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素晴らしき哉(かな)異世界辺境生活  作者: 富士敬司郎


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33/50

第33話:水路

 東の川に、村人の大半が集まっていた。

 人型種族は全員来ている。

 村にいるのはスライムと、シャドウウルフや大蜘蛛の一部だけだ。


 水路の完成。

 秋の段階でほぼ水路はできあがり、後は堰を切って流し込むだけになっていたが、俺の考えで冬はそのままに置いていた。

 雪解け水で増水とかもあるが、不毛な季節に水路がどう汚れるのかが分からなかったからだ。


 一応、動物の死骸や落ち葉はあったらしいが、冬のうちにスライムや大蜘蛛たちが片付けている。

 生活に必須なので、頑張って掃除したらしい。

 彼らに感謝だ。


「では、村長どうぞ」


 サラチから斧を渡された。

 ロープを切るための斧だ。

 このために頑張って豪華なのを作ったらしい。


 別に俺でなくてもいい、と言ったのだが、こういうのは形式が必要だそうだ。

 俺が堰を切ることで俺のものになる、という話だ。

 そこまでご大層なものでもないのだが……。


 斬! と斧を振り下ろすと、ロープが切れて、せき止めていた木々が放たれて、勢いよく水が流れ込んできた。

 一斉に歓呼の声が上がった。

 涙を流している者もいる。

 それほど嬉しいなら、俺も頑張った甲斐がある。


 後は帰りに水路を見て回り、巧く流れれば成功。

 その辺は一発でできるとは思わないので、ちょいちょい調整などを入れるつもりでいる。


 帰り道、あふれている場所はないか、と思いながら、レメたちに乗って沿道を歩いてみたが、調整池も含めて巧く流れ込んでいる。

 ちなみに村であふれていたら、待機しているシャドウウルフたちが駆け込んでくる手筈になっている。

 それがない、ということは、村にも巧く流れているのだろう。


 村に到着すると、ため池に水が勢いよく流れ込んでいた。

 これは村を拡張して100×100メートルくらいの大きさにしている。

 深さは5メートルほど。

 なので溜まりきるのに少し時間がかかる。


 排水路も完成している。

 一応ため池と排水路を直結させて、余計な水は流れ込まさないようになっている。

 そして村の中に入る水路も整備した。

 ため池からその水路を巡って村に水が入り、そして最終的に排水路に流れてゆく形だ。


 ただし、村に水が回らないと失敗なので、ため池と排水路の間にはいつでも塞げる堰が作ってある。


 ため池の手前には最後の調整池を作った。

 何かあればそこと排水路を繋ぐ堰を切って、村には流れ込まさないようにしてある。

 村が水浸しになるのは避けたい。

 水の需要は満たされてるのだから、あくまで水路はそれを補助するものだ。


 ため池と、川から直接水を送る導水路の間には木で柵を作った。

 魚やゴミが入らないようにするためだ。

 そこにはスライムたちが潛っていつでも掃除できるようにスタンバっているらしい。

 窒息しないのかな?


