朝の登校の日常
どうも、只今全力疾走中の酒井郁斗です。なぜ全力疾走しているかというと……
「遅刻だぁぁぁぁぁっ!!」
入学式の今日、寝坊したからです…………。
いや、まさか俺も今日寝坊するとは思わなかったよ……。朝起きたら8時でなんやかんやで8時5分。入学式が8時20分に始まると思い出してからの俺の行動は速かった。
とりあえず直ぐに起きた俺は直ぐにに着替えた後、親の朝のの挨拶も無視して一気に家を出た。
忘れ物はしてないかとか、寝癖はついてないかとか不安な事はいっぱいあるがそんな事は今は気にしてはいられない。
今出せる限りの力で走っている。何故こんなに必死になっているかは言わなくても判るだろう。初日から遅刻した奴の印象は最悪だからだ。
これから学校生活を送るなかで第一印象は非常に重要である。
初日から…それも入学式という大事な式典に遅刻するなど普通はありえない。
このまま行けば高校生活初日から変な人、若しくは入学式に遅刻しても何とも思わない不良というレッテルを貼られてしまう。
「(それだけは駄目だ! 俺はこれから有意義な学校生活を送るんだ!!)」
とかなんとかそんな事を思っていると後ろから何かが自分を上回るスピードで走ってきた。
「よ〜、郁斗、なんだお前もギリギリかよ」
そう言って後ろから走ってくるのは俺の小学生からの友人の鈴本貴大である。
鈴本は中学時代、野球部で俊足好打でそれなりに有名だった男だ。足がめちゃ速くて体育大会の時も出たリレーの全てでアンカーを任される程である。
だから今も、俺は全力疾走だというのに軽く走りながらついてくる。
「な〜郁斗、どっかでジュース買おうぜ。めっちゃ喉乾いたわ…」
「買うかッ!!」
全くこいつは……、マイペースなのは昔から変わらないな……。
「たくっ!…もっと急げよ、遅刻しちまうぞ!!」
俺はコイツの軽さに多少イライラしながら答える。いつもだったらこんな事はないが今の俺は非常に機嫌が悪い。
「あー確かに…ちょっとやばいかもな……よしっ!」
「あっ、おい!」
そう言っていきなりスピードを上げる鈴本。
100m11秒代の俊足の鈴本には追い付いていくだけで精一杯である。
暫く走っていたらふとあることに気付く。
「おい、鈴本! 道間違ってね〜かッ!?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ、俺を信じろ」
「たくッ! しょーがねーな!」
俺はこいつの言う事を信じてスピードを緩めない。前の鈴本はギリギリ見える程度だ、100mは前を走っているだろう。
走り続けて足が限界に近付いた頃、前の鈴本が止まったのがわかった。
汗と疲れで周りが全然見えないが恐らく学校についたのだろう。
『間に合った』その喜びで元気がもどってくる。
だが汗を拭い視界を良くすると学校など見えなくてその代わりにコンビニが見えた。
「(あれ…何でコンビニに…まさか……)」
その結論にたどり着くと冷や汗が流れてくる。できれば当たって欲しくない予想だが、そんな希望を店から出て目の前に来た幼馴染みは打ち砕く。
「ほい郁斗、お前の分も買ってやったぜ…。とりあえず喉を潤してから学校を目指そう」
「馬鹿かァァァァッ!」
「痛ッ!…何をする郁斗?」
「何をする?…じゃねーよ!! 間に合う訳ねーだろーがこの馬鹿!!!」
「おいおい、やる前から諦めるのか? 見損なったぜ郁斗」
「うるせーよッ! もうツッコムのも面倒くせーよッ!!」
馬鹿と会話しているうちにどんどん時間は過ぎていく。
「くっそォォォォッ!不幸だーッ!!」
俺は涙を流しながら学校に向けて走り出すのだった。