第六話 死のサーカス
仮面を装った者たちは囲むように置かれたそれぞれの椅子に座って何かを考え込んでいる。
『なぁよぉ!奴ら!ぜんっ!ぜんっ!来ねぇじゃねぇか!』
両手を両脚に乗せて座る怒った表情の仮面を装った厳つい男が声を荒げる。
『本当に…その通りだよ。奴らは憎海たちのことをなめてるんだよ!特にあのピエロ野郎とか!』
両足を机の上に置いて座る憎しみの表情の仮面を
装った水着姿の女の子が怒号を上げた。
『おい、そのことについてはもう話し合っただろ』
背筋を伸ばし、剣を地に突き刺しながら座る冷静な表情の仮面を装った騎士のような男がそう言った。
『それはそうだけど…あのピエロは暇してる
でしょ!?会議ぐらい来てよ!』
『ハァ…だから、今任務中なんだって……なんでわかんないかな…』
3人の会話に、右手で下顎を支えて座る悲しみの表情の仮面を装った男が割って入った。
『なんなのさ、急に会話に割り込んで来て』
そんな憎海たちの戯れをただ1人の足音で止めた。
その足音を立てたのは、紛れもない彼らのボス
"仮面"であった。
仮面『これより、会議を始める』
仮面は威厳のある雰囲気を醸し出し、何事もなかったかのように会議が始まった。
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俺『う、うぐ…』
ロウド『ふん、情けないな!』
初めての死体…ではないが、流石に耐えられない。
まぁ嘔吐とかはしなかったが…
ロウド『ん?待ておい、また俺様のことを無視するな!』
ロウドの慌てる姿は実に滑稽であった。
ノルマレス『ふーむ』
ノルマレスは何の躊躇もなく手で体を隅々まで調べまくっている。
俺『す、すごいな…特に何も思わないのか…』
他の学園面子も嘔吐まで行かなくとも、見続けようとはしていないので、ノルマレスがどのくらい耐性があるのか不思議に思ったが…口には出さなかった。
邪魔しちゃ悪いしね。
とはいえ何もしないのは暇なので、俺も死体を嫌々見てみることにした。
そうすると、何かが光ったのが見えた。
俺『ん?』
俺がその光のもとでを探ろうとすると、ノルマレスは言った。
ノルマレス『よし、じゃあみんな!』
俺『え?』
ノルマレス『今から犯人を探すんだけど…手伝いたい人!!手を挙げて!』
そう言うと俺以外のみんなが手を挙げた。
みんなが手を挙げたので、自分も挙げることにした。
ノルマレス『よし、じゃあみんなには調査を手伝ってもらうよ…』
ノルマレスは懐中から何か瓶のような物を取り出し…。
ノルマレス『物体複製』
『よし、じゃ!これを…』
ノルマレスはそう言って陽気にその瓶を空高く放り投げた。
その瓶は天井の高さに到達して、突如パキン!と
鋭い金属が壊れた音が聞こえたと共にその瓶の中から桃色の煙が放出された。
ジロル『え?あれは何なの?』
ノルマレス『その内分かるよ』
そうすると、あら不思議…たちまち自分の心が安らいだような感じがした。
それはどうやら俺だけでなく、周りの人…学園の面子やさっきまでパニクっていた奴らも。
ノルマレス『よし、じゃあ…みんな!早速調査だ!』
そうして俺たちはそれぞれ分担して、効率よく話を聞いていくことになった。
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そして……聴取を始めてから1時間後
俺たちは一通り周りの人の話を聞いてきて、ノルマレスが情報を整理した。
ノルマレス『ふむふむ…』
ノルマレスはそう言って長杖【蒼天の杖】を出現
させ、武器魔法の『スカイストレングス』、それに続けて、固有魔法の『叡智之導』を連続で唱えた。
ノルマレス『よし、これなら』
(まじで思うんだけどさぁ、どういう理屈で出現させてるんだろ)
そんな俺の思考など読めるはずはないが、まるで
無視したような感じでノルマレスは話を続けた。
ノルマレス『ふむふむ…なるほど…うん!犯人はピエロの誰かさんだ!』
メルモール『ふむ…何故でしょうか?』
その楽観的な態度で言ったノルマレスにメルモールは理由の提示を求めた。
ノルマレス『簡単な話さ…』
ノルマレスはキメ顔のまま言葉を続けた。
ノルマレス『まず、叡智之導による結果を話さないとね』
俺『え?いやいやちょっと待ってまずえいちの導きってやつはどういう魔法なんだ?』
ノルマレス『ま、それも込みで説明するよ』
ノルマレスは人差し指を左右に振ってこう言う。
ノルマレス『まず、叡智之導ってのは簡単に言うなら、相手の情報…固有魔法のようなものを把握する魔法さ、まぁその他にもいろんな効果を発動させることもできるんだけど…』
言葉の後半は小声で何を言っているか分からなかった。
(ステータスみたいなもんだな、よくゲームにある奴だ……情報が開示されるってやつだ…)
ライラ『その魔法を使って、魔法の種類を測るあの水晶を作ってたんですか』
ノルマレス『うん、自分の固有魔法を術式にするのはかなり大変だったけどね』
俺はふと疑問に思ったのでノルマレスに言った。
