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第十六話 永遠のループ

 俺『な、え?』


 『今からこのお方は遠方に出向く必要がある』


 俺『ほう?』


 『それで貴様にその道の危険を防いでもらいたい』


 俺『ん?いやいや!ちょっと待て!なんで俺がやるの!?なんか傭兵とか雇えばいいじゃんか!?』


 『傭兵などわざわざ雇う必要があるほど危険な場所を通るわけではないし、傭兵は嫌いだ。というかそれが1番の理由だ…それにお前、あの探偵の助手なのだろう?探偵が言っていた。「私たちはなんでもできますし、無償でも全然やれますよ」しかも今、我々は金欠なのだ』


 俺『あんた、むちゃくちゃですよ!?』


 ソルサさん!?なんで「たち」をつけてるの!?

しかも無償…こんな所で勿体無い時間なんて過ごす暇なんてないが…困ってるのを見て見ぬフリはできんよな…困る。


 俺『でもですね?もし俺がこの少女に危害でも加えたら』


 『それは不可能だ、このお方にはあらゆる攻撃は通用しない』


 俺『え、あらゆる攻撃?』


 『そうだ、だから貴様には殺せん』


 それって固有魔法か?それとも影響魔法によるもの?それは分からないが…なるほどな、俺が例え失敗してもこのシスターガールは殺せないからか…


 俺『それじゃあ俺、いらなくね?』


 『あくまで殺さないだけで、傷を負わないと言う訳ではない。華麗なる御方になるべく血は流したくない』


 俺『でも、お前は?いかないのか?』


 『行くに決まっているだろう、馬車で渡るのだから馬を引く者が必要だろう』


 俺『え?あなたが引くの?』


 そのあまりにも早すぎる答えに俺は放心していたが、神父はなにふり構わず、話を変えた。


 『で、行くのか?』


 断ったら死という事を先読みできるぐらいの威圧感を放ちながら、彼はそう言った。


 俺『分かった!やるよ!でもどんぐらいの距離あるんだ?時間単位で教えてくれ』


 『そうだな…日の上から日の下までかかる』


 俺『半日!?そんなに!?』


 でも、それだと…


 俺『でも!それだと怪盗Mは!?どうするんだよ!?』


 『…それに関しては問題ない、対策はしてある』


 対策?いや、だったらなんで毎回普通に盗まれてんだよ!だが、まぁ気分転換という意味で一旦こういう話題から離れた方がいいのかもな…


 俺『なら!早く行こうぜ!』


 『感情の移り変わりが激しいな』


 そんな彼の発言を無視し、吹っ切れた俺は豪華そうな馬車の箱に入った。 


 『もう一つ、お願いがある』


 俺『え?』 


 『正直な話、こっちが本音だ』


 『あのお方と会話してやってくれ』


 そして、馬車は動き出す。音を立てながら、体が揺られながら、馬車は進んでいる。そんな馬車の箱にいる2人の人間…会話している気配はなく、男の方は気まずく思っている。


 女の方はーーーーー


 スエルスは緊張している。心臓が震えている。

それは何故か?そう彼女は今まで人と対等に話すことがなかったからだ。


 そのせいで、彼の言葉を上手く返すことが出来ない。


 スエルス『す、すみません…その私…』


 『え、えーと、緊張する必要ないからね?話したくないなら別にそれでいいけど…』


 スエルス『あ、いや、私…もうちょっと話したい…です』


 『そ、そう?なら…そうだな…俺のこと、友達だと思って接してくれればいいよ』


 スエルス『と、友達』


 その言葉を聞いたのはいつぶりだろう。もう、はっきりと覚えていない。


 スエルス『いいんでしょうか…友達…』


 『ん?やっぱ、友達は無理か…』


 スエルス『い、いえ!友達…なりましょう!』


 彼女は思い切ってそう本心を叫んだ。


 『お、ならまず何から話す?』


 スエルス『あなたは何処から来たんですか?』


 ガンノール『あなたじゃなくて…マ…いやガンノールって呼んでくれ』


 スエルス『ガンノール…さん』


 ガンノール『うん、で、さっきの話だけど…俺は……とある城に住まわせてもらってな?そっから…ん?…あれ、なんか…いや、まぁなんやかんやあって

ここに来て学園で授業を受けてるって感じだな』


 スエルス『随分とあやふやですね…』


 俺『え?そう?じゃあそんな君はどんな人生を歩んできたんだ?』


 スエルス『じん…せい』


 私の人生…それを思い出そうとすると同時に、悲しみの感情に溺れ、言葉を詰まらせる。


 俺『え、あ、話したくないなら別にいいから!』


 スエルス『いえ、ガンノールさんも話してくれたんです、なら私も友達として話さなければならないんです』


 俺『いや、別に友達だからってそこまでしなくていいよ!?』


 スエルス『なら…私が話したいから話す…これではダメでましょうか?』


 俺『…まぁならいいけど…』


 私…スエルスの生まれは特にこれと言って何の特徴もない村でした。何もなくて、すごいとも思わない村でしたが…私は好きでした。何も感じないあの景色が…優しく、楽しく笑い合うあの村人たちを…でも…そんな平穏は去ってしまう。この世界は甘くないのですから…


