料理を作ろう
皆さん、お待たせしました!
今年もよろしくお願いします!
サリスと名乗る少女を引き連れて、戦場となる異空間を彷徨っていく。
俺の初期地点は、いちおう戦場から離れていた場所だった。
なのでそういった場所を探し、時間を潰すことにしたのだ。
「しばらくすれば、勝手に終わるんだな?」
「は、はい! ここは本来の空間とは異なる時間の速さで進んでいる? らしくて、ここで三日間に居ると、いつの間にか出られるようになります」
「ふーん……ならやっぱり、何もしないで隠れているのが一番だな」
「えっ、えーーー! そ、そんなことしたら神様の裁きが……もう無いんでしたっけ?」
そう、そのリスクは俺が偽装した。
なのでもともとそういう問題がない俺、そしてその問題が解決したサリスなので、別に逃げてもリスクは無い。
「というわけで──土魔法でそいやっと」
「い、いきなり建物が……って、こういうときはもっと小さい方が……」
「考えてみろ。暮らしづらい洞穴と、住みやすい建物……どっちがいいんだ?」
「…………えっと、住みやすい方で」
元素魔法で土木を操り、現代風の建物を生み出す……まあ、俺が住んでいた実家だな。
それの方がイメージしやすかったので、すぐに生み出せたのだ。
「とりあえず、中に入ってみるか?」
「は、はい…………見たことのない様式ですね。えっと、どういう場所なんですか?」
「まあ、俺の住んでいる場所だよ。とりあえずほら、上がっていけ。ああ、靴は脱いでおいてほしい。……魔道具を渡しておくから、その中に入れておいてくれ」
「え、えっと……失礼します! ま、魔道具は自分の物があるので大丈夫です! ……靴は初めて入れますけど」
この世界の奴らは建物の中でも靴を履いているので、そんな経験が無いんだよな。
魔道具を持っているのは、いちおう予想はしていた……選ばれた【英雄】だし。
「しばらくはここに居る。まあ、魔法とかスキルで隠しておくから一日ぐらいならどうにかなるだろう。えっと……サリスだったな、少しゆっくりしていろ」
「な、何かしなければならないことは?」
「いや、別にないぞ……好きにしろ。やることもないし、暇なら外に行っていてもいい」
「イ、イムさんはどうするんですか?」
自分でも想像していなかったことだが、どうやら染み付いた経験が俺を動かしている。
足が勝手に動き、目的の場所で体をテキパキと慣れた仕草で使いこなす。
「──ん? 料理だけど」
「りょ、料理!?」
「まあ、こっちだとスキルがあるから簡単にできるんだよな……それでも少し時間が掛かるから、ちょっと待っててくれよ」
「え、えーと……わ、分かりました?」
疑問形な気もするが、まあ別にいい。
魔物の素材は美味しいので、ある効果も期待してちゃっちゃと料理を完成させる。
「はい、できた──どうぞ食べてくれ」
「は、早すぎませんか!?」
「ん? まあ、時魔法でここだけを早くしているからな。ちなみに、言葉が普通に聞こえているのは逆にゆっくりにして調整しているからだぞ──ほら、好きなだけ食べてくれ」
「す、凄い、こんなに一瞬で……」
俺としても驚いているけどな。
今までは創意工夫で誤魔化していたが、それでも同じレパートリーを繰り返したりするだけで限界を迎えていた。
だが、こっちの世界だと料理スキルを所持しているだけで、食べた料理の作り方などがなんとなく分かるようになる。
あと、料理本を読むだけで同じように理解できるみたいだな。
メシマズ属性でも無い限りは、最低限食える物は作れるようになる。
そんなこんなで、この世界の料理や地球の料理を再現した品を並べていく。
うちの奴隷たちに何度も試させ、嗜好なども試したうえでの料理の数々だ。
「嫌でも飲み物だけでもいいからな。毒とかは盛っていないから安心してくれ」
「あっ、ご心配なく。状態異常を無効化する魔道具を家から貰っています!」
「そうか? 空間拡張系の魔道具といい、その魔道具といい……意外と恵まれているな」
「そ、そうですか? ……あっ、美味しい」
味に関しても、レシピ通りに作ればバッチリなように試させた。
満足度もそれなりの料理……どうやら気に入ってもらえたようだ。
次々と口に入っていく料理の数々。
その一つに一喜一憂してくれるそのさまを見るのは……だいぶ久しぶりである。
「ちなみにだが、付与魔法もしてあるから食べていいことばかりだぞ」
「ふ、付与魔法……ですか?」
「素材の状態で一回、料理完成後にもう一回できるからな。よく分からんが、一流の付与士には料理もセットでやっているらしい」
「ほへ~、知りませんでした」
戦争などでは、よく使っていたらしい。
付与した魔力を維持したまま、料理を完成させるのは難しいのだとか。
それでもそれができるのは、出来る奴からスキルをコピーしたからだな。
ついでに技術も参考にさせてもらい、できるようにしたわけだ。
「美味しいうえに、ステータスに補正を加えることもできる。ちょっと面倒臭いが……それでもやる価値があるだろう?」
「え、えっと……そ、それでも、どうしてイムさんが作ってくれたか分からないんですけど……どうしてですか?」
「…………染み付いたクセだ」
本当に、どうしようもないクセだな。
もうこっちに、妹はいないのに……。
──うん、今度は催眠で忘れておこうか。
それでは、また一月後に!
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