4 本気の春斗君② 容姿編
4話目投稿です。
本気春斗君編はこれにて終了となります。
ピンポーン…
10時50分、約束の10分前に春斗の家に到着した俺はインターフォンを鳴らした。
春斗の本気を見れるというちょっとしたイベントに俺は楽しみで昨日あまり眠れなかった。まるで遠足か修学旅行前日みたいだな、などと思い苦笑した。
「それにしても、、誰も家から出てこないな....」
今日は夏休み初日だが土曜の休日だから誰か出てきてもいいと思うんだが?? 俺はもう一度インターフォンを押そうと指を伸ばしたらガチャリと玄関のドアが開き浩二おじさんが顔を出した。
「あ、浩二おじさんおはようございます。春斗は部屋ですか?」
「舞人君....まあ、入りなさい。春斗は部屋に居るはずだから後は頼むよ。」
浩二おじさんはそれだけ言うと心底疲れた足取りでリビングに入っていった。 俺は「お邪魔しますー」と靴を脱ぎ春斗の部屋に行こうと階段を上ろうとしたが、ふと見たリビングの惨状に足が止まった。
そこには顔を茹でタコのように赤くした香織おばさんと冬華ちゃんがソファーで仲良く横になっていたのである。
「ダメよ香織!春斗は息子なのよ!!でも、ちょっとくらいなら...いや、ダメよ香織!!!私は母...私は母...」
「お兄が....お兄が....お兄が....えへへへへへへへ...うふふふふふ.」
香織おばさんは両手で顔を覆いながらちょっと危ない台詞をブツブツ呟いていて、冬華ちゃんは右腕で目を隠し壊れた人形のように笑っている。
「浩二おじさん!二人どうしちゃったんですか!?」
俺は二人を団扇で仰いでいる浩二おじさんに聞いた。 一瞬何かの病気でもかかったんじゃないかと思ったが、二人が春斗のことを言っていたのはすぐわかったので病気じゃないことは分かった。
「朝ご飯を食べに春斗が下りてきたんだがそれが本気だったんだよ。全くの不意打ちでね...夏希ちゃんの時は前もって向こうの両親から連絡が来るからある程度耐えられるんだが今回は予想できなかった。まさか舞人君にお願いされるとはね...」
最後の方は殆ど何を言っているのか聞こえず、俺は自然とゴクリと唾を飲み込んでいた。
「とにかくここは私が何とかするから舞人君は春斗の部屋に行ってくれ。」
俺はわかりましたと浩二おじさんに告げると春斗の部屋に向かった。春斗の部屋は2階の一番奥の部屋だ。春斗の家は2階が3部屋あり階段に一番近い部屋が妹の冬華ちゃんの部屋、その次にある部屋は物置になっている。 因みに浩二おじさん達は1階の和室が寝室らしい。
俺は春斗の部屋の前に立ち扉を2回ノックした。
「入っていいよ」といつも通りの口調で春斗が言ったので俺は深呼吸して扉を開けた。
そこには前髪をワックスか何かで上にあげきっちり目元をみせ、眼鏡を外した春斗がベットの上でのんびり寛いでいた。 本当なら切れ長の目とか長い睫毛とか色々あるんだろうが、すまん、適切な表現を表せる言葉をあいにく俺は持ち合わせていない。
一言でいうなら完璧....一般に言われているイケメンとは次元が違う。
あ、こりゃ勝てねーわ...俺は純粋にそう思った。
俺も割とイケメンと呼ばれてる方だ。 自慢じゃないが何人かに告白もされた事もある、まあ、俺は真紀が好きだから「好きな人がいる」と全部断ってはいたが...
だから正直、春斗も俺より少しかっこいいくらいじゃないの?と思っていたのだ。
そんなのはただの奢りだった。少なくても俺は、春斗の本気を見た後に自分をイケメンとはもう言えない。
「舞人?ボーっと立ったままだけどどうした??早く入ってきなよ。」
呆然と立っていた俺に疑問を持ったのか春斗は笑顔で手招きをしている。 うん、笑顔も反則級だな...香織おばさんや冬華ちゃんが撃沈するわけだ、その笑顔を見せられてときめかない女の人などいないだろう。
「あ、ああ...そうだな。でもその前にいいかな?」
「んっ?何??」
「お願いですから眼鏡を掛けてください。」
俺はなぜか敬語で土下座しながらそうお願いするのであった....