それはある日の朝、私はいつも通り親とご飯を食べ友達と遊びました。そんな時でした。神話協会を名乗る団体がこの村に押し寄せ、こう言ったのです。『この場にスエルスと言う少女はいるか』その団体の前に私が出ると、1人の男が私に言いました。


 『あなた様は神に選ばれし、神の使徒です』と、

そう言うと同時にみんな私に跪いたのです。神話協会の方々も、友達や近所の人、そして家族でさえも、


 唯一、友達として接してくれた人も、その友達の親に無礼だと説教し、私に謝ってきた。それっきりその友達とも喋ることはなくなった。


 そこからの人生は毎日いっしょでした。


 毎日毎日毎日毎日毎日、回復回復回復回復回復、

相談相談相談相談相談相談、崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝崇拝。


 ガンノール『お、お…落ち着け!』


 ガンノールさんは私を前後に揺さぶりながら慌てていた。


 スエルス『あ、すみません…』


 ガンノール『すごい苦労したんだな…お前…まぁ、苦しいなら、泣いたっていいんだよ!あ…その、おこがましいけど、俺がお前の友達なんだから!』


 あぁ…一体どのぐらいその発言を聞きたいと願ったのだろうか…一体どれくらいそれは叶わない願いだと、諦めていたのだろうか。


 そこからどのぐらい泣いたのか、分からない。私はどれだけ以前の友達の事を思ったのだろう。


 スエルス『友達が…欲しいです』


 ガンノール『おう、ならこれからもっと友達作ろう!俺も手助けするからさ!』


 そんな彼の発言に…

 スエルス『友達、えへへ〜』


 私は抑えきれない感情を笑顔と言う形で溢れたのだった。


 その時ーーー言葉に出来ないほどの頭痛を感じたーーー


 俺『お、おい!どうした!?』


 異常なことが起きた。それも2つも…1つはスエルスが頭を抱えて、苦しみ出したこと…それと、もう1つは…空だ。何やら空に緑の光が現れた。その緑の光は文字となっていた。


 解除シウアエユウシコ?と…


 俺『解除…?一体何を解除したんだ?それとも解除するかの提案?…どちらにせよ、このシスターガール…スエルスが苦しみ出した事と何か関係があるのは間違いない』


 とにかく、だ。今は一刻…がっっ!!


 途端に息が出来なくなる。まるで誰かに首を締め付けられるような感覚だ。慌てて首元を触ってみるが、そこには何もない。


 俺『な…に……っが!』


 そして俺の首を締め付ける力はどんどんと大きくなっていく。


 ロウド『くっ…これは俺様でも、きついな…しかも透明な首輪や魔法によるものでもない』


 ロウドがそう呟いていたが、俺はそれどころではなかった。息ができない。しかも、死なない。正に生き地獄だ。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。


 そして次第に首の筋肉が骨にまで達し、突き刺さる。そしてその骨さえも砕き始めた。


そして…意識が薄れていく。


 ーーーーーーー


 パチパチと…嫌だ。瞬きをする。嫌だ。そして目を開き、嫌だ。体を起こす。嫌だ嫌だ。今日も…張り切って参りましょう〜!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。


 俺『嫌だ!』


 ロウド『ふん!』


 恐怖に溺れた俺の頬を…心の中にいたロウドが…叩いた。


 ロウド『何があったか知らんが、貴様はまた精神を不安定にさせるつもりだ!』


 お前に何がわかる!俺はな!何回も何回もループループループループループループループループループループループ!永遠のループ!


 何回繰り返せばいいんだよ!それに…それに!あんな苦痛感じたくない!


 そんな、弱音を吐く俺の心情を払うように俺の頬を再び叩いた。


 ロウド『貴様が苦労したのは分かった…だが、それだけか?貴様はそれだけで諦めるのか?貴様がしたい事はなんだ!教えてみろ!俺様はな!自分の意思を自分で否定し、貫かない奴が大嫌いだ!さぁ話してみろ!貴様のしたいことは何だ!何を成し遂げる!

