第十七話 真の姿
俺『う、うぅん?』
俺はぼやける視界を直さんと目を擦り、閉じた目をもう一度開くと、
ソルサ『目が覚めたみたいだね』
俺『あぁ、え?あ!俺戻って来た!?しかもソルサさんがいる!』
ソルサ『っふ、ぐふっ、相変わらず、君面白い反応するね、君に任せてよかったよ』
半笑いのソルサさんが滑稽な俺のポーズを見ながらそう言った。
俺『ってことは?ループは終わった!?』
ソルサ『あぁ、ループは終わった』
俺『よし、これで!一件落着…』
ソルサ『ではないよ』
俺『ではないんかい!』
俺が適当なツッコミをしながらソルサさんに手の甲で叩こうとしたが、一気に緊張がほぐれたのか、はたまた体が鈍ってしまったのか…俺は足の力が抜けて、
倒れ込んだ。
俺『あ、あれ?』
ソルサ『…ふむ、一気に緊張感が解けてしまったからだろう、安心して、ほら』
ソルサさんはそう言って俺に手を差し伸べ、俺はその手を握り、足に力を入れ、立ち上がった。
ソルサ『ちなみに今は君たちが気を失ってから、まだ1時間しかたっていないからね』
俺『え、まじですか?…あれ?そういえば、俺…ループしていた時の記憶はあるけど、気を失う前の記憶がないな』
ロウド『あぁ、貴様に共有するのを忘れていた、何故かは分からんが、貴様にだけ、記憶が引き継げてなかったからな』
俺『ん?なんでだろ…』
ソルサ『ん?どうしたんだい?そんなに悩んで』
俺『あ、実は…』
俺が悩みの種をソルサさんと共有しようと口を開いた時、1人の声が聞こえた。そいつは自由を司る悪魔…
リベルターであった。
リベルター『ま、毒ガスを受けたのはロウドじゃないから当たり前だよ』
当然のように話に割って入って来たリベルターに俺は驚きロウドは睨みつけ、ソルサさんは警戒心を高めた。
俺『え』
リベルターは特に悪びれる素振りも見せず、俺たちに話しかけてきた。俺が記憶を引き継いでるってわかってないのか?
ロウド『な…リベルター?何故ここに…』
ソルサ『誰だい?君は』
リベルター『ん?吾輩かい?吾輩はリベルター!自由を司る悪魔さ!』
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悪魔…この世には悪魔が存在する。
その悪魔たちは多種多様で、各々の名の通りの行動を行う物達だった。
例えば落雷を司る悪魔、トルエノはその名の通り、雷を操り、契約の元…その力を使う。
悪魔と人は契約関係にある。人が悪魔に願い、代償を支払い、悪魔は人の願いを叶える。悪魔たちは多種多様ながらも、その契約にだけは従ってきた。
だが、そのような契約を破り、悪魔たちに恐れられていた。悪魔がいた…それが自由を司るリベルターだ。
彼は、その名の通り自由であった。自由でありすぎたのだ。
彼は召喚に応じず、自らが気に入った人間に目をつけ、その人間と契約する。そしてその気に入った人間に彼自身が契約の内容をすべて独断で決める。
彼が1番最初に契約したのは…異世界からの訪問者だったか…そいつは我々悪魔を従えた。今はもうこの世にはいなく、今の悪魔界は悪魔炎のアルタが統治している。
思えば、奴が1番規格外だった。まぁそんなことよりだ。今、吾輩が1番興味を持っている物を教えよう。それはね?
