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歓迎を受けよう

一月ぶりです



「悪魔と闘うのと、四天王と戦うの……どっちがいい?」


「いや、どっちも嫌だから」


 女魔王の提案を速攻で却下する。

 ちなみにだが、洗脳対策なのか俺にその姿すべてを晒しているわけではない。


 不思議だよな、眼の色や髪の色が認識できているはずなのに、顔などの容姿に関してはまったく理解できずにいる。


 まあ、別にユウキのようにハーレムが欲しいわけじゃないし、どうでもいいけどさ。


 嘘、とバレたのもそれが原因だな。

 相貌が分かっているわけでもないのに、可憐だの言われても信じられないだろう。


「なんで戦わないといけない? 面倒だ、やる気がまったく湧かない」


「異世界人が魔族にとって、どのような存在だと認識されていると思う?」


「……ああ、嫌われてるのね」


 そりゃあまあ、【魔王】討伐を目標とする異世界人たちだしな。

 さっきの話的に、魔王で逆玉をしようとした奴もいたみたいだし……嫌われるわけか。


「魔族は力を尊ぶ。他にもあるけど、基本的に力で証明することが大切なんだ。だから、私の召喚した悪魔か【魔王】の直属の部下たる四天王を倒す……これで証明できるよ」


「いや、別にやる必要ないよな? 【魔王】が命令すれば、あの国を故意に傷つける奴はほぼいなくなるし、条約は締結される……ほら、やらなくてもいいだろう」


「残念、そうはいかない」


 彼女が指を鳴らすと俺と、【魔王】の下に魔法陣が出現し、謁見の間から強制的に移動させられる。


 抵抗はできるのだが、今回は【魔王】の使う魔法陣が気になりそのまま受け入れた。

 何よりファンタジー的な展開だし、面倒ではあるが……嫌いではない。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 そこは闘技場のような場所だった。

 完全に見世物感覚なのか、上の方に設置された観客席から歓声が上がっている。


 俺はその舞台、つまり剣闘士が居るような立ち位置に移動させられていた。


「俺を歓迎する声なんだけど、それが友好的なのかと訊かれれば……違うよな」


 異世界人が屈服する、そんな光景を観客たちは望んでいるのだろう。

 残虐とまではいかないが、それなりに痛い目を見てほしいと声色が物語っている。


「【魔王】様ー、俺はどうすればー!」


 観客席のその上、貴賓席っぽい場所に居る【魔王】へ向けて声を張り上げてみた。

 すると突然、観客たちの声が無くなり静寂が生まれる……なんでそんな急に?


「我の配下たる悪魔か、それとも四天王かを選ぶがよい」


「……面倒だな」


「貴様が選択できるのは、これだけだ。それとも……両方を選ぶか?」


 民たちの前だからか、一人称や口調を変えて話す【魔王】。

 威厳って、大切なんだな……。


「おいおい、他国からの使者をタダ働きさせるなんて……魔族ってのは遅れてるな!」


「無論、報酬は与えよう──貴様が勝てば、生をくれてやろうではないか」


 ワーキャーと盛り上がる魔族たち。

 ウザい異世界人が蹂躙される未来を脳裏に描き、実現することは望んでいるようだ。


 本当に、嫌われてるんだな……と実感したから、ついため息が零れてしまう。



「えー、それじゃあ四天王で」



 ピシッ、と再び場が凍る。

 そんなに変なことを言ったつもりはないんだけれど……なぜだろう、とてつもなく視線が冷たいものになってるな。


「そうか……まあ、理由は訊かぬ。その選択が愚かであったことを、その身を以って後悔するがよい」


 再び【魔王】が指を鳴らすと、四つの魔法陣が俺の近くに展開される。

 現れたのは四人の魔族、その誰もが強大な魔力を秘めていた。


『お呼びでしょうか、魔王様!』


 彼らはいっせいに【魔王】の居る貴賓席の方へ傅き、その頭を垂れ忠誠の構えを取る。


 そんな彼らの登場に魔族の皆様はさらに歓声を上げ、その様子を見た俺はげんなりとしてしまう。


「其方らに命ずる、そこに居る異国の使者を丁重にもてなせ。無論、魔族らしくな」


『ハッ、承りました!』


「……うわー、面倒」


 四天王ともあれば、【魔王】の素ぐらい把握しているだろうに。

 わざわざその演技に乗っている、という点も俺としては面倒臭さを上げている。


「あー、四天王の皆様? 特に自己紹介の必要は、ございませんよね? 俺が勝者、貴方がたが敗者と名乗ればいいんだしな」


「ずいぶんな物言いだな、異世界人」


「ん、ああ……だってせっかく楽な方を選んだんだから、さっさと済ませて休みたいんだよ。だからほら、すぐに始めようぜ」


 狼っぽい耳が生えた男から挑発が来たが、どうでもいいのでスルーして本題に進める。

 異空間から透明な弓と矢、それに矢筒を取りだして身に着けていく。


 それそのものに、強大な力なんて無い。

 あくまで俺みたいな奴が装備することで、その真価が発揮できるように仕組んである。


「いやいや、殺気を放つところじゃないだろうに。【魔王】様の命令は、俺を丁重にもてなすこと……なら、魔族らしくそれを実行するはず。いやー、どんな歓迎が受けられるのか今から楽しみだよ」


 殺気なんて、気にしない。

 さっさと始めろと言わんばかりに、矢を弓に番えて構えを取る。


「うむ、では──始めよ」


 そして、【魔王】の宣言を受けて、戦いの幕は開かれた。

 四対一、のままでもまあどうにかなるか。



では、また一月後に

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