マラ・ガンノール!いや!荒川魔羅!』


 俺『あ…ぁあ』


 俺は聞いた。懐かしく久しい、俺自身が嫌った呪いの名前を。そうだ…俺は…親が憎い…そんな親から与えられた名前が憎い。


 それは将来永劫変わらないものだ。だけど…俺はこの世界に来て、新たな親を知り、新たな友を知り、新たな恋を知った。俺はこの世界がとてつもなく好きだ。まだこの世界のことは知らないことばかりだけど大好きだ!だから誰も苦しんでほしくなんかない。


 俺『救うよ…救ってやるよ!俺が!みんなを!』


 ロウド『ふん、ならさっさと立て』


 そして俺は自分の頬を叩いた。もう何回叩かれ、叩いたのだろうか…3回ぐらいか?だが、これで決心はついた。


 俺『このループを終わらせてやる!』


 ーーーまず俺は前の日と同じように学園をサボって教会堂に立ち入り、前と同じ会話を繰り返す…と思っていたのだが…何やら騒がしい。そこら辺で慌てていた人に話を聞くと、どうやら、スエルスの様子がおかしいらしい。


 俺『…まさか…』


 俺は慌てて、スエルスがいると思われる病室のようなものを探そうとした。その時ある物が目に入った。


 そう…何やら地下へと通じる道だ。それを覗いていると、突如声をかけられた。この声はナイース・ガンバだ。


 ナイース・ガンバ『悪いですが、そこは立ち入り禁止で…』


 俺『ロウド!頼んだ!』


 俺はその言葉を口に出し、ロウドに意志を委ねた。


 ロウド『仕方ない…』


 ロウドが俺の願いを聞き届けると同時に俺の意識は薄れ…目が覚め、目をゆっくりと開くと、そこには転がった兵士のような人と神父。そして名前不明が倒れていた。普通ならなんでそこまでしたんだよ!って、気にしなければならないが…今はそれより!ベッドに倒れ込んでる…


 俺『スエルス!』


 スエルス『苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいく…』


 俺『ガンノール!俺の名前だ!あって間もないお前の友人だ!覚えてるか!?』


 スエルス『あ…が、ガンノール…さん…あ、私…』


 やっぱりだ。昨日のことを覚えている。スエルスもループの記憶が残っている。恐らく今までスエルスがそれに気づかなかったのは単に変わり映えのない景色を見続けてきたからだろう。とはいえ、今はスエルスの精神を安定させないと…


 俺『え、えーと!あぁ…』


 俺『混乱してると思うが…とりあえず、落ち着いてくれ』


 スエルス『あ、ガンノールさん…わ、わた、わたし…』


 俺『別に無理しなくたっていい…俺に気を使わなくてもいい、なんたって俺はお前の友達だからな』


 スエルス『ガンノール…さん…』


 泣き声を上げ、眠りについたスエルスを横に寝かせ、目が覚めるまで待った。ちなみに他の奴らは全員外に追いやった。あいつらが中に入ってこようとしないように鍵も閉めた。はたから見るとただの監禁だが、今はそんなこと言ってる場合ではない。


 俺はとりあえず落ち着いたスエルスの話を聞き出した。どうやら俺の予想通り、あの馬車に乗った日までループしていると分からなかったらしい。そして、そんな退屈な日常の一環を頑張って思い出してもらうと、以下のことが分かった。


 スエルス『そう言えば…いつも馬車に乗ろうって話をしていましたね…でも、とあるお人から、それは危険だからと言って行くことを止めて来たんです…それにあの若い神父さん…ノルウェルさんが、あっさり受け入れて…それでそんなやりとりを毎回見ていた気がします』


 そのとあるお方ってのが、どうやら、あの肥満体型の…名前不明。


 だが、それでは疑問が残る…俺の推理では怪盗Mの正体はあいつではないはずだ。だったらあの名前不明は何者なんだ?


 積み重なる疑問にますます思考が混乱しつつもその波に流されまいと、話を変える。


 俺『とにかく、今は…怪盗Mの正体からだな…』


 そして時は過ぎていき、いよいよ怪盗Mのご登場…というわけだが、今、俺のいる場所にその答えがある。その場所と言うのは…密談室だ。


 俺『まさか…こんな所に隠し通路が置いてあるなんてよ』


 こんなもんどうやって作ったんだ。それに悪趣味が過ぎる俺がスエルスの話を聞かなかったらきっと分からないだろう。そう言えるぐらい普通の壁に見えたのだ。


 そうなると…当然ここに隠し通路があるなら、ナイース・ガンバが怪しくなる。しかし、もしそうであるならわざわざ怪盗Mが現れたとざわついていた時あんな真っ先に部屋から出るのは不可思議だ。