ーーーー君たちだよ…
なんちゃってね!悪いけど吾輩一途なんだよね、今絶賛ロウドにどハマり中だから君たちなんかに興味はないよ。それにいくら吾輩と言えども君たちに接触することはできないし。
さてさて、前座はこれで終わり、本題に入ろうか。
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1人の人間がいた。その人間は生まれつきの肥満体質の貧乏な人間だった。飯もあまり食べていないのに痩せない彼の体は、次第に彼自身が自らの体を、運命を呪い、そして自らを蝕むようになっていく。
1人彷徨う、彼は天才…天才すぎたが故に家族と友を失い、夢を失った。
その両親はどうしようもない貧乏であったが、でも…それでも彼を、拾った。いつか、自分たちよりいい生活が送れるようにと…彼は両親の愛に包まれながら、貧乏な生活を送った。いつか、自分がいい金持ちの生活を送れるようにと…
彼は天才だった。貧乏であったが彼はいろんな国を転々として、着々とお金を稼いでいた。
そんな何もかもが順調だった時だ。
彼の才に嫉妬した貴族が彼の両親を殺したのだ。
彼は怒り狂った。そんな彼を鎮めてくれたのは、他でもない彼の両親だった。
両親は言った。愛を持ちなさいと…それが人として、良く生きることになると…
彼は怒りを鎮めた。だが、生きる意味がなくなった。
何せ彼は今まで両親のために頑張っていたのだから。
だが、彼は天才、彼はまだ生き続ける。天才であると言う運命は彼を縛りつける。
彼は昔の夢…金持ちになる夢を叶えた。だが、彼は天才、それを成し遂げたのに何も感じなかった。
そんな彼は出会った。1人の偉大なる御方に、彼は天才、だが、その偉大なる御方…仮面様の前では、彼はただの天才でしかなかった。
仮面『俺に着いて来い』
彼は仮面レジスタンスの一員となり、そこでたくさんの者達に出会った。その皆が復讐の炎を宿していた。
『機愛』の名を得た彼はハートの仮面を被り、十一の機械星の名を与えられ、仮面様に絶対の忠誠の愛を誓い、仲間たちに…かつて両親が言っていた愛を持ち、彼だけは天才たらしめた運命に愛を宿した。
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リベルター『ま、そんなこと気にしてる場合じゃないんじゃない?ほら!』
リベルターがそう指をさした。その方向にいたのはジロルでもなく、ザイルでもなく、スエルスでもない。もがき苦しむ機愛であった。
機愛『あ、あぁぃ愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛ぃぃ!』
ソルサ『ま、まずい!早く…とどめを刺さなければ!』
異変に気づきすぐさま動いたのはソルサさんだった。
そして、その声で起きたのか、ジロルとザイルが目を覚ました。それだけでなく、他の人々も目を覚ましたその時、1人の悪魔がこう口にした。
リベルター『この劇に不必要な輩には退場してもらわなきゃね』
リベルターがそう口にし、何かを取り出し、それを頭上に掲げると、その何かは光り出し、人々は姿を消した。俺とソルサさん、そしてジロルとザイル、機愛を残して…
俺『え!?いきなり皆消えた!?』
それに…ロウドもいない!?
