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「それって、賄賂じゃなーい?」ちくり魔が転生して悪徳令嬢になったときそれは悪夢の始まりです〜みんなが私にビビりすぎて一切首を突っ込んでこない件〜

作者: 琴荘子
掲載日:2026/07/27

読みづらいところはぜひ連絡をください。

修正を致します。

※私の勉強にもなりますので……

 

 私、ツゲグチー=シャーロットに貴族としての才はない。


 そう気付かされたのはこの世界に生を受けてから16年後の出来事だった。



「お嬢様……そこの結び方はこうでございます」

「えっと............こう?」

「違います......なんですかその愉快な結び目は............?」


 裁縫もダメ、料理もダメ、ましてや礼儀作法もダメダメだった。爺やが教えてくれることの意図が分からず、頭で理解することも、体で実践することも無理。唯一褒められたのは、容姿......顔とスタイルのきれいさだ。


「お嬢様......今の時代、婦人は顔だけでは生きていけません」

「はいはい、分かってるよ」


 だが、その顔だけでは通用しない。そう爺やのいつもの口癖が私の心を突き刺す。だが、私は強がって鼻息を荒げながら毎回いうのだ、「分かった」と......。


 そんな私にお父様とお母様は心配し、焦る私の心を宥めてくれる。心の中では本当に申し訳ないと思っている。しかし、その優しさに自分は甘えてしまっているのだ。


(はぁ…………私、いつになったら変われるんだろ……?)


 そう思う日が今日も続いていく————


 #####


「お嬢様…………到着いたしましたよ」

「……ありがとう、爺や」


 爺やが運転する馬車に揺られて、家から約20分。私は首都にある王城の広場へと到着した。


 なぜ、私がこんなところにいるのか?



 それはここで今からパーティーが開かれるからだ。



 月に一度で開かれる王国主催のパーティー。国内の王族と貴族や帝国騎士団など、数多くの重鎮が集まり同じ時を過ごす。目に入るのは煌びやかな大広間、一流のシェフが作った料理。まさにこの国の全てが詰まっていると言われてもいいほどだった。


「…………相変わらずね……」

「はい、相変わらずでございます」


 私と爺やはそんな会場の中、しきりに目立つ男女を見つけた。その男女は黒と赤の華麗なるドレスに身で包み、堂々とした態度で国王陛下とお話になっていた。


 2人はこの国のNo.2であるシャーロット夫妻。夫が帝国騎士団の騎士団長であるシリウス=シャーロット、妻がこの国の法の最高機関である最高審問所のトップ……アリス=シャーロット。



 そう、2人は私の()()である。



 そうならば、品行方正が皆無の私が呼ばれても、なんらおかしいことはない。逆に呼ばないほうが失礼と言えるだろう。


「本当にあの2人の間の子でしょうか?」

「おい、聞こえてるぞクソ爺や」


 この場には不釣り合いな言葉を叫んだのち、私は怒る心を腹の中にしまい込む。ここで問題を起こしでもしたら、お父様とお母様になんて言われるか……。そう考えるだけで私の背筋がブルリと震え上がる。


「ちょ、ちょっと気晴らしにお手洗いに行ってくるわ。」

「嘘おっしゃい……本当は逃げるためでしょう?」

「あぁー、だめだ……本当にムカつく、このジジイ」


 私はそんな負け台詞を吐き捨てると、一直線へトイレへと向かう。確かにあんなことを言ったが、爺やの言うことは9割9分合っている。私はパーティーなんて好きじゃないし、キラキラしたところにいるだけで気が滅入ってしまう。


(あぁ……早く帰りたい…………)


 そんなことをほざきつつ、曲がり角を曲がろうとした————



 次の瞬間だった。



(あれ……なんか音が…………)


 不意に聞こえた足音。普通なら誰も気にしないようなことだが、この世界の貴族常識は違う。


『貴人(立派な人)たるものパーティーの前に用は済ませ』と爺やに教わっている私。そして、このパーティーにいる人達は全員(私を除く)が貴人である。


 つまり、この場でトイレに行く人は()()()いないということ。


(えっ、私の楽園が侵されてる?)


