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盗賊勇者のプロローグ  作者: 利苗 誓
第1章 異世界の日常編
3/9

第2話 獣の洗礼

間の取り方が分からなかったので軽薄な感じになってしまいました。

すみません。


「今のところ何も怪しいものは見えませんが警戒してくださいね」

「分かった」


 今俺たちはどこにいるんだろうか。

 いや、森のどこにいるかといった問題ではなく。異世界においてどこに位置しているかという問題だ。森を抜けた先が異世界での端にあたっているかもしれない。こればかりは当て推量で進むしかない。

 そうして周囲を見渡しつつも慎重に森を進み抜ける。


「苔が多いですね……」

「そうだな」


 苔の多い森だった。


「そういえば苔が多いところは北側の確率が高いって聞いたことありますよ」

「日が当たりにくいからか?」

「はい、らしいです。ですのでもし偶然森が安全で、森を抜けた先が北端とかだったら苔のない方向を目指しましょう」

「なるほど、物知りだな」

「どうも」


 褒められた。実際苔があろうがなかろうが今はあまり関係ないような気もするが雑学や雑談を挟むことでお互いの気を安定させようといった考えもあった。

 そんな俺の心中を察してか否か、リンナはふと立ち止まり、猫耳をぴくぴくと動かした。


「……滝の音がする」

「? 滝の音ですか? 僕は何も聞こえないですけど。川のせせらぎくらいしか聞こえないです」


 川自体は至る所で見られた。だが近くに滝があるような音はしなかった。

 リンナはぴくぴくと動かしていた猫耳をピンと立て、ある方向を見据えた。


「いや、間違いない。もしかしたら獣人になったことが原因で聴覚や嗅覚が過敏になっているのかもしれない」

「そうかもしれませんね。正直僕はわからないです」

「ちょっと先に行ってくる!」


 リンナは俺の反応には耳も貸さない。


「えぇ!? ちょっと! 勝手に行かないで下さいよ!」

「ちょっと見てくるだけだから!」


 そしてリンナは見据えていた方向に一直線に、決河の勢いで飛び出した。えぇ……。

 あれよあれよという間にリンナは米粒のように小さくなった。

 速すぎる、およそ人間の速さではない。リンナは興奮してか、主観的にしか自分を見ることが出来ないからか、まだそのことに気付いていないようだ。


「異世界召喚の影響だろうなぁ……」


 俺はリンナの身体能力の異常な高さに溜め息をつく。


 異世界に来た現実世界の人間は猫も杓子も身体能力が著しく向上する、そんな展開の本を生前沢山読んでいたからか、異世界において身体が強化されるということを受け入れることは容易かった。

 異世界もののネタは大体現実世界の人間が強力な能力を得ている。それが異世界召喚における『常識』というやつだ。

 それとも何か他の理由・・・・があったりするのだろうか。まぁそんなこともないだろう。

 ということは、俺も身体能力やスペックが高いのかもしれない。


「それにしても滝なんかにあんなにはしゃいで……。川じゃダメなのか……? 」


 リンナの突然の行動に疑問を感じた。


「いや、でも……」


 しかし、よくよく考えてみれば、滝と川とでは大きな違いがあった。

 滝と川では何が違うのか。言うまでもなく、川と滝ではまず水量が著しく違う。

 飲み水としては川でも全く問題はないが滝になれば体を全身隈なく洗うことが出来る。

 川に寝そべって体を洗うわけにもいくまい。

 俺が昏倒したのは昨夜、日の高さから今はおそらく正午であると推測する。最低でも一日はお風呂に入っていない計算だ。

 リンナの言葉を信じると、リンナも一日はお風呂に入っていないことになる。髪もべたべたで、さぞかし洗いたい事だろう。

 異世界と現実世界に時差なんてものがあればその限りではないが。


「はぁ……仕方ないですね」


 俺はゆっくりとリンナの後を追う、しかしリンナには追いつかない程度のスピードで。

 リンナも女性だ。滝を見つけたことでテンションが上がり、お風呂代わりに入ろうとしているのかもしれない。

 ちょっと見てくるだけ、とはいったものの久々に体を洗えるとなれば、入っていてもおかしくない。女性はお風呂がお好き、リンナもお風呂が好きなのだろう。偏見かもしれないが。

 出歯亀だ、なんていわれもない罪を被せられるのは嫌だしね。


 そうしてリンナが駆け出した方向へゆっくりと歩く。


 鳥の声や川のせせらぎに耳を傾け、周囲の美しい自然の光景を眺めながら散歩し、リンナが飛び出してから5分が経過した。


 やはり美しい景色だ。近くで蝸牛かたつむりがノロノロと這っている。どうやら異世界でも蝸牛かたつむりはノロノロしているようだ。まぁこれしか見ていないが分からないが。

 そんな和やかな様子に息をつき、しばらく腰を休める。

 木に絡みつくつるや苔に無作為な自然の造形を感じる。なごむ。

 

