07 初日の終わり
風呂と夕食を済ませてログインすると既にステップとトエルはログインしており…資料室にいる様だった。
「お待たせ、ステップ、トエル」
「あ、リョウ待ってたよ…ほら、お姉、リョウきたよ」
魔法関係の本を読んでいたらしい二人に声をかけるとトエルが反応する。
「あ…うん、少し待ってくれ…あと少しでキリがつく」
ステップはそう言ってページをめくり…続けること5分…
「待たせた」
「「うん、待った」」
まあ、ステップからすればこれくらい待たされるのは何時もの事であるのでまあ良いだろう。
「今晩は野犬狩りで魂集め…と言う事で良いかな?」
本を棚に戻しながらステップが言う。
「私はそれが助かるなー折角サモナーにしたんだし、ペットは欲しいよ」
「俺もそれでいいぞ」
そう言う事になった俺達は下界におりて冒険者ギルドに寄って野犬退治のクエストを受けてから街の外に出た。
「ちょうど日暮れだな…奥の方に行って野犬を狩ろうか」
「「了解!」」
「ねー魂出た?」
「…出てないな」
「俺も…ごく稀ってどれだけ稀なんだよ…」
慣れも相まって15群、75匹ほどの野犬を退治したのだが一向に野犬の魂はドロップしない。
小休止に俺とステップは野犬からドロップした魔石Iを、トエルは妖精用のパンを齧りながらそんな愚痴を言い合う。
「もう夜半だ…夜明けまでにもう10群…できれば15群ほどは処理できればいいんだが…お…次の群れだ…来るぞ」
俺達は次の野犬の群れの処理にかかった。
「朝…だな」
まだ日は昇っていないが、明らかに薄明を迎えた草原で俺たちは単独出現した野犬を始末して言った。
「朝…だね」
「100匹以上…たぶん150匹くらいは狩った筈だが…野犬の魂のドロップはあるかな?」
「いいや?」
「私もない―」
「…全滅…一晩狩り続けて100匹以上狩ったのにドロップしないってホント稀なんだな…魂」
ため息交じりに俺はそういう。
「後、数夜狩り続けていたら魂以前にその資金でそれぞれペットが買えそうだな」
「お姉…それ、フラグ」
確かに、下手したら魂がドロップするより先にお金がたまってしまうかもしれない。
「…とにかく、そろそろ街に戻ってログアウトしようぜ、休みだからってあんまり夜更かしも良くないし…な?」
そう、システムの時計を見て俺は言った。
「あーもう10時過ぎだね」
「そうだな、野犬目当てなら狩りの効率も落ちるし今日はこれくらいにしておこう」
と言う事で俺達は街に戻って冒険者ギルドで換金アイテムの売却を済ませるとログアウトする事にした。
「おやすみ、ステップ、トエル」
「おやすみ、リョウ」
「リョウ、おやすみなさーい」
そう挨拶を交わし、ヴァルサーからはログアウトした…のだが。
「よう…」
「どうした、涼」
「どうしたの?涼」
俺はヴァルハラ・サーガ・オンラインからログアウトするとすぐに小鳥遊家のVR空間の2人の部屋を訪ねていた。
「いやな…?その…愛してる、舞、真琴…それが言いたかった」
少し照れながら俺は言った。すると二人は顔を見合わせた後に笑ってこう答えた。
「愛しているぞ、涼」
「愛してるよ、涼」
「ああ、それじゃあ…今度こそおやすみ」
それだけ言うと俺は今度こそ現実に戻ろうと扉に手をかける。
「待った…まだだよ、涼」
「そうだな…お休みのキスはなしか?」
そんなことを言いながら舞と真琴は俺の手を取る。
「…して…いいのか?」
「フフ…何を言っているんだ、君は…私達は最後までしたし…キスも沢山しただろう?」
「ディープなのも何度もねー」
「あ、あの夜は夢中で…それに二日目は添い寝だけだったし…」
あの夜が特異的だっただけで、旅行二日目、三日目も距離感はさらに縮まったとはいえキスなどはしていなかった。
「そうだな…うむ…ならば、これで良いかな?…キスして…?涼」
「私もほしいな…涼?」
そう俺は二人に迫られて…順番にキスをした…唇が触れるだけのキスを…VR空間で、だけど。