15 東の森で4
一度、それぞれのホームに寄って余剰な所持金を預けた俺達はアインを連れて下界に降りた。
「さて…本来であればアインの訓練を兼ねて野犬狩りと言いたいところだが、夜も明けた所だし、森まで行くか…一応、道中の戦闘はアインに任せてみよう」
「はーい、って事でよろしくね、アイン」
「ワンッ」
アインは元気よく返事をした。
冒険者ギルドでオオカミの退治クエストを受けた俺達は再び東の森に向かって歩いていた。
「む…ウサギの気配…いた、あそこだ」
ステップは偵察術に引っかかったウサギを指し示す。
「アイン、GO、兎狩りだよ」
「ワオンッ」
アインは元気よく返事をするとトエルの指示に従ってウサギに向かって駆けて行った。
少しするとアインはぐったりとした兎を咥えて戻ってくる…
「アレ?まだ生きてる?死んでるよね?」
「確かに…おかしいな」
本来であれば光の粒になっている筈だが…と思っているとアインが獲物をトエルに渡すようにぽとりと落とす…そして直後、ウサギは光の粒となって消えていった。
「ああ、なるほど…そう言う仕様か」
どうやら、ペットの狩った獲物は召喚主に渡されて初めて光となって消えていくらしい。
「がんばれーアイン」
トエルが野犬と向かい合うアインへ暢気に声援を送る。
「…これさ、先に噛みつけた方が勝ちな気がするんだけれども、大丈夫なのか?」
「…まあ、様子を見ようか」
「ウーワンワン!」
様子を見ていると吠え合いというか威嚇合戦に勝ったアインが怯んだ野犬の喉に噛みついて勝負がついた。そして、ずるずるとトエルの元まで引きずって来られた野犬は光の粒となった。
「とりゃっ」
「ワンワン」
「【アースブリット】」
「【ダークアロー】」
アインを参加させての狩りはいろいろ検討した結果、俺と同列にアインを配置して、威嚇させる事になった。
そして威嚇によってシカやイノシシの突進は明らかに鈍っており、とても避けやすかったし、アインも器用に突進を避けていた。
「シカとイノシシは狩りに参加させても大丈夫そうだな」
「そうだな、吠えてくれるだけで大分楽になる」
「ふふーん、どうだ、私のアインの実力は」
「ワフッ」
トエルを頭にのせてアインは自慢げに鳴いた。
「問題は狼狩りだな…一匹引き受けてくれるだけで大分楽なんだがな」
「ああ、スリングと魔法で接敵前に1匹削って、残り5匹を私、リョウ、アインで分担すればかなり安定する…と言っている所できたぞ…オオカミ…8匹!?」
「あーペット込みでこっちの倍数出てくる的なやつだったりする?」
「そうかもしれん…とにかく戦闘態勢に入る」
ステップの掛け声に合わせて俺達は陣形をとる。午前中の様に、まずは三人とアインが横並びになり、俺がスリングで先頭の一匹を狙う…石弾は見事にオオカミの鼻先に命中し、光の粒になる。
「【ファイヤーボール】」
「【ダークアロー】」
そして二匹目のオオカミをステップとトエルとが魔法で始末する。
「う―ワンワン」
それにアインが吠え掛かり、若干狼たちの動きが鈍る…これならば遠目で一撃目をすればスリングで二撃いけそうだ…が、6匹のオオカミが俺達を取り囲む…数は、俺3、ステップ2、アイン1だった。
「トエル、次弾はアインの支援に、アインは無理攻めせずに牽制にとどめるんだ。リョウも無理攻めせずに3匹を確実に引き付けておいてくれ」
「「了解っ」」
「わふっ」
そういう訳で俺はオオカミたちを牽制し、引き付ける。そしてアインの威嚇のおかげですでにクールタイムを終えていたらしいステップとトエルが魔法を唱え始める。
「【ファイヤーボール】」
「【ダークアロー】」
2人の魔法がそれぞれステップとアインに対峙しているオオカミに直撃する。
「ワン!」
アインはそれで出来た隙を逃さずにオオカミの喉笛に噛みついてオオカミを倒した。
「ウーワンワン」
そしてオオカミたちに威嚇する。
「「よしっ」」
オオカミたち一瞬怯んだ隙を突いて俺とステップはそれぞれ一匹ずつオオカミを削った。
そして、俺は残り二匹も続いて始末し、少し遅れてステップも最後の一匹を始末した。
「8匹を相手にした割には安定して狩れたな」
「うむ…スリングと魔法で二匹削れたのも良かったが、アインの威嚇が役に立ったな」
「わふっ」
ステップの言葉にアインが誇らしげに鳴いた。
「ああ、アインの威嚇のおかげで接敵に時間がかかっていたからな、魔法の次弾までの時間も稼げるし…あたるかはともかく、遠目で一発撃てばスリングで二発撃てそうだった」
「なるほど…ならば次はソレを試してみようか」
そして、私達は森で狩りを続けることにした。