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猫は月夜に恋をして  作者: 千瑞
1,もしもわたしが
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 もし、もしもだけれど、もしも万が一、私たちが「非科学的だ」と思うような得体のしれないものがこの世界にあったとして、そして私みたいな凡庸な市民がそれに遭遇するとしたら、それは日常生活の一部分に、ふとした瞬間に現れて、そして私がそれに気づいたり、それに興味を持ったり、非科学的だと判断して騒ぎ立てたりする前に、一瞬で消えてしまうものなんだと思う。だけどそれは私たちの視界や意識にはちゃんと入っていて、ものすごく自然な姿でそこにあるから、私たちが立ち止って「そういえば、これはどうしてこうなっているのかしら」なんてわざわざ考えないと、不思議だっていうことにすら気づかないで通り過ぎてしまうような、ものすごくものすごく、自然なものなのだと思う。

 例えば、瞬きをしたその一瞬、まぶたを閉じたその一瞬まぶたの向こう側の世界が本当にずっとそのまま続いているなんていう証拠はないし、私が今歩いているこの道の先には昨日は高校があったけれど、本当に今日も高校があるなんて私には証明できない。


 それと同じで、例えばあの時私が、あの真っ暗な路地の入口でふと足を止めて、そちら側に曲がってみようかな、と思ったのがどうしてだったのか、なんて聞かれても、本当にどうしてなのか自分にもこたえられない。もしかしたら見えざる何かが、無論私たちの常識なるものを超越した世界の外側にある何かが、つまり神様みたいな何かが私に「ねえねえ、あんたってばいつもその怪しげな脇道を素通りしちゃうけど、本当にそれでいいの? ちょっと足を止めて、その細い道がどこに続いているのか、ひとつ確かめてみようって思わない?」みたいに、私の脳みそに働きかけをしたのかもしれない。もちろんそんな証拠はどこにもないけど。


 今となっては、その路地裏が不思議だったのか、それともその時路地裏を覗き込んだ私の頭の中が不思議だったのか、聞かれたって答えられない。こたえられないけれど、つまり「非科学的で」「不思議な」ものっていうのは、案外、こうやって身近なところにあったりするんじゃないかな。


 なんてね。

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