俺『え、ちょっと待ってじゃあ、今までどうやって
自分の魔法とか知ってたんだ?』
ノルマレス『教会の連中だよ』
サミナ『そうですわね…わたくしのご両親は
わざわざ教会に多額のお金をお払いになって、ご自分の固有魔法を把握していたと、聞きましたわ』
ノルマレス『そ!でもそれを僕がぶち壊したんだ!』
レリエル『だからこそ、教会の連中には嫌われてるんですの?』
ノルマレス『そそ!』
ノルマレス『じゃ、今から本題に入るよ!』
ライラ『お願いしますッ』
ノルマレス『本題に入る前に…今回死んだ人の死因は何だと思う?』
俺『まぁ首に糸が巻き付いてるから…窒息死?』
ノルマレス『ブッブー!違います!』
ノルマレスは腕を交差し、意気盛んな姿で俺の考えを否定した。
(なんかウザ)
ザガマル『魔法によるものではないですか?』
ノルマレス『違います!』
サミナ『何かの魔法を使ったのでは?』
ナオマ『何を言ってるんですかバカお嬢、そんな単純な…てかさっきあの忍者が言ってたのに…』
ノルマレス『正解!』
ナオマ『え?』
ザガマル『え??』
2人はただ困惑し続けた。
サミナ『フフフ!フゥフ!!』
サミナは邪悪な笑顔でナオマを見下した。
ナオマ『!?』
ナオマはまるで毒を盛られたかのような表情で悔しがった。
一方ザガマルは相変わらず、何が起きたかを理解できずに言葉を詰まらせていた。
そんな2人の会話に微笑みながらもノルマレスは、説明を続けた。
ノルマレス『正解はおそらく、魔法によって殺されたのだと思われるね!』
俺『いや、ザガマルのも普通に正解じゃないか!なんでブッブーって言ったんだよ!』
ノルマレス『まぁ、ただ単純に意地悪でやったと思ってもらって結構だよ!』
(やっぱなんかウゼェ!)
ポンポ『なんで、そんなことがわかるのら?』
ポンポは颯爽と答えるノルマレスに質問した。
ノルマレス『それは僕の魔法の1つ…魔力ノ眼によって分かることなんだけど…死体の致命傷である腹に、魔力の粒子が存在してるんだよね…でね!魔力の粒子ってのは魔法を使ったときに現れるものでね』
ジロル『魔力の粒子?それって一体なんですか?
魔力が魂という所に存在してるってのは聞いたことあるんですが……』
ジロルは深く興味を持ったのか…思わずノルマレスに疑問を口にした。
ノルマレス『魔力の粒子ってのは魔力を作り出してるものでね!魔法を使ったら出現するものなんだ。そしてこの魔力の粒子なんだけど1時間で消えるものなんだよね』
ジノル『つまり?』
ノルマレス『つまり…これはね…1時間前に魔法を使われて死んだってこと!』
(なるほど…ノルマレスさんは頭がいいんだな)と、俺は理解するのをやめたのだった。
ノルマレス『しかも外には誰も出てないでしょ?
さらに死んだのはサーカス団員のピエロ…そもそも
普通の観客に動機なんてないでしょ!…』
(ん?本当に頭いいのか?よく分からない奴だな、ノルマレスさん)
ナオマ『では、一体ピエロの内の誰が犯人なんでしょう』
ノルマレス『それが誰なのかわからないんだよね…』
俺『あ、ちなみになんだけど、これ…』
俺はそう言ってさっきの謎に光ってた謎の粒を取り出し、ノルマレスに手渡した。
ノルマレス『ん?これは…別の魔力の粒子?』
ノルマレス『まさか…みんな!ついて来て!』
ノルマレスは俺たちの思考を置いてけぼりにして、
ただついて来て!と言った。
サミナ『一体どういたしましたか?ノルマレス様?』
ノルマレス『あ、いた!』
ノルマレスが指差した先にはピエロの仮面を装った男がいた。
『ん?どうされたんですか?』
ノルマレス『貴方、これに見覚えない?』
『はて?何の球ですか?』
そのピエロはごく自然に反応した。
ジノル『まさか…この人が犯人?』
ノルマレス『うん、全く同じ魔力の反応だった』
俺『ん?被ることはないんですか?それ』
ノルマレス『それね…不思議なことに僕が見た限り全員違った色だったよ』
その発言にピエロは…
『……アハ!アハハハ!全く…あいつヘマしちゃってさぁ!もういいや!隠す必要ないしね!ジィズ!イィズ!ハッピーターイム!』
ピエロは手に赤い球を持ち、放り投げた。
俺『ぐぁ!』
その瞬間灰色の煙が俺たちの視界を包んだ。
『さぁさぁ!始まるよぉ!この私!楽夢が!みんなにとってファン!!な、日にしてあげるよ!』
悦楽星楽夢はそう言ってショーを開催する。
その一方…
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『お、始めるか…さーてと援護なんかしたかないが、まぁあのお方のご命令だしな。仕方ない…』
喜んでいる表情の仮面を装った女は木の上から飛び降りてそう言った。
『ん?』
何かの気配を感じた彼女はふと後ろを振り返った。
そこには金髪の女とエルフの男がいた。
『あんたが、変なことしようとしてる人?』
『誰だよ、おまえら』
しかめた顔で無双星荒喜が言った。
『ん?私かい?私はレリス!レリスだよ!』
次回 戦う2つの仮面