 柵と村の水路の間には同じく堰が作ってある。

 この堰を切れば村に水が回る。

 その前にシャドウウルフや大蜘蛛たちがずらりと並んでいた。

 彼らにもセレモニーを見せなければならない。


 村に帰った者が粛々と、シャドウウルフや大蜘蛛たちに並んだ。

 同じく斧で堰を繋いでいるロープを切ると、ゆっくりとではあるが、水路に水が回り始めた。

 「わおおおおおおおおおん」と一斉に遠吠えが奔る。

 村人たちにも再び歓呼の声が湧いた。

 成功だ。


 水路は各建屋の近くを巡り、誰でもどこでも利用できるようにしてある。

 飲む水ではないので身体を洗うのに使ってもいいし、他の目的でもいい。

 排泄物を流さなければどう使ってもいいと言い含めている。


 一番大きな水路は俺の屋敷の近くを通っている。

 屋敷の手前で小さな池を作り、そして排水路に流れてゆく。

 その一部が屋敷の裏側にも流れ込むようにもなっている。

 ちょうど屋敷を囲う形だ。


 水路と言えば水車。

 その動力を活かして村をもっと便利にしたい。

 ただ、水車は難しい。

 現代でも巧く作らないと回らないことも多い。


 なので、水車の存在は、いつでも置けるようにはなっているが、現物はない。

 いずれ技術に詳しい住民が増えてから建設し、設置するつもりだ。

 急ぐ必要はない。


 徐々に勢いを増してゆく水路に、スライムたちが嬉しそうに入っている。

 ぷかぷかと浮かんで流れるに委す個体もいる。

 彼らには掃除をしてもらわなければいけないので、その存在は重要だ。

 頑張ってほしい。


 しばらく水路を見て回ったが、あふれている場所はない。


「成功ですね、村長」

「流石です、村長」

「いろいろ使えそうですね」


 村人たちが嬉しそうにいちいち俺を褒めてくれるが、正直面映(おもは)ゆい。

 これは俺の技術だけではどうにもならず、村人総勢が頑張って作った結果だ。

 彼女らにも大いに誇ってほしい。


 ちなみに水路の大きさはでかい方で幅3メートル、小さい方で幅50センチ程度。

 その中間の1メートル幅の水路が縦横無尽に行き渡っている。

 深さは溺れる者がいないようにだいたい50センチくらいで共通している。

 深さが必要な場所はもうちょっと深めにしているけど。


 水路の周りには、そこそこの大きさの木を横に置いている。

 小さいとは言っても水路だ。

 間違えて嵌まったら大変なことになる。

 その目印だ。

 直接水路や空間を利用できるように、一部欠けさせているが、注意はしてもらいたい。


 水路があるということは橋もある。

 設置を担当したエルダーアラクネやハイエルフたちが美意識を発揮したのか、いろんなタイプの橋ができている。


 その幅はヒュージの大きさを参考にした。

 具体的には5メートル程度。

 俺の屋敷の近くにある橋はその倍くらい。

 ヒュージ以上の大きさの個体はいないので、今はこれでいい。

 ヒュージよりも大きな個体が来た時には、その時に考えることにしている。

 まあ、恐らくは跳ぶかまたぐか空を飛ぶかの三択だろうけど。


 シャドウウルフたちは橋を使わずに飛び越える個体がほとんどだ。

 そうするのはいいが、彼らの子供たちが使う時に困るかもしれない。

 教育する時は遠慮なく橋を使ってほしい。

 そのための橋なので。


 大蜘蛛は橋を利用するかと思いきや、村の上に縦横無尽に網を張って、必要な時に自分で糸を出して降りてくる。

 上空50メートルくらいの場所なので、かなりの糸を出さないと降りられないが、彼らは気にしないようだ。

 もちろん橋を平然と使う個体もいる。

 ヒュージやビゲストなどは流石に網を使えない。


 網を張る理由は、行き来もあるが、鳥や飛行型のモンスターを捕まえるからという目的が大きいそうだ。

 特にこの森の鳥はでかい。場合によっては翼長が5メートルを超える個体すらいる。

 そういうのを撃退する、あるいは食用とするために、大蜘蛛の網が大活躍するらしい。

 すでに結構な数が献上されている。


 村の外の導水路と排水路は、幅10メートルくらいで共通している。

 深さはおよそ3メートル。地形やカーブなどによってはそれ以上になっている場所もある。

 調整池は50×50メートルほどの大きさが8箇、100×100メートルほどの大きさが1箇。

 この数は導水路の分であり、排水路にも同じ数が配されている。


 村の近くにも調整池が設置してあり、それは他よりも巨大な200×200メートルの大きさにしてある。

 目印は置いていないので、そばを歩くときには注意してもらいたい。

 いずれ木で柵を作るつもりではいるが、今は水路の設置が最優先。


 水路と調整池で森を断絶することになるが、頑張って飛び越えてもらおう。

 ホーンラビットだって平然と10メートルくらい跳んできたし。


 1キロごとに橋も作ってある。

 調整池と調整池の間に2つずつだ。

 幅は10メートルと大きい。

 これは俺らの都合だ。

 いずれ荷車を作る時にすれ違える幅。

 他の動物も通れることになってしまうが、しょうがない。

 森を断絶する代わりの通路として使ってもらうことにしよう。

 もちろん被害が大きい時には遠慮なく落とせるようにはしてあるが。


 ため池を眺めていると、導水路から何隻かの小舟がやってきた。

 エルダーアラクネが何人か、ハイエルフも何人か、そしてラージやミドル、シャドウウルフたちが乗っている。

 快哉を叫んでいた。

 舟だけで水路を辿れるか、テストしてもらっていたのだ。

 結果は成功。橋や障碍物に引っかかることもなかったらしい。

 ため池を経由して、今度は排水路で東の川まで行けるか試すらしい。


 水運。川から導水路を引っ張ってきたのだから、そういうものも使いたい。

 いずれは東の川から上流下流へ行けるような船も作りたい。

 導水路付近は無理だろうが、排水路付近になら港は作れる。

 せっかく広い川があるのだから、そういうのも活用したい。


 今度は排水路の様子も見ておこう。

 監視組が駆け込んできていないので、たぶん問題ないのだろうが。


 池のある村が水路のある村に変貌した春だった。


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