 私は焦る気持ちを抑えて、そっと壁から半分顔を出した。すると、そこには黒のタキシードに身を包んだ2人の男が立っていた。その2人は私がギリギリ聞こえるぐらいの小声で話しており、明らかに怪しい空気が立ちこめていた。


(いったい何を……?)


 私は興味本位で耳を傾けた。


「こ、これで……息子を合格に……」

「ふむ……まぁ、任せなさい。」

「ほ、本当ですか!?」

「えぇ、これぐらいの()でしたら受からせますよ。」


(……んっ?)


 とんでもない会話が耳に入り、反射的に二度見してしまう私。よく見るとその会話をしていた一方の男は、国内唯一の国立学校の理事長のカイザーだった。私も通っている学校のため、校内でたまに見かけることがある。


 そのカイザーは目の前の男が持っていたアタッシュケースを受け取ると、ゆっくりとその蓋に手をかけた。


「なるほど、()も上々……」


 蓋を開けたカイザーはそう呟く。その顔は変にニヤつき、ケースの中身からの光で輝いていた。



 私はそれの中身を見ずとも、輝き具合から金だと理解した。



(えっ、何あれ……裏口入学?)


 今の季節は冬ということもあってか、受験シーズン真っ只中。自分の息子にいい学校に入ってほしいと思っての行動なのだろう。


「では、これを……」

「こ、これは……?」


 次に聞こえた会話に私は再び壁から視線を送る。見えたのはカイザーが小さな紙切れを渡している光景。渡された男はその紙切れを慎重に受け取ると、カイザーに向けて困惑した顔を向けた。


「その紙を答案に挟んで提出しなさい」

「えっ……」

「この話は以上です」


(やばッ!)


 私が夢中に聞いている最中に、唐突に会話が終了。すると何事もなかったかのように、カイザーがこちらに向かって歩き出したのだ。


(いやいや、すんなり終わんなよ……ッ!)


 私は愚痴を心の中でこぼしながらカイザーとは反対の方向へ走り出す。トイレからパーティー会場である大広間までは曲がり角を挟んで一直線。



 つまり、私がこのままじっとしていたら理事長に見つかってしまう。



(いや……気まずッ!)



 謎の小っ恥ずかしさから走り出す私。だが、後でその行動を後悔することになる。


 コツンッ!


「誰だ!?」


 突然響く甲高い音。それは走り出した私の足元のヒールからだった。トイレ周辺は何もない殺風景のため、余計に響いてしまうのだ。


「そこに誰かいるのか!?」


(まずいまずい……!)


 近づいてくる怒号と足音。私はそれに押されるように大広間に逃げ込む。額は汗にまみれ、背筋は冷や汗が垂れる。見つかるな、ただそれだけが頭の中で渦巻いていた。


「おい、誰だ!」


 一瞬の間の後、カイザーが私を追いかけて大広間へと入ってきた。まるで雷が落ちるような声が広間に響き渡り、ダンスを踊っていた貴人たちの動きがピタリと止まる。


「はぁ……はぁはぁ、だ、誰かお手洗いのほうにいたろう?」


 カイザーが全体にそう問いかける。だが、返ってくるのは不穏な静けさのみ。



 そこには不安と不快感で満ち溢れているように、カイザーはそう見えた。



 #####


(あっ……ぶな!)


