種多様で面白い反応を見せた。かくいう俺も、流石に恥ずかしく、真っ赤になった顔を隠すのに必死になった。
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そうして今、俺はSクラスメンバーのナオマ、サミナ、サデラル…そしてノルマレスと共に学園の鍛錬場にいるわけなんだが。
俺『人いなさすぎ!ボロボロすぎ!』
ナオマ『確かに…』
そう、とても内装が綺麗な学園には程遠い、ボロさだ。こんだけボロければ人来ないのは当たり前だ。
俺『何故誰も、掃除とかしないんだ?』
と思いながら、周りを見渡していると一つ不自然な点を見つけた。そう、見た目はボロいのに埃などは一切ない。
もしや…ここには…
『おいおい、ボロいだのなんだの、酷い奴じゃねぇか?何様だ?蹴るぞ』
嫌な予感は的中した。してしまったのだ。そうここには「喧嘩王」の名を持つ者が居座っていたのだ。
次回 鍛錬開始
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