ウィッチ☆プリンセス 過去編 ~プロローグ~
ある休日の午後、私は算数の宿題で頭を悩ませている。
ぐれっちょんはというと、窓際で心地いい風に吹かれながらうとうとしてる。私はこんなに算数で悩んでいるのに、ほんとに呑気なんだからっ。
でもそれまで大人しくしていたぐれっちょんが、ふいに口を開いた。
「なぁ、美月…」
「ん~~?」
算数のプリントとにらめっこしていた私はぐれっちょんの呼び掛けに上の空で応える。
「お前よ、あいつのどこが好きなんだ?」
「ほへぇっ!?な、な、な、なっ、急に何よっ!」
思ってもいなかった質問に私の胸はどきっと高鳴って、頭が真っ白になっちゃったの!
急に何を言い出すのよ、このうさぎは!
顔を真っ赤にして慌てる私を横目で見つつ、ニヤリと口の端を釣り上げて笑う。
「いやいや~、ほらあいつって、無愛想だし、目付は悪いし、口は悪いわで、どこがいいんだと前々から思ってたんだよ」
「なっ、た、確かに隼人は目付は悪いし、口は悪いし、無愛想だけど、本当は凄くすっごく優しいんだからぁっ!」
ぐれっちょんの隼人に対する悪口についムキになって反論してしまう。私はずっと前から隼人と一緒にいるから、いっぱいいっぱい隼人のいいところ知ってるんだからね!
するとぐれっちょんはそんな私の反応が面白かったのか、声を押し殺して、くっくっくっと嫌味ったらしく笑ったの!
むー、なんて失礼なのっ!
「オレは"あいつ"と言っただけで、"隼人"なんて一言も言ってないぜぇ?お前って、ホント分かりやすいな」
「っっっ~~~~~~」
か、からかわれた…私の反応を見て楽しんでる!凄く腹が立つのに何も言い返せない自分が悔しい…。
でもそこでふと昔の懐かしい事を思い出したの…。隼人と初めて出会って…好きになった時の事…。
それにはママの辛い出来事も思い出さなきゃいけないけど、でも…ぐれっちょんになら話してもいいよね。
「隼人との出会いはね、私にとって忘れられない一番の思い出なんだぁ…」
懐かしさに目を細めて、ママがいる空を見つめると、ぐれっちょんもそれ以上からかう事もなく、同じように窓の外の空を見上げた…。