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提案をしよう

皆さん、お待たせしました!



 弱り切ったアキラに催眠を施して、ある意味奴隷と同じような状態にしておいた。


 もともと奴隷だった者たちは、今回の出来事を経て第二王女に非常に感謝している……というか、そう精神を誘導しておいた。


「な、なあイム、こういうときってどうすればいいんだよ」


「とりあえず国に来い、養ってやるとか言えばいいんじゃねぇの? 人材はどれだけ居ても足りないし、見た限り選り好んだからか優秀な奴らばっかりだ。このまま居ても何かあるだろうし、家族ごと連れてってやれよ」


「そ、そういうものなのか?」


「騎士団でも作っておけよ。大好きな姉妹を守れるような騎士でもさ」


 奴隷たちはそれぞれ第二王女へ名を名乗ると、ぜひとも私をと騎士っぽい忠誠の姿勢を取りだす……容量がいっぱいだし、どうでもいいので名前は忘れておく。


「それじゃあ、俺は散歩に行ってくるからあとはよろしく」


「お、おい! 何をすればいいんだよ!」


「ソイツにどうしてほしいか言えば、明日から真面目に働いてくれるさ。滅ぼすのは簡単だが、回っている利益をぐちゃぐちゃにすると街の奴らに影響があるからな。やりたいことがあるなら、どうぞご自由に」


「あ、ああ、分かった……のか?」


 俺は知らないが、どうせ王からだいたいの指示があるのだろう。


 それに任せおけばどうとでもなるので、とりあえず時間潰しにふらふらと彷徨っていても問題ないさ。






 奴隷として使役していたものは、首輪を介して干渉すればすぐにどうにかなった。


 面倒臭いことを可能な限り回避している俺ではあるが、避けたが故に面倒なことになるのが分かっているなら、活発的に動く。


 必要な労力を最小限にする、それこそが真の面倒臭がりというモノだろう。


 溜め込んで一気に消化する、そんなことができるのはユウキみたいな奴だけだ……凡人はチマチマとやっていくことこそがベスト。


「──やっぱり隠していたか」


 だからこそ、火種は取り除くべきだ。

 異世界転移者あるあるを思いっきりやっているアキラなので、どうせそんなことだろうと思っていた。


「そういえば、奴隷に魔力透過なんてスキルの持ち主が居たな……なるほど、それがあれば効果範囲に入っていれば同じように潜れるようになるのか」


 イメージ的に狂気の研究は、なぜか地下で行われる。


 情報隠蔽などの観点からそうなっているのだろうが、魔法があるこの世界ならどこでやろうと変わらないだろうに……。


 エレベーターや普段使われている階段からでは向かうことのできない、道なき道を通ることで辿り着く地下室。


 そこでは首輪を嵌めた研究者たちが実験を行い、何かしらのレポートを書いている。


「──『隷属』」


 奴隷に関するスキルや魔法をセットしたこのワードによって、彼らの首輪は一度解除されたうえで主の部分を俺に書き換えられた。


 外すと何が起こるか分からないので、とりあえず最初はこうしておく。


「まず、『受け入れろ』。次に『動くな』。いいか、まずお前たちにこの研究をさせていた男は破滅した」


『…………』


「まあ、お前らがどんな気持ちでこの研究をしてたか知らないが、とりあえずこのままの体制で研究が続くことは無い。──というわけだ、『動くことを許可する』」


『ありがとうございます!』


 許可した途端、いきなり感謝されるもんだからさすがに少しだけ驚く。


 話を聞いてみたところ、全員がさまざまな手段で嵌められて捕らえられ、強引に研究をさせられていたらしい。


「行く当てがない奴は、あとで良い場所を紹介してやるからいっしょに来い。そうじゃないヤツ……家庭がある奴は連れてってやるから帰れ。協力してやるから、言えば叶える」


「ほ、本当に帰れるのですか?」


「嘘を吐いて何の得になるんだよ。さすがに行き先がどうなっているかまでは保障できないが、安全に送ってやることだけは約束してやろうじゃないか」


「あ、ありがとうございます!」


 感謝されるついでに記憶処理云々を話したのだが、むしろ忘れたいとなおのこと感謝されてしまった……アキラ、どんだけ研究を押しつけていたのやら。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 正式な手順を踏んで第二王女を外へ送りだしたうえで、王城へ送り届けたのち、少し放れた場所にある草原を歩いて星を眺める。


「綺麗な星だな。前に報告した時にここに居たから来てみたが──理由でもあるのか?」


「あの街は明る過ぎます。自然の輝きは人工の光に淘汰され、小さな輝きなど私たちの目には入らなくなっています」


「それは俺たち異世界人の居た世界でも似たようなものだ。星の光を観れるのは、もう人族が居ない山奥とかだからな」


 いつの間にかそこに居た少女こそ、俺があの街に派遣していた密偵である。

 アキラに関する情報も、だいたい彼女が集めてきたものなのでとても役に立った。


「お褒めに与り光栄でございます」


「とりあえず、ご褒美だな。普通にここで休暇を取るのか、それとも屋敷でしばらくまったりするか……どっちがいい?」


「──屋敷でお願いします」


「即答だな。そこまで人気があるのか」


 まあ、たしかに俺が使うこともあるので衣食住の質向上は常日頃から心がけている。

 出張先で環境に慣れず、住み慣れた場所に帰りたくなるようなものかもしれない。


「あとは──これを渡しておく。アキラの能力を参考に、商人を相手に戦えるように準備した魔道具だ」


 ついでにアキラの研究結果も使えるよう、不要と言った者から奪った記憶を突っ込んであるので、交渉(物理)にも対応できるようにしてある。


「──ッ」


「おい、どうした」


「…………」


「いや、なぜに気絶?」


 前にもこんなことが有った気がする。

 アキラの能力を再現したってのが、もしかしたら不味かったのかもしれない。


 悪いことをしたな、立ったまま気絶するほど嫌だったとは……。


 ──さて、今度こそゆっくりしよう。



それでは、また一月後に!

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