 もちろん、そもそもその話が嘘である可能性はあるが…その騒ぎの後に意識が途絶えたから、まぁ、本当だろう。他に青い宝玉を盗もうとする奴は見なかったからな。


 先に行ってくれだの、なんだの言って自分が部屋に残ればいいのに。ていうかそもそも怪盗Mが現れたって言った時に同じ場所にいた時点で怪盗M本人な訳ないか。とだが、これで分かった。恐らくナイース・ガンバは怪盗Mの協力者だ。


 何故か、理由は単純…挙動が不審すぎるのだ。

先程怪盗Mではないと言ったが、それにしてもおかしな話だ。

 あいつは俺を密談室に誘うのはいささかおかしな話だ、秘密の場所がバレないと信じて切っていたとしても、バカ正直にここが待機場所だと伝える必要はない。


 だって、そもそもソルサさんにも教えてないことだぞ?

 だから、俺は一つ説を立てた。

それは敢えて俺を密談室に連れてきた可能性…

もし、ナイース・ガンバが協力者ならばそれは十分にありえる。


 俺が探偵であることを知っているのなら、事件を探ることも知っているはず、だからそうやって自分に疑いを持たせ、俺を監視下に置いた。


 全ての事が上手く行くように…


 ナイース・ガンバの目的は分からずじまいだけど…(ナイース)が隠し通路を事前に作っておき、怪盗Mがそこから入って行ったのだろう。


 そして俺がナイース・ガンバに着いていくと言ったとき、その時は特に違和感を感じなかったが….今思えば明らかに怪盗Mが現れるのが遅かった。これは恐らく、ナイース・ガンバとノノを、無理矢理引き止めたからだろう。


そのせいで本来の予定から外れてしまったのだろう。


 つまり、怪盗Mの正体は


 その事実が分かると同時に怪盗Mの由来も分かった。そう、英語だ。この世界には普通に英語が存在するのだ。と言っても存在するのは単語だけで、実際の文法などは使ったりしない。日本語の会話に少し英語を入れる。そのぐらいのものだ。


 そして、本題だがノノを英語にしてみてくれnono…nn…m…となるだろう…『え?本気で言ってる?』と言う人もいると思う。実際は違うのかもしれない。いや、てかそんなことどうでも良くね?なんでこんな話したんだろ。


 そんな意味のない思考を巡らせていると、俺はいよいよ隠し通路の中に入り、隠し通路を抜けた。


 そこで俺が目にした光景は…漆黒のマントを背負った怪盗M…それから、周りに何人か…


 俺『仲間、まだこんだけいたのか?』


 M『!?…誰だ!』


 俺『その妙な喋り方やめたらどうだ?なぁ?ノノ…』


 俺がそう口にすると、一瞬時が止まったかと思えば、Mが口を開いた。


 M『お前ぇぁ…誰だぁ』


 俺『俺?俺は山田探偵事務所の探偵の助手だよ』


 ノノ『はぇぁ?お前!あの930、803(山田)の助手ぁ!?』


 俺『で、これから何するつもりなんだ?まさか…教会に裏切り者がいたなんてね…』


 ノノ『お前ぇぁ、何か勘違いしてるなぁ?』


 俺『勘違い?』


 ノノ『00(おれ)はぁ、仕事をしようとしてるだけだぇぁ』


 俺『仕事?盗む仕事か?』


 そんな的外れな俺の発言に、ノノは頭を抱え、顔を上げ、事を伝えようと決心した。


 ノノ『00たちはぁ偉い人から言われただぇぁ…

儲かるために一芝居打ってほしいってなぁ、どうやら本来なら違う奴がやるみたいだったがぁ、そいつが消えたから他の奴を探したんだとさぇぁ』


 俺『儲かる?プラマイゼロじゃね?』


 ノノ『偉い人が言うにはぁ、話題性を集めたいんだとぇぁ』


 俺『あーなるほど…そう言う感じか…でも、爆発はやりすぎだろ』


 だから、探偵を呼んだのか、成程、ナイース・ガンバがわざわざ勘違いさせようとしたのにも頷ける。


 ていうか、教会もグルだったんだな。


 俺は偉い人たちの思考を理解し、納得した。だが、それはそれ、これはこれだ。実際爆発する事で死んでしまってるわけだし…でも、そう考えると、なぜ俺はループしてるんだ?しかも俺1人でなく、複数人も?