「これならまともに話せるな。。」
俺はうんうんと納得したように何度も頷いた。 眼鏡を掛け、洗面台でワックスを落として貰い、俺の前にはいつもの春斗が不服そうな顔で座っていた。
「舞人が見たいって言ったんじゃん、、このワックスだって高いんだからな。それなのにすぐ流してくれなんて...」
春斗はブツブツと文句を垂れ流してる。 ハハハ、それくらいなら甘んじて受けようじゃないか。だって俺にはあの状態の春斗を連れて街に出る勇気はない。。
「はぁ、もういいや。んで、舞人、これから昼食べに行くのか?」
「お!丁度昼だしそろそろ行くか。」
気づけば12時を少し回ったくらいの時間になっていた。 俺と春斗は外に出ようと部屋を出てリビングで団扇を仰いでる浩二おじさんを見て俺は頭を抱えた。
「すまん春斗、今日は外出るの無し。浩二おじさんの手伝いしよう。」
そう言いながら俺と春斗と浩二おじさんの三人は未だ復活の兆しが見えない香織おばさんと冬華ちゃんの看病に勤しんだ。。
「んじゃ、またな春斗。」
そう言って俺は春斗の家を出た。 結局、香織おばさんと冬華ちゃんが復活したのが夕方近くなり「どうせなら夕飯でも食べていきなさい」と香織おばさんに言われ俺は夕飯をご馳走になった後俺は帰ることになった。 19時...季節は夏なのでまだ外はそこまで暗くはないし、暖かい風が吹いている。
帰る途中、四人でよく遊んでいた公園に足を踏み入れてベンチに座りおもむろに携帯を取り出し電話を掛けた。
「もしもし、舞人君?どうしたの??」
コール4回、電話の相手は桜井真紀。
「あ、いや、用はないんだが、真紀が今何やってるのかなって気になってさ。」
「あはは、何それー。私はご飯食べ終わって部屋でゴロゴロしてますよー。もう少ししたらお風呂行こうかなーって....」
「そうか....あのさ真紀....」
「んっ?なにー?」
俺は小さく深呼吸一回。
「こう言うのは電話じゃないほうがいいんだろうけどさ....俺はお前が好きだ。」
「......ふえ......ちょ、ちょっと、いいいいいきなり何よ....」
電話越しで明らかにうろたえている真紀を可愛いと思いながら俺は思いのたけを伝えた。
「昔から好きだったんだ。真紀さえよかったら俺と付き合ってくれないか?」
「~~~~~~~~~~~~~」
もはや何を言ってるのかわからない状態だったが、真紀は小さな声で深呼吸深呼吸すーはーすーはーと心を落ち着けてるのだけはわかった。
「え、えっと....ありがとう舞人君。 わ、私も舞人君が好きだよ。。。だ、だからよろしくお願いします!」
「え!ホントか!!こっちこそ宜しくな!!!」
「うー...恥ずかしいー....私今絶対顔真っ赤だよー....」
「ば、、バカ!俺だって真っ赤だっつーの....」
「うーー、もういい! 私お風呂に入ってくるから!! 明日デートしようねじゃあね!!!」
そう言って真紀は一方的に電話を切った。俺は大きく息を吐き「よっしゃ!」と小さくガッツポーズをしたのだ。
「真紀が何かの拍子に春斗の本気を目の当りにしたら俺なんか相手にされなくなりそうだしな...それが怖くて慌てて告白したけど、、まあ、結果オーライだからいいか!」
独り言のようにそう言って俺はベンチから立ち上がり意気揚々と家に帰るのであった。
自分のイメージを文字でわかるように伝えるのって難しいですね(今更かよww)
とりあえず、これで春斗君の容姿の本気は終わりになります。
夏希ちゃん側も書こうか迷い中ですが皆さん相変わらず優しく見守ってください。
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