 そんな和やかな雰囲気の中、ドタドタと何かがこちらに駆けてくる音が聞こえてきた。足音だ。

 しかし、音がおかしい。音がおかしいというか、数がおかしい。幾人もの足音が聞こえる。

 リンナが異世界の人間と仲良くなって連れてきているんだろうか? そう考えながら音のする方向に目を凝らしてみるとリンナがこちらに向かって駆けていた。やはり速い。


「……ん?」


 しかし、様子がおかしかった。リンナは必死そうな様子で走っている。


「助けて~………………」


 その悲壮な声は、俺に向かって駆けていることで段々と大きくなってくる。

 ドップラー効果がかかっているからか、いまいち必死さが伝わってこない。しかし、よくよく見てみると、イノシシのような動物が後方からリンナを追いかけていた。


「おぅ……」


 なんてものを連れてくるんだリンナさん……、そんなこと頼んでないっすよ。


 イノシシがリンナのスピードには追いつく様子は微塵も感じられない。が、執念深くリンナを追いかけている。これはヤバい。

 そう思った俺は即座に行動を開始した。樹の上に上るという行動を。

 助けるのじゃないのか、と思われそうだが異世界転移し、強靭な体躯になった(と思われる)からといってイノシシなんて全く倒せる気がしない。

 田舎でよくイノシシと遭遇することがあったからか、イノシシの恐ろしさはよくわかっている。ならここは逃げるしかないだろう。

 即座に樹の上に腰を掛けリンナを見守る。


「頑張って逃げ切って下さい、リンナ」

「てんめえぇぇー!」


 リンナは鬼のような表情で俺を睨み付け、俺のいる樹に狙いを定め駆けてきた。もしや俺の掛けている太枝に飛び乗るつもりではないだろうか。


「ちょっと! 二人で固まったらよくないですって!」

「うっせぇよ!」


 そしてリンナは俺の座っている樹のたもとまでやってきて、土を踏みしめ大きく跳躍した。

 そして、一回の跳躍で俺の腰かけていた太枝に乗った。ミシミシと枝が悲鳴を上げ、上に下にと大きく揺れる。


「あぁっ! ヤバい! ヤバいですって!なんで同じところ来るんですか! もっと下の枝行って下さいよ!」

「うっせぇ! レディーファーストだろ! お前が下の枝に行け!」

 