 ノノ『ん?待ってくれぇぁ?爆発って何のことぁ?』


 相変わらずのふざけた喋り方だが、その顔は真剣だった。


 俺『お前らがやったんじゃないのか?』


 ノノ『当たり前だろぇぁ、危険すぎるぁ』


 そうなってくると…ますます、あの名前不明の太っちょが怪しくなるな。まぁナイース・ガンバの可能性もあるか。そう言えば…ノノが『本来なら違う奴がやるみたいだったがぁ』とかって言ってたな?その本来の怪盗役はどこに行ったのだろうか…


 だが、まぁまずは爆発を止めなきゃな。


 俺『じゃあせっかくで悪いんだが、青い宝玉を取ろうとするのは辞めてくれ』


 ノノ『えぇぁ?そんなのぁ00たちじゃあどうしようも…』


 俺『青い宝玉を取った…約10秒後にこの教会堂が爆発する』


 そんな俺の発言に戸惑う者もいれば冗談だと思うやつもいた。そしてノノは…


 ノノ『はぁ?……っち!…分かった…なんでかはぁ、わかんなぇぁがお前ぇぁからは1031の匂いがするからなぁ』


 あっさりと受け入れた。


 そして俺はこれで爆発することはなくなるだろうと思っていた。だが、その思考は途端に破壊された。

パリィんと言うガラスの破壊音と共に…


 破壊音が聞こえたその方向は…青い宝玉のある場所だ。何とか上から見下ろし、現場を見ようとする。そしてそこにいたのは、今にも青い宝玉を盗まんとするヒィセスさんだった。


 俺『え、なんで…やべぇ!?』


 いつも爆発が起こるのには必ず起爆装置のような物が必要だ。もちろん時限爆弾の場合には必要ないのだろうが…ある時、俺は爆発するときに時石を見ていたから分かることだが、爆発する時間が同じの時もあれば、全然違うこともあった。現に本来ならもう爆発しているはずの時間なのにまだ、爆発していない。


 故に俺はある1つの考えが浮かんだ。そう…あの青い宝玉だ。あの青い宝玉をどうすれば爆発するのかはよく分かっていないが…どちらにせよあの青い宝玉を手に取らせてはならない、ならないのだ。


 俺『くっそ!』


 考えるんだ。思考を巡らせろ、頭の中を掻き回せ!


 ロウド『どうやら…その必要はないらしい』


 俺『え?』


 そう…これは偶然と言うべきか…それとも運命と言うべきか…今にも青い宝玉に触れそうになってるヒィさんをジロルが雷の光線で阻止して見せたのだった。


 それと同時に周りが騒ぎ始めた。


 俺『くっ!』


 いち早くあそこに駆けつけなければならない。だが、密談室に迎えと、直感がそう告げたのだ。これから何かが起こると…俺はその直感の意図を理解しようとすると同時に密談室に向かい始めた。


 そんな時、俺の中にあった1つの記憶、1つの言葉を思い出した。


 『いらないと思うことも耳に入れておけ…』とヒィさんが発した言葉が脳を駆け巡ったのだ。何故今、そんな言葉を思い出したのか、俺には分からないが、何やら大事なことなのは理解した。


 俺『いらないと思うこと…か…』


 いらないと思っていたことは多数あるが…その中でも…何が1番印象に残っているのかと言えば…ロウドが言っていた。あの悪魔だ。だが…この件に直接関わってるわけは…いや、待てよ…


 なぁロウド…お前…リベルターって奴のことは知ってるよな?


 ロウド『ん?…何故そのことを…いや、なるほど…そうか…もちろん知っている』


 ロウドは一瞬戸惑っていたようだが、瞬時に事の状況を察し、俺の問いかけに答えてくれた。


 俺『お前とそのリベルターの関係って…もしかして…契約関係にあるのか?』


 悪魔と言えば…契約…悪魔に代償を払い、召喚主の願いを叶えるイメージがやはり脳にこびりついてしまう。


 ロウド『まぁ…そうだな、あいつとは訳あって契約をしているが?それが、貴様の状況と何の関係がある?』


 俺『なぁ、そいつって呼んだら来てくれるか?』


 ロウド『なるほど…召喚したいのか?ならば、恐らくそれは叶わないだろう…貴様も知っていると思うが、奴は自由を司るだけあって、その行動も未知数だ…ましてや、あいつはかなりの性悪、応じるはずはない』