 私は大きく上下する肩を抑えながら、近くにあったソファへと腰をかける。普段運動しないせいか、はたまた運動神経がないせいなのか、少し走っただけで足が疲弊しきってしまっていた。


(マジでなんなんだよ、あの理事長……大広間に来たと思ったら叫びやがって……)


 なぜ私が逃げ切れたか、それは私が人混みに紛れたからである。そうすれば姿を見ていない限り見つかることはないし、私へと疑いが飛ぶことはない。


(ふっ、我ながら完璧な作戦……この国の軍師になってあげてもよかろう)


 私はキザっぽいことを心の内で語りながら、ソファの柔らかさに驚いていると、後ろから肩を叩かれた。


「はひっ!?」

「……私でございます、お嬢様」


 カイザーに見つかったと焦った私が恐る恐る振り返ると、そこには扇子をこちらに仰ぎながら静かに立ち尽くしている爺やの姿があった。


「じ、爺やぁ……」

「おや、どう致しましたか?」


 私は爺やを鋭く睨むと、右手に持っていた水をかけそうになる。だが、すんでのところで左手がそれを阻止すると、爺やへと向き直った。


「お嬢様……顔色が優れませんね、何かありましたか……?」

「う、ううん……だ、大丈夫よ!」


 私はいつも通り平然を装うと、さらにそれを強調するかのように胸を張る。だが、爺やの顔は曇るばかり。私もそれにつられて口角を落としてしまった。


「あっ、えっと……じ、爺や————」


「お嬢様、()()()()()()()()()()()行ってきてはどうでしょう?」


「へっ?」


 突然な提案に私は両眉を寄せる。対して提案者である爺やは、私の答えを知っているかの如く大広間のある一部へと指差した。


 その先には仲睦まじく話す私の両親の姿があった。


()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()

「えっ……い、一体何を言って……」

「お嬢様はまだ小鳥に等しい……甘えるというのは貴重な体験なのですよ」


 その言葉は私の心の戸を叩いた。


 #####


「ツゲグチー! いったいどうしたの……?」

「あぁ、そうだ……少し顔色が悪いんじゃないか?」


 どうやら爺やに分かることは両親にも分かるらしい。両親は普段と違う私に違和感を抱き、心配するように私の瞳を覗き込んでいた。


「う、うん……ちょっと体調がね……」

「なら、無理せず休んでいいのよ?」


 母が私の体を気遣うように、ゆっくりと私を椅子へと座らせる。父も私の顔色が悪いのを察すると、水を飲むように勧めてきた。


 私はそんな2人の介護を受けながらようやく気持ちが落ち着くと、両親の顔を伺うように見上げた。2人の顔は太陽のように明るく私を見下ろしている。


 そのとき、ようやく私は枷が外れたようにあったことを語り始めた。


 #####


 パーティーの日の翌日。


 私はなぜか母親が働いている最高審問所に来ていた。否、強制的に連れ出されたと言う言葉が合っているのだろう。


 なぜなら————


「カイザーの収賄現場を目撃したと証言した……()()()()()=()()()()()()()、一歩前へ」

「は、はい!」


 私は母の威厳ある声に肩がビクリと震え、恐る恐る立ち上がる。今までに味わったことのない緊張感と疎外感が一気に押し寄せ、私の精神をすり減らしていった。


 やっとの思いで証言台に立った私。ふと隣を見ると、あのカイザーがこちらを睨みながら不服そうに座っている。その姿を見ただけで話そうとしていた言葉が飛びそうになる。



 何かされるんじゃないか?


 もしかしたら、ヤケクソで退学させられるのではないか?


