初対面って大事だよね
ゴクリっと喉を鳴らしながら、階段を一歩ずつ上がる。
(・・・あれ、ただ単に階段を上がっているだけなのに・・・)
なぜか・・・なぜか悪寒がする。
まるで、そう、例えるなら絶対開けてはいけない箱を開けてるような・・・もしくは、後戻りができない道を歩いているような・・・
(って、そんな事考えている暇なんかないよね・・・今は一刻も早く、助けを求めないと)
そして、階段をのぼりきった少女は扉に備え付けられてる鈴(御用の方は鈴を鳴らしてくださいと書いてある)を鳴らした。
チリン!チリン!・・・
しばらくすると、奥の方からカツっカツっっと歩く音が聞こえてきた。
(女の人のハイヒールだよね・・・この音・・・)
ガチャっ・・・と少女の前で、ゆっくりと扉が開いていき・・・開ききったドアの先で見たものに思わずここに来たことを頭に手を当てて後悔した。
ブツブツと言いながら、日本刀に頬ずりしている髪の長い青年。
パソコンの前でニヤニヤと笑いながら、キーボードを打ち込んでいる。頭の上が真ん丸く、はげているおじいさん。
そして、なによりドアを開けてくれた人が、一番おかしい。
赤いハイヒールを履き、金の龍が装飾されたパッツンパッツンなチャイナドレスを着て、唇には薄っすらとピンクのルージュがひいてある。
・・・・・・・筋肉ムキムキのオッサン。
「ふう、こいつはとんだ化け物屋敷だぜ」
思わず本当の事を口にしてしまった私を誰が責められるだろう。
・・・とりあえず、目の前で青筋浮かべているオッサンから誰か助けて欲しい。
「みぎゃああああああああ!!!!いたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「アアン!?誰が化け物だコラァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
オッサンは、片手で少女の頭を持ち上げている、あれはアームロックという技だろうか。
「ゴメンナサイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!つい本音がでたんです!!悪気はなかったんですううううううううううううううう」
「なお悪いわァァァァァァァァァ!!!!」
女装したオッサンが少女をいじめている光景は、間違いなくR指定が入るほどのショッキングな映像だ。
「・・・痛い?でもね、化け物と呼ばれた私の心の傷は、もっと痛かったのよ!・・・・このままトマトにしてくれるわっ!!」
「イタイイイイイイイイイイイイイイイ握り潰されるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」
「アホかァァァァァァァァァ!!」
そのツッコミと共に、オッサンの体は真横に吹き飛んだ。
風のように奥からやってきた別の少女によって側頭部に膝蹴りを叩きこまれたのである。
ドゴンッっというものすごい音とともに壁に頭から突き刺さるオッサン。
「まったくお客さんになにしてるんだ」
腰に手を当ててプンスカ怒っている少女の肩を、さっきまで日本刀に頬ずりしていた男がツンツンと叩く。
「・・・優」
「ん?何、兄さん・・・あ」
兄と呼ばれた男が、先程オッサンが飛んでいった方向に指を向ける。
そこには、頭から血を流してるオッサンと・・・オッサンに掴まれたまま一緒に壁に激突して、口から血を噴いている少女がいた。