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少女を拾おう

注):一部ナニカを削る文章があります



 ドスンという音と共に、ソレは天から降り注いでいく。


 初めに見たのは少年、顔中の穴という穴から血を吹きだして苦しんで死んだ少年の死体だった。

 次に見たのは少女、180°回転した顔から泡を吹きだした少女の死体だった。


 その次に見たのは──見たのは──見たのは──見たのは見たのはミタのはミタのはみたのはみたのは少年の少年の少女の少年しょうねんしょうねんしょうじょの死体死体死体シタイシタイシタイしたいしたいしたい……屍體(したい)だった。


「肉の雨ってのは、まさにこのことだな」


 全部死体が子供なのが気になるが、どれも変わらず下半身の穴から血を出したり白い液体が漏れていたり……まさに、人形扱いな部分は共通点だな。


「まだクラスメイトに、死霊系の魔法を使える奴はいなかったからなー。そういうイベントは、もう少し後だったか」


 それがあれば、これを都合よく使役できたところだったんだが……惜しい。


 どれもこれも中途半端なスキルの持ち主だが、あとでコピーして束ねれば使い勝手も良くなりそうだ。


「というか、これ全部死んでるのか。聖人様も満足するのに、供物が必要なのかね?」


 ボコボコと漏れ出す、ホワイトスライムが何よりの証拠だ。

 聖人ではなく性人だよな、これだと。




「……ん? あっ、しぶといのが一人」


 死骸の山を歩いていると、微かに気配を感じ取る。

 あまりに弱々しく、捜しだすのに苦労したが……どうにか見つけた。


 真っ白な肌や髪、だが痛々しいほどに体中に傷や火傷、凍傷を受けた少女。

 体は中も外もズタボロで、死にかけとか虫の息という言葉がよく似合う。


「やるだけやっといて、ヤりはしなかったみたいだな。中に毒も入れてあるみたいだし、自分が感染するのが嫌だったのか」


 俺の声が聞こえているかどうか、それすらも定かではない。

 ただ虚ろな眼で天を見上げ、呆然としているだけ。


 か細い声とも言えない呼吸音は、少しずつ小さくなっていく。


「…………まあ、やっと見つけた生きたサンプル。とりあえず生かしておくか」


 体を完治させるために『白の矢』を構え、心臓の辺りに打ち込む。

 循環する血液を浄化することもできるし、まあ体はこれでどうにかなる。


 回復の効果も目に見えるほどに発揮され、白い肌は白一色に、か細い呼吸音も安定していった。


「『抑圧』。これで心もとりあえずだな」


 一時的な記憶の封印を行い、事情聴取ぐらいは可能な状態にしておく。

 どうせロクなことをされていないだろうから、スルーを選択だ。


「それじゃあ次は……って、もうかよ」


 少女の回復が、ではない。

 先ほどの男二人が、また戻ってきたのだ。


「どうでもいいし、面倒だな──さっさと終わらせるか」


 透明な矢を取りだし、弓に番える。

 同時に矢の中へ付与魔法である魔法を付与し、その瞬間を待つ。


「さて、仕事をしますぶぅう」

「お、おい、どうしたんどぉぶ」


 ちゃんと(手加減)と(必中)を使ったので、死んでいるということはない。

 精神魔法で昏睡状態に陥れた、これで自由に操れる。


「さて、どういった設定にするか」


 ゆっくりと気絶した二人の男へ近づき、頭に触れて魔法をかけていく。






「よぉ、目が覚めたか?」


「あ……た、……れ?」


「貴方は誰、か。俺はスパイ、この国に潜入したとある国のスパイだ。この国の闇を調べようと教会に潜りこんだら、ここに辿り着いたってわけだ」


「……ぱい?」


 少女の意識が覚醒した。

 思考が俺だけに集中するように制御しながら、同時に催眠をかけていく。


「お前は上から落ちてきた。たくさんの人間といっしょに。全員が嬲られるように殺されていた。お前だけが生きている。さぁ、何か覚えていることは?」


「……たし、……け……の? ……ャ、……ナは……こ?」


「友人の名前か。たしかにここにいる」


「……こ、……こ……なの!?」


「お前が座るこの山のどこか、死骸の中の二人がお前の友人だ」


 思考制御を解除し、逆に意識を鮮明にさせていく。

 地面だと思っていた物は男の顔、手を着いていた場所にはねばっとした白い液体。


 記憶の蓋もゆっくりと開かせる。

 そのとき何があったか、否が応でも思いださせていく。


「……あ、あぁ、あぁぁ。────ッ!!」


 声にならない悲鳴が空間内に木霊する。

 全身を使い呻き、嘆き、憤っていく。

 なぜこんな目に、どうしてあんなことを、いったいそれはなんだったのかを。


 答えは出たのか出なかったのか。

 慟哭に涙を枯らし、力尽きた少女の想いなど俺にはさっぱり分からない。


 自殺や自傷行為は無意識で行わないように刻んでいたので、少女はそれを涙という形で晴らそうとした。


 結果、過剰なストレスのせいで透明な滴は紅の物になっていたが、泣けるだけまだマシだと言えよう。


「本当に何も感じられない奴ってのは、涙すら流せないんだから」


 俺? もちろん涙ぐらい流せるさ。

 というよりいつも流しているぞ、ベッドに居る時とか風呂に入るといつも流すんだよ。


「さて、できるなら自ら俺の計画に乗ってくれるとありがたいんだけど……こればかりは縛るとあとで壊れるしな。自分で受け入れたという意識が必要だし」


 少女を持ち上げ、死骸の山から下りる。

 とりあえずこの場所に居る必要は無くなったし、さっさと次の段階に移行だ。



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