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侵入しよう

皆さん、お待たせしました!



 オーニキ


 ダメ亜竜(アシ)を使い潰して三千里。

 目的地となる荒原に辿り着いた──草木が無い分、道路の整備が楽だったんだろう。


 四方八方から馬車や魔物に引かせた乗り物に乗って、人々が街に赴いている。


「途中で降りようと思っているが……街の中に降りる場所があるな。なあ第二王女、お前はどっちがいい?」


「どっち?」


「コイツで降りれば、確実に目立つし国の使者だと証明できる。それが嫌なら、予定通り別の場所で降りるぞ」


「……なら、先に降りるぞ。まずは情報収集からやりてぇ」


 あいよ、と答える。

 ただそれだけで話を聞いていたアシが、街から少し離れた場所に降り立つ。


 ダメだがバカではないし、いちおうは人の言葉を理解できる亜竜なのだ。


 着地して、アシを送還する。

 なんだか物欲しそうな目をしていたので、適当に肉を食わせておく──働いたヤツには相応の報酬を支払わねばな。


「さて、じゃあ行こうか。情報収集がしたいなら、役割を決めないとな」


「……役割?」


「またか……面倒だな。なんだ、王女と異世界人ですと馬鹿正直言うのか?」


「ば、誰がバカだ!」


 お前だよ、という言葉は呑み込む。

 一と三の王女は深慮遠謀に長けているというのに、二だけは真っすぐなんだよな。


 だからこそ、俺にとって面倒なんだが……騙しやすいという意味では楽である。


「まあ、定番だとアレだな──商人と護衛の関係が多い。ただ、これは無しだな。お前が商人なんてありえないし、俺が商人だと護衛が弱すぎる」


「なっ!?」


「あとは……そうだな、普通にカップルってのも定番だ。おい、そう怒るなって。別にやるなんて言ってないだろ? ただからかってみただけだ」


「……ころす、ぜってぇころす」


 拒否反応が激しいが、無視しておく。

 たとえ彼女個人の意見がどうだろうと、俺があの国に寄生することは決定事項だ。


 嫌がらせで何かを宛がう、なんてことさえなければ完璧な環境である。


「アイデアなんてもんは、こっちの世界に無数にあるからな。任せておけ、簡単に入る方法を教えてやる」


「なんだよ」


「魔法で入っても、結局中で訊かれたら意味がない。さて、耳を貸せ」


「お、おう……それ、必要あんのか?」


 まったくない、けどからかいたかった。

 耳元でそのアイデアを(ささや)き、理解させる。


 これほど素晴らしいアイデアはないはずだが……どうやら気に入らないようで、第二王女の顔はとても引きつっていた。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 都市の中へ楽々と入ることに成功する。

 中は乗り物が双方から移動できるほどに広い道があるほど、都市化が進んでいた。


 ファンタジーあり気の異世界にしては、ずいぶんと設備が整っているものだ。


 少々心が躍る、多種族が暮らすその街並みに興奮する俺だが……逆に第二王女は、いきり立つように拳を強く握り──叫ぶ。


「人でなしじゃねぇか!」


「……おいおい、そんなに怒るなよ。誰も不幸にならない、素晴らしい策じゃないか」


「チッ、ちょっとでも信じようとしたオレが馬鹿だった……」


 まったく、ただ催眠魔法で身分証を偽装させただけだぞ。

 持っていない奴は金を払えば仮のヤツが手に入れられるのは、どこの国でも常識だ。


 なら、持っていないと思わせてそれを作らせることに、違和感を抱かせなくすることぐらい問題ないだろ。


 それなのに第二王女は……まったく、他の姉妹なら気にしなかったと思うぞ。


「恰好も変えたし、それなら変に怪しまれないだろ。仕草でバレバレだが、ちょっと地位の高い令嬢がお忍びで……ぐらいにしか思われないと思うぞ」


「そ、そうなのか?」


「ああ、似合ってると思うぞ」


「~~ッ! な、何を言ってやがる!」


 怒髪天を突くってこんな感じなのかな?

 顔を真っ赤にした第二王女を見ながら、ふとそんなことを思う。


 さすがに貴族としての風格? とやらを隠すことはできなかったので、貴族の中でもそこまで位が高くない辺りで妥協した。


 いちおう、こっちにも催眠魔法を使えば楽だったんだが……あとが詰まるしな。


「まあ、そんなことはどうでもいいんだが、具体的に調査って何をするんだ? 経済情報か、商人の占有率か、国の汚染度か、それともスラムと孤児についてか?」


「…………」


「おい、まさか何も決めてないとかいうわけじゃないよな?」


「し、仕方ねぇだろ! お、オレが選ばれるなんて思ってなかったんだからよぉ!」


 ずいぶんと時間があったのだ、せめて観光という回答ぐらいは欲しかった。

 だがまあ、やることを決めてないと言うなら相応のやり方を自由に選べる。


 第二王女は貴族として振る舞い、俺は護衛として動く。

 この街にもクラスメイトが居るって言われたが、バレないように活動しないとな。


「まあいいや、なら俺の行きたい所に行ってみることにするか。商業の都市って言うぐらいだし、一つぐらいあるだろう」


「どこに行くんだよ」


 当然の質問だ。

 この行き当たりばったりの王女様が満足するうえ、俺の目的を果たせるいい場所があることをすでに知っている。


 だからこそ、俺も決まりきった解答を彼女に伝えた。



「──非合法市、ついでに奴隷だな」



では、また一月後に!

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