 そんな考えだけが頭をぐるぐると駆け回る。



 そんななか、審問台に座る母と目が合った。


 ただいつも通り仕事をまっとうしているかのように思えたが、その瞳の奥には我が子を思う心が見えた。落ち着いて話しなさい、そう母は言っているように感じる。


 その瞬間、私の決意が固まる。


 両手を握り締め、大きく息を吐く。私のその行動に傍聴席は静まり返り、一気に私へと視線を浴びせる。


「わ、私は————」


 私は喋り出す。

 昨日起こったことの一部始終を……


 学園の不正入学の存在、カイザーの収賄……そして、謎の鬼ごっこ……


 全てが審問所内で明かされ、その誠実さに感化された傍聴席が私の証言が終わるとともに拍手を送る。


 全てが終わった後、私の身体は汗に塗れてびしょびしょだったのを覚えている。


 隣で泣き叫ぶカイザー。

 傍聴席の端で青ざめる受験生の親子。

 そして……満面の笑みの母親。


 私はその光景を見た後の出来事は覚えていない。



 気がついた頃には私は審問所をあとにしていた。



 #####


 またその翌日。


 見たことがある文面と展開だが、今日は場所が違う。


 今日は一昨日行われたパーティー会場……つまり、城の大広間に連れ出されていた。


 目の前にはこの国のトップである国王陛下。その側には私の父が剣を携えながら立っていた。父は家で接するときと真逆の目……視線は鋭く冷たかった。


「ツゲグチー=シャーロット!」

「は、はい!」


 国王陛下に名を呼ばれ、私は昨日と同じ反応で返事をした。その際も毎日爺やに叩き込まれている礼儀作法を、私は覚えている限り全力で実行する。


 足と頭を下げるときの角度、言葉遣い。


 考えられること全てに気をつけ、私は国王陛下の前に首部を垂れる。


「うむ……貴殿の活躍、わしの耳にもしかと聞き入れた」

「あ、ありがたきお言葉に……こ、光栄の極みであります!」


 今まで使ったことがないような言葉が自然とぽんぽんと口から出てくる。身体に叩き込まれた記憶が反射的に飛び出てくるのだろう。爺や本当にありがとう、そう私は心の内で爺やに感謝した。


「一応確認だが、お主はカイザーの賄収現場を取り押さえたと聞いておる」

「あっ、えっ……取り押さえたというか……見て、聞いただけというか……」

「ほっほっほ……何を謙虚なことだろうか!」


(えっ、えぇ〜……)


 何か違った話と擦り違えられてない?

 えっ、私って取り押さえてたっけ?


 そう思い、私は父に助けを求めるかのように一瞥する。ところが、父は無反応。それどころか少し誇らしげに見えた気がする……



(いや、アンタ(父さん)絶対に盛ったろ!)



 国王への報告は全てが騎士団長である父から行われる。よってこの話も父から聞いたはず……。私の父は軽度であるが親バカのため、どうせ報告のときに自慢げに盛って話したのだろう。


「こ、国王陛下……それには誤りが——」



「その誠実さと国への忠実さんゆえ、貴殿に()()を与えたいと思う所存だ。」



「…………えっ?」

「貴殿はこの国唯一の国立学校の不正を暴いた……これはこの国の民度上昇、学校教育の質向上へ貢献した」

「はへっ……?」

「よってここにわしの感謝を述べたい……本当にありがとう……」

「…………?」


 とてつもない早い展開についていけず、私は間抜けな顔をしながら硬直してしまう。だが、そんな私にもお構いなしに国王陛下は次の言葉を述べられた。



「貴殿にその学校の()()()()に任命する。」



「……マ,マジデ?」


 #####


 その次の日から国内には目まぐるしい速度である噂が広がった。


 あの国立学校で一年生なのに生徒会長をしている生徒がいるらしい。


 それはこの国全体を揺るがす大事となり、国民がこぞってその生徒会長を見たがった。だが、その姿を見たものは1人としていない。そのせいか、国では『雲隠れの生徒会長』と別名までつけられる。


 彼か彼女かも分からないミステリアスな存在。そんな生徒会長が現れてから国に変化が出始める。



 公務員の不正行為が極端に減少したのだ。



 その結果がなぜその生徒会長と結び付けられたのかは定かではないが、国民の大多数がそれを生徒会長の実績として讃える。


 そんな生徒会長は今日も城のお手洗い前に鎮座している。大広間から聞こえる自分の話題にニヤけつつも……


 ある貴族は言った。

 城でパーティーが行われる際にはお手洗い場からある言葉が聞こえると……


 その言葉は————



「あれれ〜……それって、賄賂じゃなーい?」



ご拝読ありがとうございます。

もし読んでみて面白いと思っていただけたら、評価とブックマークをしていただけると幸いです


また、不明点やアドバイス、感想、アンチコメも受け付けてます。

皆さんの意見をぜひお聞かせください。


なお、ウケが良かったら続きを短編で書くか、長編に切り替えて執筆したいと思います。

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