デモンズクエスト
ふう、やっとここまで来たかと僕は思う。僕は建井豊、今僕が達成感を感じているのはこのゲームを終盤のボス戦まですすめられたからだ。
今僕がやってるゲームはデモンズクェストというゲームだ。デモンズクェストとは、悪魔を倒す機関のエージェントになって黒魔術の儀式によって悪魔が跋扈した現代の都市を解放するというCA○CONのゲームだ。もう何十年も前になる高校生のころにやっていたメタルギアやバイオハザードが感覚的には近い。
なぜこのゲームを社会人になってやってるかといえば一言でいえばくだらないかもしれないが賭けたからだ。俺の友達にオカルトマニアがいて、デモンズクェストをやっているゲームユーザーがゲームをやっている最中にそのままこん睡状態になる事件が多発していると同じ会社のよしみで飲み屋に行ったときに言ったのが直接の原因だった。
「お前な社会人になってもやってるのか、そういうの。」
「高校のころから変わらないな、世の中そういう不思議なことがあってもおかしくないだろう。年間UFOが何万件見られていると思ってる。」
「UFOだなんてバカバカしい、一般人だって光の速度でも何百年もかかるのが宇宙ってことぐらい知ってる。UFOにのって地球にやってこれるぐらいならとっくに接触してるっての。」
「地球侵略が目的かもしれないだろ、この石頭。科学至上主義者のド常識人のつまらないやつが。そんなにいうなら絶対にないって証明してみろ。」
「ああいうさ、お前の言うデモンズクェストだったか、それを買ってやってやるさ。」
というのがデモンズクェストをやっている理由だ。我ながら冷静になれば下らないと思うものだが、それでも本人たちにとっては些細なことでもけんかになるのが人の世だ。
それに蘇我氏とか歴史上の偉人でも小学生レベルの喧嘩が元で政変につながったこともあるらしいし、恥ずかしいことでもなんでもない。
このかけを行ってから早速俺は、明日と明後日が土曜日と日曜日だったためその日の夜に買うと休日になってからゲームを始めてみた。
たかがゲームと馬鹿にしてたらこれが意外と面白い、ゲームに熱中した俺はそのまま親の家から仕事に通ってるため昼食と夕食を母親が呼びに来るのとトイレを除くと二日日間に一日中部屋の中にいるという快挙をやって見せた。高校受験や大学受験以来の出来事だ。かけは別としてもこれをやってみるのもよかったと思う。
まあそれはともかく、今俺はゲームをクリアしながらやっと最終面のラスボスの所まで来たわけだ。超高層ビルを拠点にする悪魔の親玉との戦いだが、まず負けるはずはないと思う。
ゲーム内で強力な武装はあらかた手に入れたし、弾丸の無限リロードや体力回復アイテムなども大量にそろえている。まず負けるはずはないだろう。
そんな思いをしながらゲームをやっているうちに俺は、突然意識を失った。そ
その翌日、いつもなら早起きするはずの息子がいつまでたっても起きないため同居している母親が起こしに行ってみると、息子は寝ているようだった。がどんな手段を使っても起きようとしない。
不審に思った母親は父親と相談したうえで、救急車を呼び運ばれた病院で原因不明のこん睡状態に陥っているということが判明した。
このこん睡状態の原因は全く不明だった。薬物を摂取されたわけでもないし、脳をMRIやCTで徹底的に調べても何の異常も見られない。ただ眠っているというのが唯一の問題だった。
これに医師は首をひねった。原因不明の奇病だったからだ。そしてその医師と同じように首をひねっているものが何人も全国にいた。
この症例が少ないため問題になっていないだけで全国には同様の症状の患者が何人も運び込まれている。
年齢、性別の異なる彼らの共通項はただ一つ。デモンズクェストをやったということだけ。まるで超自然現象だが、そんなものは現実にはない。
いつだって怖いのは人間の悪意なのだから。
とある高層マンションの一室。高層マンションといってもそのマンションは、お世辞にもきれいとは言えやしない。外壁は汚れていていかにもずたぼろだし、内も最悪だ。
