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御呪いを掛けよう

のろいとまじないって漢字にしたらどっちも呪いだよね。



「……それでは、私はこれで」


「あんがとな」


 現在は連れていかれた部屋から、メイドが出ていくシーンだな。


 本当はいろいろと世話をするとか言っていたけど、自宅警備員に同僚は要らないので、スキルを試して追い出すことに成功した。


「便利なスキルだな、これ。催眠って結構幅があるしな」


 俺が発動させたのは催眠魔法。


 ──相手の意識を改変する魔法である。


 最初は催眠術的なことしかできない魔法だと思っていたのだが、少し違ったみたいだ。


 メイドを相手に試してみたところ──物事への理解力や刺激に対する反応を司る『清明度』、考え方を司る『質』、そして物事への集中力を司る『広がり』を操作できた。



 例えば『清明度』。

 それを操ると彼女は、自分が誰なのか何をしているのかが分からなくなっていた。


 例えば『質』。

 それを操ると彼女は、俺を主として崇めてくれた……気持ち悪くなって、すぐに嘘を吐かないぐらいの信頼度に調整したけど。


 例えば『広がり』。

 それを操ると彼女は、俺の言った通りの行動を取った。



 いろいろと試せたので、とりあえず彼女からは取れるだけの情報を盗った。

 まあ、盗れた情報の整理は後回しだな。


 メイドさんには、無意識に俺の命令を聞きたくなるような状態になってもらった。


「……今さらだが、この能力ってどこかの学園のレベル五みたいだな。俺はリモコン無しでもできるけど、アレみたいにどうやったら相手がどうなるかを設定するのも便利かも」


 さて、説明を続けよう。


 寝溜めができるようになる(過剰睡眠)と、意識を遮断する(意識遮断)。

 少し驚いたのは、(意識遮断)が他人にも発動が可能だったところかな?


 唯一スキルに内包されていたスキルは、だいたいこんな感じだ。


 通常スキルの方はそのまんまである。

 こっちの世界の奴らの言葉が分かる(言語理解)と、ステータスが見れる(鑑定)だ。


 そして【停導士】、スキルを内包するスキルにも効果がちゃんと存在していた。

 俺の配下が歩むはずであった運命を、俺の運命へと取り込むスキルらしい。


「……これがまったく分からない。そもそも運命なんてものを認識できるわけ無いだろうが。分かるように、[ログ]でも残せよ」


 ──なんて、わりかし本気でそう言うと。


  □   ◆   □   ◆   □


>【停導士】発動

→『ミル』の運命を導くことに成功しました


 ※以後ログは自動的に表示されます

[このログは発動者にしか認識できません]


  □   ◆   □   ◆   □


「……ゲームかよ。さっすが異世界ファンタジーだな」


 ミルというのは、メイドの名前だ。

 先ほど狂信的にさせたとき、自分から言っていたのでほぼ間違いないだろう。


「俺の運命って何なんだろう? 停が付くぐらいだから停止したナニカなんだろうが……俺の性根でも表してるのか?」


 俺はだいたいのモノへのやる気が無い。

 むしろ、どうして他の奴らがやる気に溢れることができるのか、分からなくなることが多いぐらいだ。


 何もしなくても人は生きていけるのに。

 何もしないならば何も起こらないのに。

 何もしなければ何でもできるのに。


 最後のはちょっと難しいか?

 まっ、理解してもらう気も無いから良いんだけどな。



 閑話休題(どうでもいいし)



 とにかく、そんな俺の運命って何なんだろうな……餓死か?


「……とりあえず寝溜めするか」


 面倒なことを考えるのは止めだ。

 さっさと寝るとするか。


  ◆   □  翌 日  □   ◆


「では、さっそく向かうぞ!」


『はいっ!』


 いきなりだが、俺達は迷宮(ダンジョン)に居る。


 むしろ、これより前の説明がいるか?

 朝食を食って、ステータスを見られて、訓練という名のレベリングに駆り出されただけである。


 ……えっ、ステータス?