 そう言い張りリンナという女性は俺を落とそうと押してくる。


「ちょっ、ちょっと止めてください! 押さないで下さいって! ちょっ、枝が! 枝がミシミシ言ってますって! 嫌だあぁー! 生贄は嫌だー!」


 そうして押され押し合う何も生まない無為な時間は過ぎ、枝の悲鳴に気付いたリンナが押すのを止め、おかげで枝はゆっくりと元の状態に戻り、安定を取り戻した。

 暫く静謐な時間が過ぎ去り、俺もリンナもじっとイノシシを見下ろす。イノシシは呆けた顔で、何も動こうとしない。


「ふぅ……なんとかなったな」

「なんとかなったな、じゃないですよ! 何やってんですか! アホなんですか!」


 ついリンナの呑気な呟きに声を荒げてしまった。


「あ、アホとはなんだ、アホとは! そんな言い草はねぇだろ!」

「アホはアホですよ! アーホ! アーホ!」

「こんのくそ野草がぁー!」

「くそ野草じゃないですから! せめてくそ野郎にしてくださいよ!」


 リンナはまた俺を突き落とそうとしてくる。野草は故意になのか、噛んだだけなのか。


「ちょっと! 話をちゃんと聞いてくださいって!」


 俺はバカ女を揺さぶり、正気に戻そうとする。

 身体的に揺さぶったことが影響したのか、リンナはようやく正気を取り戻した。


「はぁ……はぁ…………ん、わ……、悪いな……」


 ようやく落ち着いて話を聞いてくれた……。取り敢えずイノシシに動きはない今、戦略を立てるべきだ。


「今僕たちは膠着状態です。リンナさんの連れてきたイノシシのせいで降りようにも降りれません、どうしますか?」

「いちいち嫌みな奴だ。イノシシは木を登れないのか?」

「……生前の現実世界は登れなかったはずです。僕も田舎出身で木の上でイノシシをやり過ごしたこともありました。リンナは田舎出身なのに知らないんですか?」

「お生憎様イノシシに追われるような破天荒な人生は送ってないな」


 一理あった。

 だが、どうしようか。異世界のイノシシが木に登れないのかもわからない。突然筋骨隆々な手足がムキムキと生えてきて、木登りを始める可能性も絶無とは言えない。


「どうしますかねぇ……」


 思考に思考を重ねていると、諦めたのか、イノシシが帰っていった。

 良かった、なんだかんだいって結局はなんとかなるもんだな。そして俺が降りようかと考え始めたその時、イノシシが途中で立ち止まった。

 そして、こちらを振り向いた。怖い。

 イノシシはそこで動かずこちらを見据えてくる。すると、光の粒子の奔流が突如イノシシに集まりだした。嫌な予感がする。


「ちょっと嫌な予感がするぞ……」

「奇遇ですね、僕もです」


 全然奇遇でも何でもないが。


 光の粒子が収斂を止めたその時、イノシシの体が、筋肉が、盛り上がった。少し逞しくなった気がする。

 すると予想通り、一段階大きくなったイノシシが脇目も降らずこちらに向かって突進してきた。

 

「ああぁっ! ヤバいヤバいですって! これヤバいやつですって!」

「どうする!? どうする!?」


 お互い混乱状態に陥ってしまいまともな思考が出来なくなった。小学生くらいの語彙力になってしまっている。

 

 そんな中でもイノシシは段々と近づいてくる。


「「ああああぁぁぁぁっ!」」


 賽は投げられた。イノシシは猛突進で俺たちのいる樹と衝突した。樹は衝突により、ゆさゆさと揺れ、多くの葉を落とす。

 枯れ葉の上に青々とした多くの枝葉が落ち、地面に新たな息吹を吹き込む。

 ……が、それだけであった。樹はひとしきり揺れた後少しずつ収まり、元のしっかりとした樹に戻った。衝突の前後で樹に差異は見られない。

 衝突により根元から樹が折れる、そんな光景を幻視したがそんな状況には程遠かった。


「……」

「……」


 そしてイノシシは何度も突進を繰り返してくるが樹はビクともしない。重ねて葉を落とすという結果が何度も訪れるだけであった。大きいサイズの樹を選んでよかった。

 そして俺たちを降ろす手段を失ったイノシシは恨みがましい様相で見上げている。

 はっはっは、どうだ、人間様の力を思い知ったか! 


「おいっ! ミライ! なんだこいつ全然危なくないぞ!」


 リンナも自分が安全と分かりイノシシを小馬鹿にする。


「ははははっ! 見たかぁ! イノシシごときめ!」


 テンションの上がるリンナは、はしゃいだ。それはそれはもう馬鹿みたいにはしゃぎました。

 そして、ミシミシと音を鳴らしていた太枝はついに俺とリンナの体重に耐え切れずポキリと折れた。

 いや、正確に言うとリンナがはしゃぎすぎたせいでポキリと折れた。

 あんなにも信頼感のあった枝がなんということでしょう、こんなに簡単に折れてしまいました。


「「え……」」


 唖然とした声に俺とリンナは落下する。


「嘘おおおぉぉぉ!?」


 信頼していた物に裏切られたリンナは金切り声を上げる。本当にお前はなんてことをするんだ。ロクなことをしやがらねぇ。


 落下した俺とリンナは油断なく着地し、即座にイノシシに目を向ける。

 イノシシはここぞとばかりに俺たちに、いや、俺に狙いを定めやってきた。

 

「なんでええぇ!?」


 俺は怨嗟の声と共にイノシシから逃げる。

 俺よりこいつの方が肉がのっていいっすよ! ほら! 俺男だし筋が多くて固いっすよ! ……いや、今はリンナが獣人であるからして俺の方が美味しいんだろうか。

 イノシシは、そんなことはお構いなしに速度を速めてくる。イノシシから逃げていると、木々の林立している場所に対面してしまい、逃げ場を失った。いや、失ったという言葉は適切ではない。逃走経路を選ぶことに逡巡した。

 イノシシはそんな俺の逡巡を見越してか、飛びかかってきた。

 自分の身体能力が分からない今、イノシシと戦闘を繰り広げるのは得策ではない。

 木々の間をすり抜けてこのイノシシを木にぶつけ、昏倒させる、それが今の俺に出来る最善策だ。そう考え、行動に移る。

 木々の間をすり抜けようとしたその瞬間、


「ミライ、危ない!」

 

 リンナが一喝と共に俺を突き飛ばした。くそっ! また余計なことを……、そう心中で悪態をつき、背後を振り返ろうと……。

 振り返ろうとしたが、イノシシはすでに俺の視界の中に飛び込んでいた。イノシシと俺の距離が離れすぎていた。

 視界がぼやけていた。脳に送られるデータの数がとんでもないことになっている。視界が脳の処理を後にする。

 彼我の距離が著しく離れていく。

 そこで漸く気付いた。あぁ……


「俺、ぶっ飛ばされてる……」


 思考が視界を取り込む速度に追いついたとき、俺は樹と衝突した。だが、しっかりと根を張った大木にも関わらず俺を受け止めることは出来ず、鉛筆のようにぽきりと折れる。

 二本目、三本目、四本目、と同様に樹と衝突し、木々は同じ結末を辿る。森林破壊もいいとこだ。

 そして薙ぎ倒す樹が八本目に達したとき、樹がようやく俺を受け止めた。

 そして、受け止められた樹に寄りかかり、俺はずるずると落下する。


 痛ぇ……? 肺が空気を吐き出し、衝撃により肋骨や背骨にもいくつかのヒビが入った。後頭部への衝撃からか、脳震盪の恐怖が頭をよぎる。視界は霞がかかったようにぼやけ、足にも力が入らない……。


