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交渉をしよう



 ──そして、俺は王の間に居る。


 えっ、奴隷のことが気になるって?

 本当に必要になれば分かるし、そうじゃないならそれだけの存在だったってことで充分だろう。


 あれから数日が経過し、奴隷屋で視た面白いスキルのコピーもだいたいできた。


 いやはや、お蔭様で手札が増えましたよ。

 やっぱりスキルってのは、多いに越したことはないな。


 そんなこんなでゆっくりまったりライフに充実感を覚え始めたある日、再びこの国の王に呼び出された。


 理由は……思い当たることが多すぎて分からなかったが、行けば分かるだろう──そんな風に考えていた。


「イム様はどのような方が好みですかな?」


「……はい?」


 挨拶の作法などを取ってから、会話を始めた第一声がこれである。

 疑問符を発声してしまった俺にも、今回ばかりは何の罪も無いと思うよ。


「これまでのイム様の功績を鑑みまして……何もこの国から礼をしないと言うのは、少々問題がありますので」


「そうですか……しかし、残念ながら私には将来を誓った者がおります」


「ほう。それは、共にこの世界へとやって来た者の中に?」


「……いえ、元の世界できっと私を待っていてくれていたでしょう。この世界と向こうの世界の時間の流れに関する情報が無いので、彼女が今も私を待っているとは限らないのですけど……女々しいですよね?」


 ん? 俺にそんなヒロインみたいな存在がいるかどうかだって?

 これは、意外と本当にいるんだよ。


 召喚された日にさ、ちょうどお使いを頼まれていたんだよ。

 何でもコンビニ限定のレアなお菓子が出たとかで。


 アイツ、なかなか外に出てこないから……きっと待ってくれていたんだろうな。

 俺が居ないならいないで、ネットか他の家族を使って買いに行かせただろうけど。


 まあ、そんな俺の家族構成(イモウト)に関する話は置いておくとして……今はお礼の話だな。


「そ、そんなことはありませんぞ。きっと、イム様もいずれ元の世界にお帰りになることができるでしょう。どうかそれまでの間だけでも宜しいので、ぜひともお力を貸していただきたいのです」


「申し訳ありません。ですので、お礼を頂けるとするのならば、女性関係のものは控えてほしいですね。……元の世界に戻った時、彼女になんと言われるか分かったものではありませんので」


「…………そう、ですな。ではイム様、何かご要望の物はありますか? こちらで用意が可能な限り、直ぐにでも用意いたしますが」


「それはありがたいですね。ですが、あまりそちらに迷惑を掛けると言うのも、好ましくありませんので……やはり、これからも仲良くしていく、それだけで礼としては十分だと思いませんか? ……個人的に(・・・・)


 最後の部分をわざと強調するようにして告げると、王の演技がほんの少しだけ歪んだように見える。


 奴隷商人と言い、王様と言い……本当に顔芸がなかなか達者なヤツばっかりだな。


「そうですな。我が国としても、イム様がた(・・)とは友好な関係を築きたいものです」


「ええ、いろいろとお世話になっていますので、ぜひともそうしてほしいですね」


「しかし、友好と言われましても様々な形がありまして……イム様はどのような物を想定なさっているのですかな?」


「いえ、ただの子供の妄想なんですが──」


 それからしばらく、交渉は続いた。


  ◆   □  自 室  □   ◆


 まあ、その後はいろいろと話を進めて行ったわけだよ。


 奴隷を買ったのが決定的だったのかな?

 あのままだと、警戒レベルがもう一段階上がりそうだったのだ。


 だからこそ、さっきのあの場で少し早いが交渉を行った。

 ……再び例の監視員を付けられるのは、厄介だからな。


「……ふぅ。しかし、情報が足りていたから強引に通すことができたけど。俺みたいなただの学生に、こんな大事はなかなかできないだろうに……。次からは誰かに変わってもらおうっと」


 そのための駒でもあるのだ。

 俺が面倒だと思ったことを、俺の代わりに行ってくれる便利な存在。


 ソイツ自身がそれをどう思おうと、知ったことではない。

 俺の運命に組み込まれた存在ならば、それなりに働いて貰わないと割に合わないしな。


「やっぱり、持ってて良かった(交渉)だな」


 クラスメイトの一人が持っていたスキルである──(交渉)。


 本来は魔物と対話するため、召喚魔法スキルから派生したモノなのだが……人相手にも使えるので、ああした面倒な外交の場でも活用している。


 これが無かったら、そもそも俺みたいな奴が自信を持って王相手にペラペラと詭弁を語れるはずが無いじゃないか。


「さて、これである程度の自由は確保できたし、これからどうするかな? 奴隷はとりあえずで仕舞ったまんまだし、場所を確保できたら取りだすとして……いつまで掛かるか分からないしな」


 ベッドの上で転がりながら、ぶつぶつと情報を纏めていく。


「【停導士】で導くのは簡単だけど、どいつもクセがある気がするし……結局面倒なんだよな~。でも、一度やればあとが楽って言うし、やるしかないか」


 交渉の結果、家を貰えることになった。

 とりあえずそれなりにデカいのと注文したので、奴隷を働かせてののんびりライフも可能となるだろう。


 だが、その前に奴隷との契約がまだ済んでいないのだ。


 少し前に奴隷関連の行動を行ったが、あくまでそれは衣食住や奴隷商人との追加商談などのことである。


 奴隷自体には、まだ契約を行うことすらしていないのだ。




 ──前にも言ったが契約には、いくつかの種類がある。


 そうしたことをその場で決めてしまうのも面倒だったので、後回しにしてしまった。

 ……うーん、どうしよっか?



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