 俺『まじか…』


 それじゃあ意味ねぇのか…絶対来るって分かれば、このループと言う超常現象にも説明がつくんだがな…


 俺『となると…もう単に魔法でやってるとしか…』


 そんなどうしようもないという気持ちに打ちひしがれてしまいそうになり、その思考を放棄し、別の話題に変えようと思ったその時だった。


 『よっこらせぇ〜』


 1人の声が聞こえた。その声の主はそこにあるはずの壁を破き、こちらの世界へと足を踏み込んだのだ。


 そしてその者の名は、


 ロウド『リベルター』


 リベルター『お〜えらいことになってんがまがまな』


 そう陽気に話すリベルターを鋭い眼光で見つめるロウドがそこにいた。


 ロウド『どういうつもりだ』


 リベルター『どういうつもりも何も、どうなってんのか見ようと思っただけさ』


 俺『え!?ロウドの声聞こえてんのか!?』


 リベルター『ロウド?あぁ、ジェンロウドのことか、当たり前だろう?なにせ吾輩はこいつと一心同体だからな!』


 リベルターは両手を振り回しそう言った。ロウドは相変わらず睨みつけているが、俺からしてみればこの世界について知れる絶好のチャンスだ。


 俺『なぁリベルター…さん?あんた一体どっから来たんだ?』


 リベルター『ん?リベルターさん…ふふ、気持ち悪い呼び方だね!あれ?気持ち悪い呼び方かな?ま、いいや…君たちに教えてあげたいんだけどね…気分悪いから教えらんないわ』


 俺『そうか…分からないなら…しかた…ん?気分が悪いから?』


 そんな理由であるはずがないと、俺は空耳だったことを信じてその言葉を疑問形にして再び発した。しかし、奴がそんな慈悲深い訳もなく、その言葉は肯定する形で頷き言葉を続けた。


 リベルター『そうだ…せっかく面白いアニメ見てたのにさ!』


 俺『え、アニメ?』


 元の世界にあったはずの知識が唐突に出てきたので、思わず、声をこぼした。


 リベルター『うん、そうだよ?あっ!そう言えばこの世界にはないんだっけか…まぁそういうわけで気分が頗る悪いんだな〜』


 俺『いや、でも…話してくれるだけでいいので…』


 ロウド『無駄だ、そいつには心がない』


 リベルター『ひっどいなぁ〜心ぐらいあるよ!分かった!なら、教えてあげるよ!全部…ね!』


 リベルター『え〜と、まずーあのヒィセスとか言う機械人形にちょいと、細工して…間違えて手紙を君に送らせて〜』


 俺『え』


 あまりに急すぎたので、その情報の整理に遅れ、思考を停止してしまった。そんな俺を気にも止めずリベルターは言葉を続ける。


 リベルター『んで、どうなってるのかなぁって思ってぇ〜ずっと行動を見張ってたんだけど…何かみんな急にバタリと倒れて〜んで、2人ぐらい立ってた人がいたんだけど〜結局倒れん子して〜まぁ俺が手を加えた訳なんですけど〜それで〜気になりんちょしたから〜とりあえず〜君たちの脳の中に入りんコルスした訳よ』


 ロウド『なんだ、そのふざけた喋り方は』


 リベルターの異様な喋り方に苛立ったロウドをさらに挑発するかのようにリベルターは言った。


 リベルター『えー?知らないのぉ〜?なっさけなぁ〜い』


 その性別すら分からない顔とよくわからない口調の

リベルターに引けを取られないように、俺は話を遮り、本題へと戻した。


 リベルター『もう焦りすぎです、吾輩も疲れちゃいます、分かっています、話します』


 リベルターは声色を元に戻して本題へと戻った。


 リベルター『え〜と、で、ここに来た訳だけど』


 俺『まず、気になる所は…ヒィさんって本当に機械人形なんですか?』


 リベルター『ん、そうそう、いわゆるロボットって奴だね…ロウドには通じないだろうけど!』


 俺『そのヒィさんを作った人って…』


 リベルター『んーと、あ!機愛(きあい)って奴だったな!あの仮面レジスタンスの一員で十二人いる…たしか、十二面星(サマンタ)の十一の機械星(マシーネ)って呼ばれてる奴だよ!肥満体型の!』


 一気に知らない単語出てきたな…仮面レジスタンス?抵抗軍かなんかか?そして…肥満体型。


 なるほど…ますますあの名前不明さんが怪しくなってきたな…って言うのもあのヒィさんが黒幕の協力者なのは間違いない。あのヒィさんの行動は明らかに盗むことを意識していなかった。何故ならばあまりにも無計画が過ぎる盗み方だからだ。あんな大勢人がいる所であんな乱暴にやる必要がない。無理矢理盗むならもっと他にと方法はあったはずだ。


