表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第17話.街から遠のくトジ




 すっかり日は落ち、空は真っ暗の中に浮かぶ灰色の雲で覆われていました。いつもなら大きな街でも人の姿は減り、明かりも消えていき、とても静かになっていく時間です。


 でも、今日は、違います。


 遠くからでも、雲がほんのり明るくなり、大きな街がそこにあるのがわかります。


 そこでは、普段夜には消してしまう街灯の明かりが灯されたままです。そして、今日のためだけに設置された街灯も煌々と灯されています。


 雪化粧された街の中の木々や、建物の壁、軒にも電気による明かりの帯が巻きつけられ、それぞれが白、赤、緑、黄色……何色もの光を放っています。それが各々瞬時に付いたり消えたりしているのです。


 それらの光はその場を照らすだけでなく、建物の壁や看板や飾り付けに使われている磨いたレンガやガラスに光が反射し、何倍にも広がりを見せています。


 街のどこを見てもキラキラ光っています。それを見に人々が集まってくるのです。集まった人々は各々手にランプを持っています。個々のランプの光は、それほど強くありませんが、人々と同じ数だけのランプが集まり、それそれが人々の動きと共に踊り、街全体に光の流れを作ってくれます。


 石畳が見えないほどに通る人々の顔は一様に明るく、みんな上を見上げています。明かりは足もとにはありません。


 みんな上を見上げて歩きます。


 あちこちから歌声、笑い声が聞こえ、所々で乾杯の音も聞かれます。今日は一晩中店も開いたままです。アルコールがどんどん振る舞われています。


 乾杯する時、大きなジョッキで飲む時、みんな上を見上げています。


 ある時間になると街の中央で楽団が素敵な生演奏もしてくれます。そのリズムにあわせて街灯の明かりも踊っているようです。これを楽しみにここに集まっている人も多く居るでしょう。楽団は一段高く作られた舞台の上で演奏しています。


 演奏を楽しみに来た者は、みんな上を見上げています。




 そんな華やいだ中、一人だけ下を見ている男がいました。


 そんな笑顔が溢れる中、一人だけ冷めた目をしている男がいました。


「これがクリスマスか。今がイブなのか。賑やかじゃないか。賑やかじゃないか」


 トジです。


 トジは二、三日前から、朝から晩までこの辺をぶらついていました。バイトではありませんでした。そして今日も、明るいうちは本気で遊んでいました。騒いでいました。楽しんでいました。


 それは去年もそうでした。去年はイブが明けて翌日まで、遊んでいました。今夜はそう言う夜。


 しかし、今年は日が沈むにつれて、なにをやっても楽しくなくなっていったのです。


「くそー、俺のせいじゃねぇ、俺が出来るわけねぇ。なんで俺がやらなきゃいけないんだよなぁ」


 言葉、歩く態度……一見タチの悪い酔っ払いのようです。


 イブの夜に、やけ酒をしている人なんて見たことありません。異様に目立っているトジに陽気な声をかけてくる人もいます。


「お! あんちゃん、なに暗い顔してんだぁってんの」


「どうしたのですか? なにか良いことが起きるのを信じるのがクリスマスなのですから、楽しくいきましょうよ」


 しかし、トジの反応のなさ、或いは睨み返すため、皆、それ以上相手にしてきません。


 ポツンと一人、ぶらつくトジです。




 空が完全に暗くなってしばらくした頃……電気の明かりの点滅、それを反射する多くの飾り付け、楽団の楽しい演奏……それらを更に盛り上げるように、空の灰色の雲のある空から、白い物が降り始めました。


「おー、雪だ!」


 一斉に歓声のような声があちらこちらで上がります。舞い降りる雪にも街の明かりが反射し、夜とは思えないような明るさになります。楽団の演奏にも力が入ります。その音に追われるようにトジはその街を離れていきました。その方向は自分の家の方向とは全く違います。


「今更、帰れないよな」


 トジは街の音がほとんど聞こえなくなるあたりまで進んでから、苦笑いしながら見上げて歩いていました。見上げても明かりも楽団も見えません。顔にゆっくり雪が降り注いでくるだけです。しばらく、自分の顔に次々迫ってくる雪を見ていました。雪の一つが目に入るまで……。




「はぁ」

「はぁ」


 それまで見上げていた首をうなだれながら大きなため息を吐きました。しかしため息はトジ以外、もう一つありました。


 街の中心を離れると、大きな街でも家はまばらです。街灯もほとんどありません。街の中心の明かりが雲や雪に反射し、この辺まで僅かに照らしていました。そのため、道の先にトジと同じようにうなだれている人影を見ることが出来ました。


 どうやら同時にため息したのはその人のようです。その人もトジに気がついたようです。




 トジは自分のことを棚に上げ素直に『イブに似合わない人だな』と感じてしまいました。その人もトジを見てそう感じたかも知れません。


「こんばんは」


 その男は苦笑いしながらそうトジに挨拶をしてきました。トジは『少しは気が紛れるかな』とその男の方に向かい、会話を続けました。


「こんばんは。……どうか、しましたか?」







前に書いたものを改稿して投稿させていただいているのですが、改稿しないといけない箇所が一杯出てきて……更新に時間が掛かってしまいました m(_ _)m 。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