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サクサク潜ろう

一月振りです



 ゲームであれば、地図機能の他にも迷宮(ダンジョン)攻略に便利なシステムがいくつかあった。


 だがここは異世界であり、すべてが便利というわけではない……しかしそれでも、楽なものは楽なのだ。


「信じらんねぇ……」


「勇者様ならもっと速いぞ。いや、他の異世界人でもそれなりの速度が出せる」


 階層ごとにリセットされるが、『検索(あんじ)』を使えば地図をすぐに生成することができる。

 最適なルートをすぐに見つけ出し、階層を降りること数十回。


 ──すでに五十層を下っていた。


「お前らって、異常なんだな」


「それをあの国は求めてたんだよ」


 なんて名前だったか忘れたけど、丁寧に俺たちへ洗脳をかけてから支配しようとしていた国だ……まあ、あっちは精神魔法だったんだけど。


「勇者はあの国のため、そして自分の矜持のために世界を救う。救われた者たちは勇者に感謝して、あの国に何かを想う……けど、勇者はそれでもあの国を大切にする。いやー笑える話だな」


「笑えねぇだろ」


「笑えるだろ。自分たちを庇護してくれた、ただそれだけの理由で勇者はあの国を守る。これだけ誰がどう言おうと、何があっても変わらないんだぜ?」


 諸悪の権化、みたいな扱いを受けているらしいからなーあの国。


 面倒なので俺に関わらないならスルーしてやるし、何よりこの国に派遣してくれたことにはいちおう感謝しているのだ。


 ──王様が俺を受け入れニートライフをそれなりにさせてくれている、それだけでも充分に嬉しいわけなんだよ。


「しかし、そろそろ自分で闘ってみるか? その方が自分のためだぞ」


「……オレだって、自分の力で闘いてぇけどよ。このままじゃ間に合わなくなっちまう」


「じゃあ、まだいいや(・・・・・)


 魔物の声は届かない。

 元素魔法で風の結界を生み、完全にシャットアウトしていた。


 自分は『検索』で把握した魔物に向け、和弓女子のスキル(必中)を用いて矢を放つ。


 魔力で生みだした矢はスキルの力を受け、軌道を変えてどこかへ飛んでいく。

 そして脳内地図から魔物を示す点が一つ、また一つと消える。


 薄ーく伸ばした(異空間収納)スキルでできた空間が魔物を自動的に格納するため、本当にゲーム感覚で魔物たちを殲滅できるという寸法だ。


「さぁ、次の階層に行くぞ。まだ魔力は掴めないが、居るんだろ?」


「あ、ああ……って走んなよ!」


 成長すれば楽しめる点は、第三王女と同じなので飽きはしない。

 追い風を吹かせて急ぎつつ、シスコン王女と絶妙な距離を取って走っていく。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 どんだけ深いんだよ、と思ったが最大階層数が七十なことなど最初から分かっていた。


 だけど三十を超えていればすべて中迷宮なので、もっと早く終わると考えれば……実際は全然終わらない。


「そろそろ七十なんだが……姉はいったいどこに居るんだか」


「今より下って気しかしねぇ。けどまぁ、踏破すればいいんじゃねぇのか?」


「こういうとき、俺の世界だと二パターンの未来が存在する──まだ隠された階層が存在しているか、人工的に用意された階層が用意されているかだ」


 前者なんか、特にヒ……ヒメノ君なんかが当て嵌まりそうだな。

 洗脳で弄ったが復讐者だし、ヒロインを見つけてハーレムライフの真っ最中だろうし。


 後者も後者でユウキとかにありそうだ。

 陰謀に溢れた人造階層で、ヒロインを救うために死闘を繰り広げる……サブカルは範囲が広すぎて、こういう想像がだいたい思いついてしまうな。


「つまり、下があるってことか?」


「守護者をスルーしておけば、最後の場所は安全地帯になる。なら、入り口の前かその先に細工をしておけば、穴でもなんでも掘って広い場所が確保できるだろ」


 ゲームではほぼできないけど、ゲーム世界が本物になった話などでは穴を掘るなど貫通系の攻略が行われた場合もあったわけだし。


 ちなみにこの世界の迷宮も、いくつかの条件の一つを満たせれば破壊できる。

 今回それをやらないのは、いちおうでも第一王女の安全を確保するためだ。


 ……経験値稼ぎのためじゃ、ないんだぞ。


「で、理由がシスコンの勘ってだけで潜ってる俺たちはかなりヤバい。どうせ普通の冒険者も居るのに、隠さないわけがない。勘が場所まで当てれるならまだしも、なんとなく下ぐらいだと頼れないな」


「うぐぐぐっ……」


「何がヤバいかって言うと、そもそも不法侵入の奴が居るから普通の脱出はできない。登録ぐらいしてりゃあよかったんだが……アイツもやってなかったしな」


 王族で冒険者、なんてことをやっている暇も無かったわけだ。


 冒険者ギルドに職業を変えられる水晶的な物があるならともかく、この世界ではそういう仕組みは神話でしか存在しない。


 ……まあ、説明は面倒なのでまったくやる気がないけど。

 ただ言っておけば、行動経験や特殊な儀式で就けるモノなどそこら辺はゲームっぽい。


「帰る時もアレで出ればいいだろ」


「いちおう犯罪だからな。お前、王族なのに適当だな」


「う、うるせぇ! それよりほら、早く助けに行くぞ!」


「へいへい、畏まりましたよ」


 ──そして俺たちは、最終層へ辿り着く。



では、また一月後に

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