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遠距離武器でサボろう



「それでは、近距離組、中距離組、遠距離組に分かれての訓練を行う。それぞれ自分の持つ武器に近い物を持つ教官の所へ向かい、使い方を習ってこい」


 一番ここで偉そうな兵士が、武器を持った俺たちにそう告げる。


 クラスメイトたちはさっそくその言葉に従い、射程距離に合わせた戦いをするため、兵士たちの下へ向かう。


 さて、俺が行くのは──


「遠距離担当のロングだ。ここに居る者は、離れた場所からの攻撃で支援を行うための練習をする」


 ──遠距離の所である。


 いや、だって前で戦ったら死ぬだろう?

 俺は後ろの方で安全にしていたいんだよ。


 クラスメイトの1/5──つまり六人がここに志願した。

 俺以外は、真面目にスキル適性を考えての選択だろうか?


 魔法を考慮していないから、魔法も含めて考えたら遠距離はもっといるだろうしな。


 俺たちの担当は弓を持った青年兵士だ。

 鑑定スキルで視ても、弓術スキルを所持しているし……間違いないだろう。


「ではまず、それぞれの武器の扱いを見させてもらう。遠距離攻撃は大きく分けて二種類ある──投擲と射出だ。今からその二つに分けてあの的を狙ってもらうぞ。自分のやりたいことが当て嵌まる方で攻撃してみてくれ」


 そう言って、先に投擲武器を指定する。

 四人のクラスメイトがそれに応じて、前に出て的に向かって攻撃する。


 長髪の女子が持つのは苦無(?)風の棒。

 金髪の男子が持つのはコイン。

 眼鏡を掛けたが女子持つのは綺麗な(ボール)

 黒髪の男子が持つのはブーメラン。


 眼鏡女子の物以外は、的の真ん中を的確に当てている。

 眼鏡女子の珠だけは、放物線を描いた後にそのまま的の手前に落ちた。


 ……眼鏡女子以外は、スキルの補正でもあるのか?

 そんな適当に投げるだけで、いきなり成功するとか普通はありえないだろう。


 なら眼鏡女子はどうしてだ?

 珠を投げるってことは……掌サイズの怪物でも集めるのか?


「──よし、ワコ以外は各自スキルレベルを上げるため的にスキルを当て続けてくれ」


「ワコは先に投擲スキルを入手するための練習を行う。そこに集めてある石を、アッチの方に一つ置いてある的に当て続けるんだ──次は射出組、来い」


 三人と一人に分かれて投擲組は、今いる所とは別の所で練習を始めた。

 ……関係ないけど、さっき挙げたゲームの主人公って投擲率高いよな。


 ──外したところ見たところ、ないし。


 青年兵士の指示に従って、残った俺ともう一人の女子は的の前に立つ。

 彼女が持っているのは弓……ただ、俺の持つ弓が狩弓ならば、彼女のは和弓だろう。


 なぜこの世界にそんな代物が在るか……昔の同郷が用意したんだろうなきっと。


「貴方、弓を使えたの?」


「……ん? まあ、な」


「ふ~ん……ところで、貴方の名前は?」


「…………」


「ちょ、ちょっと……」


 何か話しかけられている気もするが、別にどうでも良いから無視だ。

 それより、今は射ることに集中しないと。


 夢の中でコピーした(神聖武具術)を意識的に起動させると、なんとなく弓をどう扱えば良いかが理解できる。


 うん、明確には説明はしていなかったが、武器系のスキルには動作補正が付くのだ。


 それも勇者が持つような、ご都合主義満載のスキルともなれば──


「──凄いじゃないか! すべてが中心に、それも継ぎ矢をやるとは……さすがだな」


「はい、昔から練習していましたから」


「そうかそうか、これならすぐにでも戦線に出しても困らないな。……ああ、イムはワコの所で弓術スキルが習得できるまで練習をしてこい。矢が無くなったら自分で補給しろ」


「……うぃ」


 言われた通り、さっきの眼鏡女子が向かった場所へ向かおうと思ったのだが……なぜか隣りに居た女子に呼び止められる。


「ちょっと待ちなさい」


「…………」


「ねぇちょっと、話を聞きなさい!」


「……んあ? えっと、どちらさん?」


「こぉんのぉ……さっきからずっと声を掛けていたじゃないの!」


 ……ああ、そういえば何か雑音(BGM)が聞こえていた気がするな。

 どうでも良いからスルーしてたわ。


「それで、何かありましたか? これから向こうで練習しなきゃいけないんで」


「──貴方、さっきワザと外してたでしょ」


「……いいえ、弓を使うのは初めてでしたから。ああなるのは分かってましたよ」


「嘘ね。貴方が見た場所、そこに必ず矢が()たっていたもの」


 おっと、意外と正解。

 彼女のような褒められ方をされたくなかったので、わざと適当に外していたのだ。


 ……だから、俺は遠距離武器を選択した。

 適当にやっても、技術不足で済むからな。


「当たると言いましても……ほとんど地面でしたよ。全然じゃないですか」


 逆に、彼女の技術は素晴らしかったな。

 完全に嵌った型から放たれる一矢、一種の芸術みたいに感じられたよ。


 ……うん、それ以上は特に何も感じなかったけどな。


 ──あとで(解晰夢)でコピーするか。


「それじゃあ、俺はもうこれで失礼させていただきます。貴女と違って、練習しないと当たらなそうなんで」


「ま、待ちなさいよ!」


 はいはい、無視無視っと。

 ああいう何かの技術のエキスパートってのは、だいたい主人公的な存在であるユウキの御手付きなんだから知らんでよし。


 ……というか、基本クラスの女子はユウキに好意を抱いてるんじゃないか?

 どうでも良いから適当に言ってるけど。


 まあ、これで俺が戦地に飛ばされることは無いだろう。


 この後少し技量が上がったように見せれば厄介者扱いにもされないだろうし……ハァ、楽に生きたいよ。



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