04 対人チュートリアルと初狩り
「んっ、ほっ、こういう…感じか」
「お嬢ちゃん、なかなか筋がいいじゃない、魔法使いの杖術はとにかく相手の攻撃をいなし続ける事にあるんだ…そうしている間に魔法を詠唱して敵を倒すのさ…まあ雑魚相手なら杖だけで戦ってもいいけどそー言うのは中級以降さね」
「はいっ」
と、お姉さんと支給された杖で打ち合う骨に皮鎧姿のステップ
「妖精の杖術はねー飛来物の打ち払い位にしか使えないよーそれでもやるー?」
「うん、ボム…じゃないけれども取れる手が一つ増えるだけで回避力が段違いだしネッ」
「わかったーじゃあやってみよー」
と、真っ当な妖精と楽しそうに訓練場を飛び回るトエル…ストーンバレットと言うらしき魔法を杖で打ち落とす練習をしながら。
「オイオイ、嬢ちゃん、初めてじゃねーだろ」
「一応、甲冑格闘の経験はそれなりに…」
「じゃ―初級じゃ足らねぇよ…中級か上級を受けろって」
「いやぁ…この体に慣れていませんし…何よりお金が足りなくて」
初級の指導役として召喚されたNPCのおっさんとそんな会話をしながら木剣と木製のカイトシールドで打ち合う俺…リョウ。
俺達はそんな感じで格闘訓練を受けていた…主にステップの希望で、初期支給マネーの過半を費やして…慎重派のステップらしいと言うのはステップらしいのだが、俺の分はちょっともったいなかった気がするのである。
「さて…次は資料室…と行きたいが折角の三人そろったゲーム日だ、下界とやらに降りてみようか」
そう、ステップはどこか後ろ髪引かれながら言う。
「応、そうだな」
「飛礫を打ち落とす訓練も楽しかったけど、やっぱり冒険だよねっ」
ということで俺達は下界への転移ポイントである神殿へやってきた…そこは先ほどの案内時とは比べ物にならないほどの人であふれていた。
「…やはり案内時はインスタントエリアだったか」
「この混雑具合からするとそーだな」
「ん、まあそう言うのはいいとして、いこっか。下界に」
「ああ、そうだな」
と、俺たち三人はPTを組むと下界への転移ポイントをくぐった。
景色は流転し、俺とステップのアバターが人からアンデットのモノに切り替わる…
「ここが下界の神殿…か」
人の流れに流されるように歩を進めながらステップが言う。
「そうだな…なんかヴァルハラより豪華な気が…」
「そういうモノだ…宗教的権威という奴だ」
「あー権威を示す必要がない天上の神殿こそ、質素って訳か」
「うーリョウとお姉がよくわかんない話している」
そんな会話をしていると俺達は神殿の外に出ていた。
「さて…アインラーデンの言っていた冒険者ギルド…とやらに顔を出すか」
俺達はアインラーデンのおすすめルートらしいギルド、とやらに向かうことにした。
「スイマセン、そこの方、冒険者ギルドに行きたいのですがどう行けば…」
…通行人NPCに道を聞きながら。
「いらっしゃいませ、英霊様」
ようやくたどり着いた冒険者ギルドの待ち列に並んで…気持ち悪いほどサクサク進むのでたぶんカウンターはインスタントエリアである…カウンターにたどり着いた俺達はその言葉と笑顔で迎えられた。
「ほう…骨の私に物怖じもしないか」
「?聖骸様を恐れる必要などないでしょう…?」
「ああ…まあそうだろうな、すまない、忘れてくれ…で、私達はとあるワルキューレ殿からここに来るように勧められたのだがどういう訳かわかるかな?」
大体お約束で状況は理解しているが知らないふりで振舞うのがステップの流儀である。
「ええ、恐らくはただ闇雲に魔物たちと戦うのではなく弊ギルドでクエストを受けて資金を稼ぎながら活動してみてはどうか、という勧めかと思います」
「ほう…それは助かるな…武具の調達や戦技の習得に何かと入用なのでな…だが我々は初めてなのだが、何か良いクエストは無いかな」
「でしたら、街の周りの草原でラビット狩りなどを試されてはいかがでしょうか、英霊様には簡単すぎるかと思いますが体を慣らすにはよいクエストかと」
「わかった、ありがとう…それを受けてみよう…と言う事で良いかな?2人とも」
「うん、いいよー」
「かまわねぇけど…草原に他に何か出るならついでに狩ってこようか?」
「ええ、でしたら街から少し遠めの場所で野犬が出ますのでその退治もお願いできますでしょうか。どちらもドロップ品買い取りの形で、ですが報酬が出ますので」
「…わかった、試してみよう」
そういう訳で俺達は街を出て兎を探す…が
「…弱すぎるだろう、コレは」
ラビットとは、草原の草陰から突然飛び掛かってくる角有り兎だった…のだがステップの棒術で弾くと首を折って死ぬ。俺がシールドで弾くとやはり首を追って死ぬ…トエルは…そもそも飛んでいるので当たらない…結論から言うと、真面目に準備運動をしてアバターを慣らしてきた俺達の相手にしては弱すぎた…多分報酬もしょぼいんだろうな…そうでなければほぼ素通りしていく他のPCたちが不自然である。
「…野犬、いこうか」
「…ああ」
「はーい」
そうして野犬狩りに移行した…まあ、ウサギも出るのだが、野犬の出るエリアにも。
「慣れれば雑魚だなっ…【ファイヤーボール】」
噛み付き攻撃を杖で受けて振り回しながらファイヤーボールで犬を丸焼きにしながらステップが言う。
「そうだな…こいつら群れてねぇし…所詮は序盤の雑魚って事かな」
まあ群れた所で数匹程度なら多分脅威ではないが。なお、俺の場合は盾で受け止め、木剣でぶん殴って止め、トエルは華麗に回避して後頭部にダークスピアである。
「さて、日も傾いてきたし、一度街に戻るか?それとも…狩り続けるか?」
「俺は大丈夫だが…トエルがダメなんじゃ?」
ダークフェアリーを気取っても、妖精に暗視はついていない筈である。
「大丈夫だよー闇魔法の初期取得魔法、ダークスピアとダークエンチャントとノクトビジョンだったから」
「了解した、では狩り続行と行こうか」
そうして野犬を狩っていると…夜が暮れた