俺は必死に脳内に語りかけたが、反応がない。
ソルサ『何が起きてるか分からないが、まずはあれを止める!』
ソルサさんはそう言って、双銃【虚偽の銃】と【真実の銃】を出現させた。
そしてその2つの銃は火花を散らし、機愛の脳天を打ち抜いた。かのように見えた…彼の体はみるみると溶け出した。
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愛愛愛愛愛愛愛…………愛……
彼には同じ目標を持つ仲間ができた。
彼には彼を導いてくれる主ができた。
彼には守りたいと思う友達ができた。
機愛がみんなを信用していなかった時でさえ、彼にとってはみんながかっこよく見えた。彼らにしてみればおではただの天才でしかなく、仲間でしかなかったんだ。彼らは機愛に愛を与えた。
だから、愛を持とうと誓った。
敬王…おめぇは相変わらず威圧感を撒き散らしているのだろうか。
怪金…酒を飲み交わしたあの頃の友は変わらず元気なのだろうか。
悲呆…おめぇともう一度あえれば今度こそ友達になれるだろうか。
怒鬼…おめぇは英雄になれただろうか。
優呪…今のおでならおめぇの考えについていけるのだろうか。
荒喜…おめぇはまだこの軍を好きでいれているのだろうか。
憎海…今日もまたギャーギャー騒いでいるのだろうか。
楽夢…おめぇはずっと楽しそうに笑っていたな。
蝶憂…おめぇらはずっと仮面様のために頑張ってるのだろうか。
暗霧…顔は一回も見たことないが、おめぇはおでたちと友達だと思っているのだろうか。
機愛…おめぇは…貴方は最後までよく頑張っていた。
おではみんなを愛してるどーーーー
ーーー機愛『やっと…出来たど…やっぱり!おではやればできる子だど!』
『…貴方は?』
視界が暗黒に包まれた彼はそう言葉を発した。
機愛『おでは…機愛…そしておめぇは機愛35号だど』
機愛35号『何故…35号なのでしょうか…』
機愛『おめぇが35番目に造られたからだど』
機愛35号『なるほど…』
機愛『まぁ細かい事は後で全部、おめぇの脳内に送っておくど』
機愛35号『ですが、何故私をお造りに?』
機愛『それは…おめぇに全部託すためだど』
彼は…機愛はただの天才であった。だが、いくら天才と呼ばれようとも、天命には抗えない。
機愛『…仮面様を…皆んなを頼んだど…』
35号からしてみれば、とんだ押し付けだが…だが、それで良かった。35号には生きる意味が出来たのだから。自分を造ってくれた恩返しとして…彼は機愛の皮を被った。そして、彼はハートの仮面を被り、彼もまた仮面様への忠誠を誓い、機愛…自分自身にも絶対の忠誠を誓った。
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機愛『おでは…機愛…私は…35号…私は!35号として!任務を…遂行する!』
機愛…いや35号は、胸に宿る思いを目一杯に吹き出した。
ソルサ『な!』
35号『速攻で決着をつけさせてもらう!』
そう…35号には、残された時間が少ない、理由はただ1つ、天使による文明の破壊だ。もし、35号の存在が神に認知されようものならすぐさま天使を地上に誕生させ、すぐにこの国を滅ぼしにくるだろう。
今の35号でも、天使の力には敵わない…それに、これは35号にとってだけでなく、ソルサさん側にとっても、天使を誕生させたくはない。和解…と言う手もあるが、35号とソルサさんはそれを認めるつもりはない。
すなわち、これは短期決戦だ。
35号は両手を広げ、右手が変形し近未来的な光の剣…光線剣に、そして左手も同じく変形し、近未来的な光の盾…真ん中に円を描いた黒色のものから黄色の光を放っている……光固盾を出現させた。
35号『光線放出』
俺がそう驚いていると…不意に35号はそう言い放ち、35号の目から俺に向けて光線を放った。
俺『え?』
ソルサ『危ない!』
ソルサさんはそう叫んで俺の体を持ち上げて、その光線を避けた。
俺『あ、ありがと…』
俺がお礼を言おうとすると、ソルサさんは35号の方を見ながら、俺に言った。
ソルサ『よそ見厳禁!』
俺『は、はい!』
35号『去ね』
35号が殺意を高めてそう呟くと、右手の光線剣でソルサさんを貫こうとする。
だが、ソルサさんも対抗する…ソルサさんは先程出現させた双銃の引き金を引こうもした。
35号『無駄ですよ、私の体は!何よりも固い!』
35号は恐れず突っ込んでくる。
ソルサ『そんなこと気づいているとも…』
ソルサさんはそう呟いて、35号の右肩を狙い撃ち、その反動で攻撃の軌道をずらそうとした。ガンノールを巻き込まないように…
しかし…
35号『それをやっても…無駄ですよ!』
35号はそう言って、ずれた軌道を利用し、ソルサさんを盾で跳ね飛ばし、俺を再び光線剣で突き刺そうとする。
俺『や、やべ』
恐怖で足がすくんで動かない。やばい、やばい、やばいやばいやばいやばすぎる。
まだ死にたくない、死んでたまるか。もう死にたくない!
