3.平成を生きる新たな命
3.平成を生きる新たな命
新居は僕が勤めている会社の社宅。妻は他の社員の奥さんたちと上手く付き合ってくれていた。比較的若い社員が多かった分、付き合いで気を遣うこともなかったからかも知れない。
結婚してから1年半くらいの時だったと思う。妻から妊娠したと報告があった。この時の僕の気持ちはとても言葉で言い表せるものではなかった。もちろん嬉しかったのだけれど、一言で“嬉しい”では収まらない。経験した方ならご理解いただけると思う。
平成3年2月8日。三連休の前日、深夜に妻が産気づいた。
この頃、妻は実家に身を寄せていたのだけれど、僕も三連休の前ということもあり、仕事を終えて妻の実家を訪れていた。そんなタイミングで妻が産気づいた。義父が車を出してくれて妻を掛かり付けの産婦人科医院まで運んでくれた。当然僕も一緒に。そして、義母も。
翌日のお昼頃、長男が生まれた。
「三連休の初日に生まれるなんて、親孝行な子だね」
保育器に入れられた我が子を義母と一緒に見ていると義母がそんな風なことを言った。ようやく気持ちが落ち着くと、僕はパジャマのまま家を出たことに気が付いた。義母が家に電話をしてくれて、末の義妹が着替えを持ってきてくれた。もちろん、この時の義母も同じような格好だったのだから。
長女が生まれたのは平成5年11月28日。生まれたのは日曜日だった。
この頃は義父母が家を建て替えてくれて、僕たちは義父母と同居を始めていた。
土曜日の夕方、妻は産気づいた。二人目だということもあり、しっかり身支度を整えて、長男が生まれたのと同じ産婦人科医院へタクシーで向かった。
控えの病室で僕は妻の背中をさすってあげたりしていたのだけれど、夜中に陣痛が始まった頃には僕はすっかり寝入ってしまっていた。妻は自分でナースコールをして分娩室へ行ったらしい。目が覚めて妻が居ないことに驚いた僕はナースステーションへ飛んで行った。すると、看護師さんがにっこり微笑んだ。
「おめでとうございます。女の子ですよ」
長女は僕が眠りこけている間に生まれていた。
こうして僕たち夫婦は二人の子供を授かって、平成の時代を過ごしていくことになる。