09 二日目の始まり
朝…目を覚ました俺は日課のストレッチや筋トレなどの運動を済ませるとシャワーを浴びて朝食を済ませた。
「ごちそうさま」
そして、部屋に戻るとVRマシンを使用し、ヴァルサーにアクセスした。
「二人は…っと」
フレンドリストのログイン状態を確認すると、ステップは資料室におり、トエルはまだログインしていない様子であった。
「ステップは予想通り…トエルは弾幕かな?」
そう呟いて俺は資料室に向かった。
「ステップ、おはよう」
「ん…リョウか、おはよう」
ステップは一瞬だけ顔をこちらに向けて朝の挨拶をして、また本に戻る。
「ステップ、トエルは?」
「ああ、いつものだよ…いつもの弾幕シューティングをしてから来るそうだ…全機ピチュるかクリアーしたら…遅くとも8時半頃にはログインすると言っていた」
「今、7時半過ぎだから1時間か…」
「ああ、私は資料室に籠っているつもりだが、どうする?リョウもいつもの甲冑格闘でもしてくるか?」
「いや…少し街を探索してみるよ…投擲用の石入れとかあれば投擲武器とか探したいし」
「わかった、ではまた後で」
俺の言葉にそう答えたステップはまた本の虫に戻って行った。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませ、英霊様」
俺は下界に降りる前に一応、武器庫を訪ねてみた。
「投擲スキルで使えるような武器ってある?」
「はい、ありますよ」
そう言って担当の天使が提示してきたのは2種類の投石器…ポケットから紐が伸びていて片方を指に引っ掛けてもう片方を握ってグルグル回して投げるのと、長い棒にそれが括られたスリング・スタッフ…とそれ用のクルミ大の刻みが入った石弾、そして短剣だった。
「あースリングか」
「はい、使用方法の説明は必要ですか?」
「いや…わかる。使ったこともある…振り回してから放すのと振りかぶるのだな」
振り回す方は使った事はある、別ゲーで、だけど。
「こっちの短剣は普通の短剣に見えるけど投擲用なのか?」
「いいえ、通常の短剣ですが短めですので投擲術にも使用できます。投擲専用のスローイング・ダガーの取り扱いは申し訳ありませんが、ございません」
「わかった…ダガーとスリング、それと石もいくつか貰おう…それとスリングと石を入れて腰につけておけるような小物入れってあるか?」
「すいません、そういった雑貨も取り扱いがありません…下界をお探しください」
「了解、そうする」
俺は代金を支払うと短剣を装備し、スリングと石弾をインベントリにしまって武器庫を後にした。
一度スキル修練所に戻った俺は訓練所でスリングの勘を取り戻すべく、10回ほど投擲を行った。
「うーん…アシストがあんまり効いてない感じだな…的には当たるけど精度がイマイチだな」
それから暫く短剣の投擲とスリングの練習を投擲術のスキルレベルが2になるまで行い、そろそろ下界に降りる事にした。
下界に降りた俺は、夜明け間際の街を歩き回り…店は普通に開いていた…NPCに道を尋ねて無事に雑貨屋にたどり着いた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか」
店内に入るとそう声をかけられる。
「このスリングといくつか小石を入れて携帯できる小物入れ…革袋か何かを探しているんだけれども、ありますか?」
「はい、ございますよ」
そう言って店員のNPCが持ってきたのはベルトに吊り下げられるように紐の付いた小さな革袋だった。
「うん、こういうの…お幾らですか?」
それに対して店員が告げた価格は所持金で十分購入可能な金額だったのでその革袋を購入することにした。
「ありがとうございましたー」
店員のそんな声に見送られて俺は店を後にした。
町中をぶらぶら探索してみて、薬屋や鍛冶屋などを発見することができた…というよりは、雑貨屋の近くに薬屋(前情報通り、アンデット種族用のポーションは売っていなかった)と何件もの鍛冶屋とそれに併設の武器屋、防具屋などの店が並んでおり、他の場所は概ね住居という感じだった…特にイベントは発見できず、である。一応冷やかしてみた武器屋でスローイング・ダガーを見つけたのだが鉄製でなかなかいいお値段がしたので、今日は既にいくつか買い物をしていた事もあり、購入は見送った。
そうこうしていると夜も明け、さらに少しするとトエルから安全地帯のみで使用可能だというフレンドメッセージが届く…ログインしたから神殿前で合流しようという事らしい。時刻は8時半少し前…予定通りだな。
「行くか」
俺はそう呟くと俺には食べられない屋台の呼び込みを聞きながら神殿に向かって歩き始めた。