 ああ、そこだけ説明が必要だな。


 朝食を食べた後に、俺達は一人一人呼ばれてステータスを開示させられた。

 呼ばれた個室にはメイド──鑑定のスキル持ち──が居て、俺の前に呼ばれた奴のスキルを紙に書き取っていたのだ。


 ──もちろん、催眠で偽の情報を見せた。


 面白かったのはあれだな。

 もう、その女がクラスメイトのスキルの影響下にあったことだな。


 たしか……リュウハン君だっけ? そいつのスキルである魅了の影響を受けていたよ。


 いやー、笑えた笑えた。

 自分用のメイドに俺のステータス鑑定は最後にして貰えるように指示しておいて、他の奴の情報を盗もうと思ってたんだが……まさか、ソイツが本当にやるとはな。


 R18の小説の主人公かよとも思ったが、あんまり俺が言っても意味ないよな。

 結局、その女も情報を盗るためにその魅了ごと上書きして催眠したんだから。


  □   ◆   □   ◆   □


>【停導士】発動 『クリス』の運命を導くことに成功しました


※『クリス』には『リュウハン』による魅了スキルの影響が確認されました

→影響を無効化しますか?


     〔YES〕/〔NO〕

→〔YES〕が選択されました


>『クリス』に確認されるスキルの影響を無効化します……成功しました


  □   ◆   □   ◆   □


 クラスメイトの名前なんて全然覚えていないが、リュウハン君とは縁がありそうだからな……覚えておこう。


 まあ、どういう字で書くのかまったく思いだせないんだけど。


 あっ、これが偽装ステータスな──


---------------------------------------------------------

ステータス

名前:イム・トショク(男)

種族:【異世界人Lv1】

職業:【睡眠士Lv1】


HP:100/100

MP:100/100


ATK:50

DEF:50

AGI:50

DEX:50

MIN:50

LUC:0


通常スキル

(言語理解)(鑑定)(過剰睡眠)


祝福

(地球神の加護)

---------------------------------------------------------


 ステータス自体は平均値だったから、そのまま書いてもらうことにした。


 それと職業も、この世界ではその職業に関するスキルが上がりやすくなるだけであり、必ず唯一スキルになるというわけでは無いことは訊いていたので……こうして適当な内容で報告させる。


 ──うん、我ながら素晴らしい考えだ。

 これなら騙されて、俺に眠りに関する叡智的なものを授けてくれるだろう。



 閑話休題(すいみんさいこう)



「──では第五班、出発だ」


『ハーイ』


 今回の迷宮攻略は、一班に俺たち六人+兵士たち二人……計八人配置したグループを五つ作って行われる。


 能力に期待を持たれる順に上の班に選ばれるのだが……当然俺のような雑魚は、弱者たちが集まった第五班へ選ばれた。


「よ、よろしくね、イム君」


「あ……ああ、うん。誰だっけ」


「『ヒデオ』だよ、イム君が人の名前を覚えるのが苦手なことは知ってるから、あんまり気にしないから」


「ふーん、よろしくな。ヒデオ」


「……いつまで覚えててくれるんだろうね」


 いや、たぶん忘れないと思うぞ。


 俺が名前を憶えてなかったのは、覚える理由が分からなかったからであって──お前のような成り上がり候補を、忘れるはずが無いじゃないか。


 ──そう、俺に話しかけてきたのは能力値が一だったという苛められっ子であった。

 その能力値から下の班に回されたのだ……やれやれ、ひどいことをするものだ。


「だけど、僕みたいな奴でも生き残れるのかな? このステータスだと、ちょっと不安になってくるよ」


「たぶん大丈夫だろ。お前、もしかして自分のステータスを見て、成り上がり主人公だと思わなかったか?」


「どど、どうしてそれを」


 いやいや、始まる前からニマニマしていた奴がどうしてそれを言うか。


 そうした様子があまりに気持ちが悪かったから、再び苛めっ子に苛められたのをもう忘れてしまったようだ。


 まだその跡が頬にくっきりと残っているのに……反省しない男だな。


「まあ、最近の流行だったら、お前にも希望があるんだよな。先に言うけど、俺は復讐対象に入れないでくれよ」


「う~ん……イム君は何も庇ってくれなかったからな~。どうしよっかな~?」


 こいつはきっと、面倒事を持ってきそうな奴になりそうだな。


 さっさと追い出した方が良いと思うが、無理に追い出して復讐対象に入れられても困るしな……そうだ。


「──なら、取引といこう。今のお前には力が足りないんだ。成り上がりのチートを手に入れる前に死なないような御呪いを、一つ授けてやろう」


「……もし、本当に役立ったなら、復讐対象に入れるのは止めておくよ」


「そうか、それで良い。それじゃあ俺の言うことを良く聞けよ────」


 この後、御呪いを掛けてから、俺たちは迷宮の中へ入っていった。

 えっ? それは本当に『お(まじな)い』か? 俺が知りたいよ。



さて、ルビを振らずに丁寧語を付けただけ。

主人公が掛けたのはどっちだろうか?

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