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的外れな催眠チート ~面倒臭がりが召喚されました~  作者: 山田 武
大きな戦いに挑もう

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さらに考えよう

皆さん、お待たせしました!



「高速思考をやってみるか」

(……面倒だろ)

(マジでやるのかよ……面倒だな)

(ふざけんなよ、面倒臭いじゃねぇか)

(面倒でしかない、やらなくていいだろう)


 さて、さすがに並列思考をモノにしようにもそれなりの時間を要してしまう。


 しかし、奴隷の一人が持っている時魔法をコピーしてあったので、『米青ネ申と日寺の部屋』風な結界の中で早急に終わらせた。


 ただ、俺という人間の限界が思考五つ分。

 これ以上やろうとすると、激しい頭痛が強制的に思考を停止させられる。


 催眠でどれだけ誤魔化しても、今の段階(・・・・)では抗いようもないようだ。


「考えてみろ、高速思考をやれば物事をすぐに終わらせることができる……つまり?」

(なるほど、楽ができるのか)

(その過程が面倒なわけだが?)

(休む時間も高速にすればもっと長くなる)

(そういう考えもあるのか)


 まあ、通常時はどの思考も俺の面倒臭がりな思考なんだから意見も独りよがりだ。


 それでも自分の意思を纏め上げた方が、作業効率が上がるのだからやっておいた方がいいと俺は思っている。


「それにほら、体を使わないスキルを同時に使えるようになるだろう? それを使えば、アレに対抗できるかもしれない」

(……やるか)

(仕方ない、やるか)

(やらなきゃ、殺られるもんな)

(嗚呼、まだ死にたくないな)


 俺たちの意思は一つになり、強固な意志となったに違いない。


 特に思考が冴え渡るわけではないが、ある程度処理能力に負担が掛かるスキルを同時に行使できるようになった気がする。


「──さて、やるか」


 思考は一つになった……というか、今は同時にやると持たないのでどうせ最初から解除する気だった。


 一つに束ねられた思考能力を以って、スキル(並速思考)を発動する。


(ただまあ、思考速度が上がったところで時間経過が変わるだけだしな。それなら結界に入っている状態と大して変わらないし、あくまで肉体そのものの速度が変わっていないだけ……これを纏めるのに一秒も掛からない)


 頭がよくなるわけじゃない。

 思考速度を上げて計算を続けていても、元がポンコツなら答えは一生出ないのと同じ。


(猿がキーボードを押し続ければ名作が書けるのと同じ、愚直なまでの行動の果てにいつか成果が出ると言うだけ。思考加速は、その過程を可能な限り現実での時間経過を減らしているだけで脳の疲労が半端ない)


 そこは並列思考と変わらない。

 今回はその反省を生かし、大量に用意しておいたブドウ糖を使った菓子を口に含む。


 味には拘らせたので、入った途端──嫌にならない程度の甘味が爆発する。


(嗚呼、脳が糖分を欲していたな。意識していなかったから頭痛も気にならなかった……不味いな。こういうのを主人公ってあっさりやってるんだよな。おいおい、どんだけ異常なんだよ)


 物語でも定番な超高速での闘い。

 あれだって、反射的動く脳筋を除けばそれに対応できる思考速度を持っていなければ行うことができないだろう。


 まあ、そういう物語で脳筋たちでもそれなりに思考戦を繰り広げているんだから、それすらもできない素人は、自分たちがバカと称している者たちよりも頭の回転が遅いと自嘲しているんだよな。


(……というか、口を開くのが面倒だな。頭の回転速度の方が口を動かすより早いし。これが俗に言う『天才の領域』なのか? こういうスキルも無い世界で、そういう奴らってこれができているんだよな。化け物だな)


 頭の中で凡人たちの行動をすべて把握し、統制していく『神』の采配。

 彼らは俺たちみたいな愚鈍な存在を有効的に扱い、生かさず殺さず駒として使う。


 ──妹も天才なんだよな。


 兄補正でパシリ程度に留めてくれてはいたものの、たまに口から漏れる言葉からそういう感じがしていたし。

 ……まあ、わざと聞かせていたのだろう。


(こういう考えにもちゃんと至る。まあ、妹のことはいいや。あれこれ考えていると、嫌なことを思いだしそうだし。……まったく、出来のいい妹というか、兄が劣っているというか。いずれにせよ、ロクでもないな)


 少しずつ思考速度が高まっていく。

 使えば使うほど速度は目まぐるしくなり、自分でもそれを制御できなくなる。


「──『緊急停止』。うわ、やっぱり物凄く糖分が欲しい」


 なのでそれを強引に停止させた。

 数を増やすことに催眠は使えなかったが、暴走するスキルを抑えこむためであれば使うことも可能……己の体に関することだしな。


「まずは催眠の強制停止が無くとも、思考を制御できるようになることが必要だな。止める隙に殺される……なんてオチは嫌だし」


 むしろ、強制停止を受けてもすぐに再起動できるようにしないといけないだろう。

 突然の出来事に対応できなければ、絶対に絶望的な状況から逃げることができない。


「……口に出すだけで来そうだな。うん、心に暗示して肝に命じておこう」


 絶対に忘れてはいけないこと、俺という面倒臭がりであろうとやり遂げなければならないことを刻み込んで理解させる。


 ──埒外の存在なんてものすべてを否定して生き残るには、結局それしかない。



それでは、また一月後に!


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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誤字脱字報告、また質問疑問なども大歓迎です。

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