だが、35号の攻撃が止まることはない。俺を突き刺さそうとする、右手は止まる気配すらない。そんな絶望的な瞬間に1人…声を上げる。
『皆んな!目…瞑ってくれ!』
その声は…あの変態野郎、ザイルであった。
俺はすぐさま目を瞑り、他の皆も目を瞑った。
目を瞑れない、35号だけを残して…
ザイル『黄光視遮!』
ザイルがそう叫ぶと一瞬にして35号の視界を黄色の光で覆った。
35号『何も見えない…』
俺『ウィンドステップ!』
そして俺はそれに合わせて普通魔法で風を足元に集中させ、両足にまとった風を地面に叩きつけるようにしてなんとか後方に退いた。
ソルサ『ガンノールくん』
そんな切羽詰まりそうになり心臓がバクバクの俺を見つめてソルサさんは俺の名を呼んだ。
俺『俺…邪魔ですよね!退がっときます!』
ソルサ『いや、逆だよ、君たちの力が必要なんだ』
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この世界には数多の種族が存在する。
その種族は大まかに三つに分けられる。
まず、1つめの種族は皆さんご存知…人間種である。これらは人の血が混ざっていることが条件である。例としてあげるなら、人間、猫人、犬人、竜人等だ。簡単に言えば、人…が入っていれば、この種族に当てはまる。
そして2つめは人間ではない生物の種族…人外種である。これらは人の血が混ざっていない、生き物であることが条件だ。例としてあげるなら、エルフ、吸血鬼、もちろん犬などもこれに属す。
最後の3つ目はそもそも生物ですらないのにも関わらず、思念を持って生きることが出来る種族…神聖種である。
例としてあげるなら…聖銃、「剣聖」が持つ聖剣などがある。これらは意志を持っている。
何故こんな話を始めたのか…それは簡単な話だ。
聖銃と呼ばれる者こそがあのソルサであるからだ。
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俺『え?嘘…だろ』
俺が愕然としているのには理由がある。そう…さっきまで人だったはずのソルサさんが、銃になっているのだから…
ジロル『え!?まさか…神聖種!?』
神聖種…学校の授業でそれを学んだことはあったが…
俺『本当にこの世界…ちゃんと異世界だな…』
もちろんあたりを見渡してみれば、そこら中に異世界特有の物があったりするのだが…
俺『なにせ、この世界の住民のほとんどに俺の元いた世界のオリジナルであるはずの言語が分かっちゃうんだもんなぁ〜あ、ロウド以外は』
ソルサ『ガンノールくん!よそ見厳禁!だよ!』
不注意な俺の姿を正すよう、ソルサさんはきちんと叱ってくれた。
俺『あ、そうだった!』
俺は慌てて35号の方を見たが…
俺『やっべ!いない!?逃げられた!?』
ソルサ『いや、それはないね、彼は天使たちが来るギリギリになるまで逃げるつもりはないはずだ…なにせ、折角入手した魔力が全て無意味になるからね』
俺『え?何でですか?』
ソルサ『ほら、君に渡した、カードがあったでしょ?あれは元々君の脳内に入れておいた物なんだけど…実はそのカードの中にたらふく魔力が入ってたんだ、そして、それこそが彼らの目的なんだよ』
さらっと恐ろしいことを言われたが、今は気にしている場合ではない。
俺『とにかく、油断禁物ってことですね!』
俺『ザイル!ジロルくん!力…貸してくれるか!?』
ジロル『もちろんです!』
ザイル『パンツ見せてくれるなら…』
俺『よし!行こう!』
ザイルの言葉をかき消すように思念の宿った金色の拳銃を持ち上げ声を上げた。
次回 決戦の行先