おまけにセンチュリーマンションなどというふざけたマンションの名前と剥離している小奇麗な名前がついている。とはいえ一般人にとっては手の出せない住処であるのは間違いない。
そのマンションの一室では、男がパソコンを見ながらニタニタしていた。小太りの30代ぐらいの男で、窓を閉め切りパソコンの明かりに照らされながら笑みを浮かべているのは不気味の一言だ。
そのパソコンは一般に市販されているものではなく、CA○CONのゲーム開発部門の人間であるためパソコンに詳しい男が独自に作ったオーダーメイドパソコンで普通のものより多少演算能力が優れている。
そんなパソコンを使いながら男が見ているのは、ネット上の悪意の吹き溜まり。つまり2chといった匿名掲示板だった。
匿名掲示板は、ネットの抱える闇の中で最もたちが悪い。インターネット詐欺や出会い系サイトで出会った男に騙されるというよりもそのマイナスのエネルギーは大きい。
そこに書き込まれるのは、まとも内容のものもあるが大半は恨みや呪詛、怨恨といった人間の悪意を凝縮した発言を匿名であるのを盾にして現実には言えないようなダーティーな力を込めたものだ。普通の常識ある大人が書き込んでいる場合もあるのだから、人間が胸に秘めた悪意とは恐れ入るものだ。
そもそも他人を傷つけるといったことを大は戦争から、小はいじめといった問題まで行っている悪意の塊が人間なのだ。自分さえよければ他人がどうなろうが構わない、そんな人間の愚かさが噴出しになっている。
その男が見ているスレッドは、デモンズクェストをやった人間がこん睡に陥るというものだ。新聞やテレビといったマスメディアが取り上げていない問題もネットの世界では、簡単に溢れ出す。
それも中には、書き込んでいるものの中に個人的に男が調べてみたら看護師や医師がいるのだから守秘義務がいかになっていないかがわかる。
そのスレッドの内容とは、デモンズクェストをやった人間のこん睡の解明といっているが、実際はそんなまともな内容ではなく、こん睡状態になった人間をオタクやニートは必要としないなどのひやかしや明らかに悪意をむき出しにした遺族が聞いたら卒倒したり憤慨するようなものばかりだ。
それを見ながら男は満足し、さらに笑みを深める。何故ならデモンズクェストをやった人間がこん睡状態に陥るのは、この男が仕向けた男だからだ。
動機は社会への復讐、昔その男は小学校、中学校、高校と徹底的に連続していじめの被害にあい、大学でコンピューター技術を学んで社会に出てCA○CONに就職した後も仕事の能力を優秀なはずなのに評価されないという身勝手な思いからだ。
手段は、サブリミナル効果というものだ。大学時代で男は電子化を先行したが、それ以外にも心理学科などの授業や講演によく顔を出したからこそできたことだ。
サブリミナル効果とは、例えばテレビやコンピューターに流れる画像の一コマに人間が視認しなくても無意識のうちに視認するような画像をこっそりと流し込むことで催眠暗示をかけるというものだ。
独自のアレンジを加えることで本来なら強制的に相手を催眠暗示で命令に従わせるというのは、出来ないのだがそれを可能にする方法を発見していた。だからといって何でもかんでもできるというわけでなく制約はあり相手にもよるが、相手をこん睡状態にさせることも不可能ではない。
流石にデモンズクェスト全てに仕込んではいないが、数十本以上にわたるデモンズクェストのボス戦にそれを仕込んでおり、だからこそこのような事態が起きたのだ。
まさかゲームに原因があるとは思わないだろうし、ただの奇病として騒がれるだけだ。仮にゲームを事前にやっているという共通項を気にするものがいても周囲の人間が否定しその案はなくなり、他のデモンズクェストをやっている人間に問題はないということから妨げるはずだ。
その上ゲームは中古として販売することもあるし、古いゲームをマニアが買うこともあるから男の遺産は永久にとはいかないが生き続けるだろう。
それを思うと男は笑いが止まらないのだった。