私の祖国では婚約破棄が流行っている
新作を投稿します。
「私はラミナ嬢との婚約破棄を宣言する」
皇家主宰の夜会で馬鹿が婚約破棄騒動を起こした。
私の祖国では婚約破棄が流行っている。
今月に入ってから、これで三人目だ。
本当に懲りない連中ね。
いい加減にして欲しいと、心の底から思った。
事の始まりは私の婚約破棄だった。
【回想開始】
「私はシャルル嬢との婚約を破棄する」
私は誕生日パーティーで婚約者のカルマンから唐突に婚約破棄を突き付けられた。
「理由は真実の愛に目覚めたからだ」
理由は真実の愛とかいう、馬鹿馬鹿しい内容だった。
「そしてミモザ嬢と新たに婚約を結ぶ」
更にミモザ嬢と新たに婚約を結ぶという、戯言を言い出した。
私はカルマンを完全に見限る決心をした。
「分かりました。婚約破棄をお受けします。但し貴方の有責でね」
婚約破棄の受諾とカルマンの有責とする事を突き付けた。
「ふざけるな」
カルマンが文句を言い出した。
「カルマンの有責なのは当然だね」
「きちんと責任を取りなさい」
しかし周囲の子息や令嬢は私に賛同してくれた。
「‥‥‥」
ようやく周囲の状況に気付いたらしく、カルマンの顔色が真っ青になった。
カルマンは貴族籍の剥奪と実家から絶縁を言い渡されて、平民となった。
【回想終了】
「また馬鹿が現れたわよ」
「同じ貴族として恥ずかしい」
周囲の令嬢や子息が馬鹿を小声で非難している。
しかし馬鹿は周囲の状況に気付いていない。
「何の騒ぎだ。静まれ」
皇太子が会場入りして、騒ぎを納めた。
元凶の馬鹿は地下牢に投獄された。
「はぁ~」
私は思わず溜め息を付いた。
どうして馬鹿が多いのだろう。
祖国の行く末が心配になってきた。
「シャルル嬢、提案があるの」
唐突に聖女ルイラ様が私の屋敷を訪れて、提案があると告げられた。
「私とコンビを組んで、理不尽な婚約破棄をする愚か者を断罪しましょう」
それはとんでもない内容の提案だった。
詳しく話を聞くと、私は提案に乗る気になった。
私は記憶を再生させて、映像化するスキルを有している。
ルイラ様はエメル聖国の大聖女様の御息女で、たとえ皇族でも断罪出来る権限がある。
そのスキルと権限を使用して、冤罪を擦り付ける愚か者を断罪する事だった。
「私はネルカ嬢との婚約を破棄して、フミカ嬢と婚約する。その理由はネルカ嬢がフミカ嬢を虐げたからだ」
四人目の馬鹿が現れて、婚約破棄と理由を告げた。
「お言葉ですが、フミカ嬢を虐げた覚えはありません」
断罪された令嬢が虐げた覚えは無いと否定した。
「嘘を付かないで下さい」
「フミカ嬢の言う通りだ。複数の証言があるんだ」
「その通りです。私はネルカ嬢がフミカ嬢を虐げている現場を目撃しました」
「私も目撃しました」
二人の子息が目撃したと証言した。
「お待ちなさい」
「私達がこの婚約破棄騒動を審議します」
シャルルとルイラが乱入して、審議をすると告げた。
「「「「「シャルル嬢、聖女ルイラ様?」」」」」
二人の突然の乱入に五人は驚愕した。
【記憶再生】
私は記憶再生を発動させて、映像化した。
「お前達はネルカ嬢がフミカ嬢を虐げている現場を目撃したと証言しろ」
「分かりました」
「お任せ下さい」
「これで私が貴方の婚約者になれるのですね」
四人の密談の映像が映し出された。
「「「「‥‥‥」」」」
四人の顔色が真っ青になり、身体が硬直した。
「貴方達の罪は明白です。私は聖女として断罪します」
ルイラは四人に断罪を告げた。
婚約破棄をした馬鹿と取り巻き達は貴族籍を剥奪されて、鉱山での強制労働の処罰を受けた。
令嬢は戒律の厳しい修道院送りとなった。
こうして冤罪による婚約破棄騒動は終息した。