 つまり、ヒィさんの目的は…青い宝玉を盗むのではなく、青い宝玉を手に持つことと言うことだ。


 そして、その事実が明らかになった今、もはや犯人は1人に絞れる。


 俺は止めていた足を再度動かし、密談室の前へと到着した。


 俺『やっぱいたな機愛さんよ』


 機愛『え?なんで、おでのこと…』


 俺『単刀直入に言うぞ!お前が黒幕だろ!』


 機愛『え?黒幕?一体何のこと言ってるんだど?』


 機愛は頭の中でハテナを思い浮かべ、顔を斜めに傾けた。その様子から本当に分からないのか?と思ってしまうが、そんなことはないはずだ。


 俺『とぼけんな!』


 俺がそう怒鳴ると、いつのまにか真横に来ていたリベルターが口を開いた。


 リベルター『ん〜記憶喪失っぽいねぇ〜彼』


 俺『え?記憶喪失?』


 リベルター『それも、大分中途半端に…なるほど…争ってた2人のうちの1人か、どうやら機愛くんはソルサくんに負けてしまったようだね』


 俺『え?ソルサさん?』


 リベルター『まぁまぁ詳しい話は本人から聞こうか』


 俺『え?いや、でも記憶喪失なんじゃ…』


 そんな戸惑う俺にリベルターはニヤリと笑い、『記憶再生、不可隠蔽』と続けて唱えた。


 機愛『あ』


 その突如、名前不明は掠れた声を発し、そっと懐から仮面を取り出し、自らの顔を覆い隠した。

そしてリベルターは俺の方を向いてこう言った。


 リベルター『さ、今なら質問し放題だよ』


 俺『え』


 唐突すぎたので頭が真っ白になったが、気持ちを切り替えて俺は機愛の方を向いた。


 俺『じゃあまず、あんたがこの仮想世界を作り出したんだな?』


 ロウド『仮想世界?』


 リベルター『えー知らないのぉ?ロウドってば、時代遅れなんだから〜』


 ロウド『黙れ』


 2人の会話と呼べない会話を遮るが如く、機愛は俺の、問いに答えた。


 機愛『……そうだど』


 機愛の答えに俺は頷き、立て続けに質問する。


 俺『ならなんでこんなことしたんだ?』


 機愛『魔力エネルギーを吸収するためだど』


 俺『魔力エネルギーの吸収?』


 機愛『そうだど…魔力を持った生き物は死の瞬間に大量に放出されることは知ってるど?』


 俺『あぁ、伝説になってた話だよな』


 ある1人の大英雄が死した瞬間、大量の光がその体から放たれ、消滅していったって話だったな。


 機愛『そうだど、しかもそれは科学的にも解明されてるんだど、より詳細なことも…だど。』


 俺『より詳細なことってなんだ?』


 機愛『魔力が大量に放出されるのは脳が機能を停止することで反射的に体に溜め込まれていた魔力とその器が外に出るんだど。その器が大量の魔力で出来ていて、死の瞬間にそれが外に出ることで器という形が溶けて、大量の魔力に戻るんだど』


 


 リベルター『うん!それも並の魔力とは比べ物にならないほどにね!なるほどね!わざわざ毎回爆発させて死んだと思わせて、魔力エネルギーを大量に摂取していた訳だ』


 機愛『それにこの仮想世界ではいくら死んでもその記憶をだけを消してしまえば本当に死ぬことはないど』


 俺『でもよ、それさ、魔力スッカスカになんじゃないのか?』


 ロウド『魔力は自然に回復するものだ…例え器を失ってもな。しかもだ、教会にある神聖な力は魔力を全回復することができるからな、器含めて。まぁ理屈は知らんが』


 なるほどだからわざわざ教会でこれを行ったのか。


 俺『でも…その…死んだ時に記憶を消す理論だと俺じゃなく、もう1人の人格の方に記憶が残るはずだろ?』


 機愛『知らないど…でも、お前のもう1人の人格が庇ったりでもしたんじゃないのかど?』


 ロウド…お前…まさか


 ロウド『黙れ、きっとその時の俺様は頭がおかしかったのだろう』


 その威圧に圧倒されながらも、俺は思考を切り替えた。


 俺『なるほどな…いつも、爆発した時、感覚がなかったのはお前が体の主導権を握ってたからなんだな…でも、あのトラウマ首輪の時はあまりにも早すぎてロウドが対応できなかったから俺にはちゃんと痛みが伝わったのか』


