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的外れな催眠チート ~面倒臭がりが召喚されました~  作者: 山田 武
大きな戦いに挑もう

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おかわりをしよう

皆さん、お待たせしました!



「ハァ……やっと独りになれた」


 魔王との非常食トークを終え、ゆっくりと食べる時間を確保できる。


 本来であれば結界を使い、辺りと隔絶させることもできたのだが……さすがにそれをやると、魔王が介入してきそうなので止めた。


「野菜も旨いんだな……あんまり食いたくはないが、やっぱり栄養は補給しないとな」


 催眠で味を誤魔化すことはできるが、摂取する栄養まで誤魔化すのは……面倒臭い。


 この世界では魔力という概念があり、それにも栄養が存在する──取り込んだ際にその調整を行うことで肉体を健全に維持できる。


「はむはむ……お前もどうだ?」


「…………頂こう、肉をな」


「あいよっ、ほれ」


 俺は自分用に運んできたコンロから、肉のみを刺していた串をその者──ドラゴンに差しだす。


 物怖じせず受け取ったそれを頬張ると、しばらくその味を噛み締めて一言──


「旨いな」


「そうか」


「…………」


「…………」


 俺から何か言いたいことはない。

 だがドラゴンは何か言いたいようで……肉串を食べ終わってから、ようやくその内容について話す。


「貴様は……」


「ん?」


「貴様は……魔王様に仇なす敵か?」


「別に。俺はそうだな……居候だな」


 真面目に訊ねてきているようだが、それに答える必要などまったくない。

 ましてや、敵かどうかなんて……そんなもの、状況によりにけりだろうに。


「居候、だと?」


「この領地に転がり込んできた、ただの人族だ。特別悪さを企んでいるわけでもない……自分の居る場所をよくするために、日常的な行動を改善のために費やしているだけだ」


「…………」


「お前がどう思っているかは分からないが、やっていることはあくまで自分の住処の整理整頓と──火の粉を払うだけだ」


 催眠と精神操作をするだけでも、それなりに面倒事への対処ができるわけだし。

 物理的な面倒事以外であれば、俺ではない者──奴隷たちに任せればどうとでもなる。


「おっと、敵かどうかって話だったよな。まず第一に、俺は魔王を殺したいとか召喚者の願いに応えたいとか……そんなくっだらないことに興味はない。ただ自分が楽をできる生き方ができればそれでいい」


「そうなのか?」


「魔王は俺に都合のいい住処をくれた。だからその分は働いて恩を返しているし、言うことも聞いている。忠誠を誓っているわけじゃないってことは、理解してもらいたいな」


 ここは誤解されては困るところだ。

 俺はいつでも裏切れる立場であり、魔王とは同盟関係のようなものだということを認識していなければ勘違いが生じるだろう。


「──そういうことでいいか? 他の四天王たちも」


『……ッ!』


「……気づいていたか。いや、そのうえで語り続けてくれていたのか」


「言っておかないと、必要以上にビクビクされそうだからな。ちなみにだが、俺は異世界人たちを傷つけられたら『仇をー!』なんて言うバカじゃないぞ。それに、邪魔をする気もないし……応援してやってもいい」


 ユウキの勇者ライフ、ヒ……ヒカキ君の復讐者ライフ。

 どちらに四天王が関わるか、それとも双方に関わるかもしれない……いずれにせよ、誰かしらは死ぬ可能性がある。


「カラスとか裏切り者とか、別にそういうのもどうでもいいからな。相応の対価さえくれるなら、どっちに情報を売ってもいい。強くなりたいなら、どっちの力にもなる……対価さえくれるならな」


「テメェッ!」


「ああ、オオカミか。いやだなぁ、安心しろよ。少なくとも今のアイツら……召喚した国に洗脳された奴らに払える対価なんてまったくないし、国にも用は無い。俺にそれを払えているのは、二人だけだ」


「二人だと!? 魔王様の他に、いったい誰に情報を……!」


 オオカミは俺の襟首を掴み、持ち上げる。

 どうやら、魔王以外にも協力していることが不満らしい……やれやれ、これが嫉妬というヤツなのか。


「これも誤解される原因か? 俺を受け入れた人族の国の王だ。これは魔王も知っていることだし、オオカミがどうこうする余地はこれっぽっちもない……おかわり(・・・・)?」


「なん……ぐむぅっ!」


 肉串を口の中へ押し込んだ。

 空間魔法で取り寄せた焼きたてほやほやのそれを抛り込んだため、その熱さに思わず俺の襟首を放した。


「魔王はいい取引相手だぞ? だが、人族の情報を網羅しているのか? 魔族の情報しか知らない異世界人を、召喚した国がどう判断するかぐらい分かれよ──それこそ、裏切る者の処分も含めて勇者どもが来るだろ」


「…………」


「イム殿、あまり責めてやらんでくれ」


「……まあ、いいけどな。このままだと、俺が悪役みたいになりそうだな……よし、一つ良いことを教えてやろうか」


 パチンと指を鳴らし、辺りを結界で囲い逃走不可能な状態にする。

 厳重な神聖結界なため、魔族である彼らには強行突破も難しいだろう。


 同時に、魔王の所へメッセージを送っておく──アイツだけは結界を抉じ開けられるので、何をするのかを予め伝えておかなければならない。


「それぞれ、結界を突破できたなら欲しいモノをくれてやるよ。クリアしたなら何をやるか教えるから、要らないならそのときに……おっと、魔王から返信だ」


 使い魔を送っていたのだが、メッセージの返事を持たせて返してくれた。

 その内容を受信し、四天王に伝えた。


 ──全員が嫌そうな顔を浮かべていたことだけ、ここに記しておこう。



それでは、また一月後に!

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