表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/131

結界を潜ろう

一月ぶりの更新です



 森の中を進んでいく。

 獣人である彼らに転移魔法は使えない、そのため歩きという方法しか取れない。


 ハッハッと息を鳴らすブルドック、俺はその後ろをついていっていた。


「なあ、いつまで歩く?」


「もう少しです。結界がありますので、何か不都合なものがあればお早目に」


「あいよー」


 結界を越えると、発動していた魔法やスキルが解除される場合がある──そうすれば、こっそりと入ってくる侵入者を見つけられるからな。


 もちろん、それにも一定以下の効果だけという縛りがあるけれども。

 常時発動している結界だと、あらゆる力を阻害することなんて不可能に近いのさ。


「──こちらです」


「ああ、たしかに結界だな」


 さすが、神様が居る森にある結界だ。

 これなら聖女たちが全力で掛けた支援系の魔法でも、あっさりと解除しそうである。


「何もしていないようですが……よろしいのですか?」


「別に、困るようなことがないからな。それより、早く中に入ろうぜ」


「……分かりました」


 そのまま結界の中へ入ろうとする、薄い膜が張られているような感覚を掴む。

 試しに纏っていた付与魔法の魔力を、その結界は吸い上げていった。


 なるほど、必死に抵抗すればどうってことない程度の結界なのか。


 ただ、奥に目を凝らすとまだ結界が張られているみたいだし……そっちの方に、こうご期待といこうか。






 さらに森の中を進んでいくと、やがて家屋が見えてきた。


 さすがに理想のエルフ住宅(木の上)ではないが、普通に木造建築で家屋を建てているのには唖然としてしまう。


「……物凄く、見覚えがあるんだが」


「これらはすべて、サーベラス様より授かった知恵によって造られました。『ヨセギ』という技術が使われているとのことです」


「寄木ね……」


 宮大工の知り合いでも居たのだろうか?

 まあ、金属嫌いのエルフでもいれば、そんな技術を作るかもしれない。


 だが、名称まで同じというのは、さすがに違和感しか残らないだろう。


「ちなみに、どれぐらいの数のヤツがここには居るんだ?」


「大半が私のような『犬頭人族』です。ごく僅かながら、迷い込んだ他種族を迎え入れております」


「そうか……かなり居るんだろな」


 犬種が。

 俺に都合のいい翻訳のため、種族の部分が先ほど認識した名称になっている。


 すでに目に映る範囲、多様な犬の頭が見受けられているし。


「おい、ブール様だ!」


 一人の青年が、俺たちの姿を見つける。

 すると連鎖するように、誰もがブルドックに向けてかけよってくる……犬のじゃれ合いみたいに見えるな。


「あー、俺は勝手に歩いてるから。暇になったら追いかけてくれ」


「えっ? そ、そんなこと急に……って、どうして顔が!?」


「そういうスキルだ。気にしなくていい」


 俺を見た相手に催眠を掛ける魔法を使い、姿を彼らと同じ種族のように見せる。

【停導士】のレベルが上がって手に入れた魔法だが、広範囲を騙せるので便利に使えた。


 ちなみに秋田県……じゃなくて、秋田犬に見せているぞ。


「ま、待ってください!」


「それじゃあな~」


 人の波に呑まれていくブルドックを置き去りにして、俺は一人歩いていく。


 土産は……売ってないか。

 できるなら、あとで探しておこう。


「まあ、森のもっと奥の方に行けば例の反応も近くなる……さっさと行くか」


 隠蔽系スキルを行使、そのうえで俺を知覚しても無視するように精神魔法を施す。

 催眠魔法もセットで働き、気づく者も気づかぬ者も俺を止めることはできない。


「──“空間転移”」


 歩く必要も無くなった。

 魔力反応を極力抑えた状態で、空間を渡って結界の傍まで移動する……さすがに隔てられた先まではいけない。


「二枚目の結界。こっちはずいぶんと、本格的な構造なことで」


 崇められるだけのことはあり、超厳重な機能がこちらの結界には備わっていた。

 悪意を持つ者の侵入を拒み、選ばれた者しか入れないようにしてある。


 さらに維持する必要があるあらゆる魔法とスキルを、完全に無効化できるようだ。


「つまり、俺が俺自身にかけた催眠だけはそのままってことだな」


 中へ潜り、侵入する。

 その時点で合作の偽装は解除されるが、お達しでもあったのか人が最初から居なかったので問題はない。


 ちなみに先ほどとは異なり、この中では追加でスキルを行使することも難しい。


 自身を強化することも大変だが、特に体外に放出する系のものはいっさい使えないと理解してもいいほどに強力だ。


「……しかし、俺を呼ぶなんてどういう理由だ? 異世界人の関係者か? たしか、魔王に魅了チートを掛けようとしたヤツが居たって言ってたし」


 それがそのあとどうなったのかはどうでもいいし、面倒だからもう考えない。

 ただ、異世界人を見てみたかったという理由も、もしかしたらの一つに加えられる。


「行ってみりゃあ分かることだけどな。俺の予想通り、カッコイイ犬だったら嬉しいんだがな……」


 俺だって、つまらないもののために行く気はなかったんだ。

 興味をそそり、動かした分の責任はしっかりと取ってもらわなければ。



ではまた、一月後に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