 機愛『恐らく…反応出来なかったと言うよりは…おめえの意志が暴走し、その…ロウドって奴も手が触れられなかったからだと思うど』


 俺『じゃあ純粋な疑問なんだが、ヒィさんを作り出したのは何故?』


 機愛『単純な話だど、単にやりやすかったってのと、保険だからだど』


 俺『…ヒィさんはまるで自分が機械だと思っていなかった感じがしたんだけど…』


 機愛『もちろん、おでがそう思うように細工したんだど、この世界で出来すぎた文明は天使に破壊されるから…』


 そういやそんな話あったっけか…確か、科学世界って呼ばれる所から来た人間の技術を手に入れたりすると、天使って奴らに滅ばされるんだったな。


 俺『なら…さらに質問、どうすりゃこの仮想世界から目を覚ませる?あ、俺だけじゃないぞみんなもだからな』


 機愛『ある1人の人間とが…キーワードを言って、

おでが戻ることを承認すると、戻れるど』


 俺『その1人の人間ってのは?』


 機愛はその問いに答えまいと、口を塞ぎ、顔を俯かせた。


 リベルター『あら、以外と意志が固いね、これは言ってくれるまで軽く…一年間はかかるなこの世界の基準でだけど』


 俺『一年!?なら…そのキーワードってのは?』


 機愛『…と、「友達が欲しい」だど』


 機愛は是が非でも言いたくないようだったが、それは秘密が露わになるのが恥ずかしいと言う気持ちだったからだ。


 俺『友達が欲しい?あ、待って心当たりあるかも』


 機愛『え』


 俺『あ、ちなみにさ、なんで偽名とか使わなかったんだ?』


 機愛『仮面様から与えられた名前を偽ることはできないど』


 俺『仮面…様?仮面って名前か?』


 機愛『そうだど』


 そう言う機愛の瞳には忠誠心と書かれていたような気がした。


 俺『じゃ、最後の質問…あんたはなんでこの世界に入ってきちまったんだ?』


 機愛『もちろん、元から入ってくるつもりはなかったど、でも、何でも屋を名乗るソルサって奴に妨害を受けて、眠りにつかせるガスを、おでも吸ってしまってこの世界に来てしまったんだど』


 俺『以外と間抜けだな』


 機愛『否定できないど』


 機愛は首を左右に振り、嫌そうにそう言った。


 俺『もう一つ。そんなに魔力を集めてどうするつもりだったんだ?』


 機愛『詳細は知らないけど。ただ頼まれただけだど。』


 あまり深くは知らない…か。まぁこいつらの目的を知った所で俺が何ができるってわけじゃないしな。


 俺『よし、なら…リベルターさん!そいつは任せた!』


 リベルター『え?いいの!?吾輩なんかに任しちゃって!?』


 俺『任せた!』


 機愛『ゴリ押しがすごいど』


 リベルターに無理矢理責任を押し付けた俺に呆れながらそう言った。


 リベルター『ま、なら!任せといてよ!たっぷり可愛がってあげるから…さ!』


 リベルターのその笑顔は悪魔と言う名に相応しいほど歪んでいた。


 そんなリベルターを置いて、俺は彼女に…スエルスに会いに行った。


 俺『スエルス!』


 スエルス『え、ぇ?ど、どうしたんですか?ガンノールさん』


 スエルスは驚いている。だが、それは声に驚いたのではない、驚いた理由は…


 俺『お前の願い!言ってみてくれ!』


 神父や信者が居る前でそう叫んだことにだ。


 ノルウェル『貴様!このお方になんたる無礼だ!承知せんぞ!』


 ジロル『え?マラさん?』


 その反応は三者三様だった。驚くものがいて、思考を停止していたものがいた…だが、共通していることがあった。そう…その光景に誰もが釘付けになった。


 ただ1人を除いて…


 リベルター『隙やり!』


 俺『え?』


 そうリベルターが青い宝玉を手に取ったのだ。


 ジロルはヒィさんを取り押さえた手を離し、すぐさまリベルターに向かっていった。


 俺『やっべ!スエルス!』


 スエルス『え?え、え?』


 俺『お前の!願いはなんだ!お前が手にしたいものはなんだ!』


 急がなければならないとは思った。こんな方法で言わせるよりもっと手っ取り早い方法もあった。だが、これはスエルスにとって…大事なことなんだ。スエルスの本音…それをみんなは知らなきゃならない。スエルスを苦しみから解放するために。


 スエルス『私…私は!』


 リベルター『爆発してしまえ〜!』


 ジロル『くっ!』


 ノルウェル『…スエルス…様…』


 スエルス『私は「友達が欲しい」!』


 スエルスがそう言った直後、スエルスは倒れ込んだ。後は…


 俺『くっそ!機愛は!』


 リベルター『ハッハ〜残念…グッバイ!』


 もう万事休すか!と、諦めかけたその時…1人の声が聞こえた。


 機愛『爆発はしないど、おでが止めた…元の世界に戻ることも承認したど』


 機愛がそう言った瞬間、視界がぼやけて来た。






 リベルター『ちぇっ〜つまんないのぉ』


 リベルターは唇を尖らせ、不満げな表情でそう言った。


次回 真の姿



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