 ……そんな末路は訪れなかった。

 実際には、体に何の後遺症も、それどころか擦り傷すら見られなかった。

 よかった、異世界で良かった。俺の身体能力も向上していて良かった。良かった尽くしだ。

 危うく異世界転移から一日もせずにまた命の灯を吹き消すところだった。

 だが、実際経験してみるとなかなかどうして、全能感を感じる。

 そんな感慨と共に自分の肢体を見ているとリンナがこちらに駆けてきた。


「あああぁぁ!」


 まだリンナは逃げていた。いや、これだけ人間をぶっ飛ばせる人間がまだ逃げているのか。

 自己評価が低いのか、正気を失っているのか。

 後ろからはイノシシが追いかけてきている。リンナは反撃のそぶりも見せない。仕方がないから俺が対応しよう、そうしよう。

 イノシシ程度ならどうにでもなるだろう、いや、なってもらわないと困る。

 俺は意を決してリンナに叫ぶ。


「俺の手に足をかけてください!」

「分かった!」 


 リンナが了解の声と共に大きく跳躍し、俺の掌に足を乗せたその時、力いっぱい上へと放り投げた。


「ええええええぇぇぇぇぇぇっっ!」


 そんな情けない悲鳴と共に、リンナ花火が上に打ちあがっていく。やはり身体能力が向上しているようだ。これで俺の腕がぽきりといったら笑い種ですらないが、上手くいったからよしとしよう。

 上空に放り投げられたリンナを見やり、リンナが落ちてくる時間を推測し、裂帛の気合と共にイノシシに駆けだした。


「うおおおおぉぉぉぉっ!」


 掌を握りしめ、イノシシと対峙する。駆けだした俺の速度は想像の数倍以上で、即座にイノシシとの距離を詰め、得られた加速度を十全に使い、イノシシに渾身の一撃をお見舞いした。

 刹那、イノシシの姿が眼前から消失した。消え去った。

 いや、消え去ったわけではなかった。イノシシは俺が感知できない程のスピードで後方に吹き飛ばされ、先程の俺と同じように、数々の木々を薙ぎ倒していた。いや、それ以上だった。


「嘘ぉ……」


 森林破壊……、人のことは言えなかった。予想の数百倍以上の距離を、イノシシが飛んでいく。


 だが、イノシシだけに気を取られるわけにもいかない。

 暫くはイノシシの恐怖がないであろうと考えた俺は、そろそろ落ちてくるだろうリンナを見上げる。リンナの姿を空に見つけた。

 

「すごい飛んでる……」


 自分の仕出かしたことに一抹の感想を抱き、そっと呟いた。が、即座に自らの失敗に思い至った。


 リンナをどう受け止めればいいのか分からない。いや、どこを触ればいいとかそういった性的な問題ではなく、この高さまで上がった人間をそのまま受け止めてしまっていいのかという問題だ。このタイミングで突然受け止めてしまったら最悪リンナの体が折れ曲がったりするのではないだろうか。

 リンナの臓物とこんにちは、するのは絶対に嫌だ。寝覚めが悪すぎる。

 そう考えた俺は跳躍し、近くの樹の太枝に飛び乗る。途中で蹴り飛ばしてそこらの木に着地点をずらそう。おそらくそれが最善策だ。

 暫く待って、リンナが自由落下してきた。


「うにゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 リンナは聞いたこともない金切り声で落ちてくる。ドップラー効果も相まって非常にうるさい。

 そして、彼我の距離を計算し、得られた強靭な体を生かし、跳躍。

 見事に空中でリンナを捉え、蹴り飛ばすことが出来た。


「ふっ…………!」


 リンナは肺の空気を吐き出したかのような声を漏らし、木々の上に落ちていく。普通に地面に落ちても問題なかったかもしれないが念のためだ。

 余計なことをして問題を二倍にも三倍にも増やされたことへのやり返しなどではない。決してそんなことはない。


 そして、がさがさという音と共にリンナが木々の布団に落ちた音がした。

 鳥たちが鳴きながらバサバサと羽ばたきどこかへと飛び去る。生前、漫画でよく見た光景をこんなところで目にするとは……。そんな益体もないことを考えながら樹から飛び降り、リンナの落ちた方向へ歩いて行った。


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