プロローグ
暖かくなってきたが、まだ肌寒さが残る朝、俺は目を覚ました。今日から高校生になる訳だが別段楽しみにしていた訳じゃない。
春休みが終わるのやだな〜とか、中学よりちょっと遠いから早起きしなきゃじゃん、めんどくせ〜とかそんな事ぐらいしかおもっていない。
だが自分の人生にとってとても大きな1日になるだろうことはわかる。楽しみにしていた訳ではないが、これから新しい環境で上手くやっていけるのか、友達は出来るのかなどの不安があるのは事実だ。
「うぅん…」
窓のカーテンの隙間から差す朝日が俺の顔を照らす。
部屋には窓は1つしかない。俺が寝ている布団の近くにある窓だ。
俺の部屋はあんまり広くないので朝日が必然的に顔に当たってしまう。
ともかくその光を鬱陶しく感じた俺は、寝ていた布団にさらに顔も全部隠れるくらい潜った。昨日は夜遅くまで発売したばっかのゲームの攻略をしていたので眠いのである。
だけどそのせいで寝苦しくなって布団から顔を出すが、また顔に当たる朝日が眩しくて再び布団に潜る。
そんな事を繰り返している内に偶然視界の端に時計が映った。
そういえば部屋の時計見るのひさびさだな〜とか思っていた。春休みは基本的に寝ていたし時間は携帯で確認していたため部屋の時計の事などわすれていた。
「(まだ8時じゃねえか、もう少し寝れんな………え?…8時?)」
時計を見てもう一寝入りしようと思っていたが今の時間を確認して一気に顔が青ざめる。何かの間違いだと何度も目を擦って確認するが結果は一向に変わらないのだ。
「え?嘘でしょ、8時? いやいや何かの間違いだなこれは、うん。いやね8時とか無いわ、これはあれだ…多分夢だ。目が覚めたら多分7時くらいの筈だ。うん、そうに違いないね、てかそうじゃなかったらキレるね、うん…」
いや本当にね冗談きついわ全く、俺がこんなに大事な日にさ〜遅刻する訳ないじゃん。あ〜早く覚めねーかな〜この夢。
ブツブツと独り言を繰り返しながら布団を被り、なんとか現実逃避をしようとする。端から見たらかなり痛々しい人だがそんな事知ったことか!
布団の中でモゾモゾしながら独り言を繰り返している内に、近くにある机に足をぶつけてしまった。
「痛っ! っつ〜! 痛ってーなコノヤロー!!」
あ〜最悪だわ全く…、何で机に足ぶつけなきゃいけねんだよ……。それもこれもこのふざけた夢のせいだな……………ん?
あれ、ちょっと待て……何で夢なのに痛いんだ…?
自分でもわかるくらいに冷や汗がダラダラと流れているのがわかる。今着ているパジャマも既に冷や汗でびっしょりである。
「いやいやまさか…今のは何かの間違いだろ。……いや、今のは確かに痛かった…てことは」
そんな事を言いながらかなり流れる冷や汗の量はさらに量を増していく。
なんとか正気を保ち恐る恐る時計を見てみると時計の針は8時5分をさしていた。さっきの独り言だけで5分もロスしていたのだ。
「ちっ…遅刻だぁぁぁ!!」
今までアホな事を繰り返していた俺、酒井郁斗は大声で、この世の終わりの様な表情で叫んだ。