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聖典第1章「世界の始まりと終わり」を解説する教師の話。

 「始まりの神〔エンペザアル〕は世界を5つ作り、終わりの神〔エルミナル〕は4つの世界を終わらせ1つの世界を救った。

 5つの世界はどこも平穏な時間が流れていた。始まりの神は5つの世界をそれぞれ見守りながら妻である終わりの神と数百年に一度世界に遊びに行くほどであったとされる。

 では何故、4つの世界は終わりを迎えたのか…それはある日突然現れた侵略者がカギとなる。

 古代からの文献を読み解けばまず、第3世界に侵略者が現れたとされている。しかしその世界に現れた侵略者の姿は記されておらず、ただある日ある海に消えない霧が発生したとされている。その霧は消えるどころかじわじわと世界を覆い始め、神が気付いた時には世界の2割が霧に覆われていた。この霧が何か神にすら分からず、神すらもこの霧に対する術がなく、世界の5割が霧に覆われた頃にひとつの答えが出る。それは霧に覆われたら最後そこにあった場所にはたどり着けず、霧の中に入ろうとも数分すれば元の位置に戻る。しかしてその霧に覆われた場所に住んでいた生き物はというと…消失。魂すらも残らずただ消失したとされている。その事実が判明したところで神には何もできない。世界へ遊びに行くことはできても、その世界で暮らす生き物を基準としているため神の力は使えず、霧を追い払う術もない。ほどなくしてこの世界は7割が霧に覆われることとなった。


 また別の世界、次は第1世界にも侵略者が現れた。時期は第3世界が5割ほど霧に覆われた頃とされているがそれもあいまいな表現であるため正確とは言い切れない。この世界の侵略者も第3世界と比べてもすぐに異変に気付けるものではなかった。

 ある時、町の住民が森が近づいている。そんな会話があったとされている。発生源は分からず、侵略者は木と断定してもいいのか分かっていない。

 世界は木々に覆われた。しかしその本体は確認されていない。第3世界の7割が霧に覆われた頃には第1世界の5割が木々に覆われていたとされている。またこの木には特殊な力があり、その近くに長くいると離れたくないと思うようになり、続いて何も食べたくない、動きたくない、起きていたくない。と徐々に活動を停止するようになっていくとのことだ。

 神がこの第1世界の状況に気付いたのはこのあたりとされている。第3世界の現状の対処にあたっており他の世界まで手が回らなかったことが原因との説が一番有力だ。

 そんな第1世界の現状に気付いた神は残りの3つの世界の確認に動いた。

 第2世界は土からマグマがあふれ出ておりその3割が火の海だった。

 第4世界は雨が数年の間止むことなく降り続いており陸地は既に2割しか残っていなかった。

 最後の第5世界には異変が見られず、しかし残り4つの世界の状況から既に侵略が始まっているもしくはこれから侵略が始まるとし、始まりの神は第5世界へ神の姿のまま降臨し、世界に小さな異常が起きればすぐに祈りを捧げてくれと頭を下げた。

 始まりの神は第1~第4世界の救済のための手立てを考えた。


―第1世界の木々に対しては、近づいても活動できる様に聖なる鎧を―


―第2世界のマグマに対しては、冷やし固めるための聖なる水を―


―第3世界の霧に対しては、先を見通すための聖なる灯を―


―第4世界の雨に対しては、雨を吹き飛ばすための聖なる風を―


 それぞれの世界に守りぬくための力を力ある者へ与え、第5世界に異変がないか徹底的に探るようになった。数年が立ったある日、第3世界に与えた力の反応が消えた。そうだ、侵略者に敗れたのだ。神が与し力を侵略者が封印を施したことで神にその知らせが届いたということらしい。神が気付いたその時には残りの3つの世界も侵略者の前に敗れ去った後だった。

 対応策を出したのが遅すぎた。各世界の力を託された者は、その力を使いこなす前に侵略者に敗れていったのだ。

 

 そして4つ世界の絶望的状況を確認した神の目の前の時空が割れたのだった。

 始まりの神は第5世界の一番高い山に神殿を築き第5世界全てを見通していた。その場所へ4つの世界が侵略者の手に落ちたと断言できる状況になったのを神が確認したその時に、始まりの神の前に第5世界を侵略者が現れた。

 もはや4つの世界は救えない。だからこそ神々が定めし規定を破ってでも残された第5世界だけは守り抜かんと始まりの神はその権能を発動させた。


 時空の裂け目から出てきたのは、この5つ世界で初めて人型だったと記録されている。

そして、神の前に降り立った侵略者は、4つの世界は我が眷属が頂いた。残すこの世界は我自らが我の物とせん。と宣言したとされている。

 始まりの神と侵略者の戦いは周辺を死の大地に変えるほど強大だった。しかしてその結果は侵略者の勝利にて始まりの神は滅びたのだ。


 その頃、終わりの神は夫である始まりの神が創った世界の救済のため他の神々のもとへ赴き助力を乞うていたとされている。しかし1柱の協力すら得られず次へ次へと移動していたある時に、始まりの神が力を開放したのを察知した。

 ”何かが起きた”と夫の居る第5世界へ降り立った時目にしたのが、始まりの神が侵略者によってその活動を終わらせられる正にその瞬間であった。

 夫は全てを始めることの出来る始まりの神であれば、妻である終わりの神は全てを終わらせられる神である。

 終わりの神もまた権能を開放し、激しい戦いで消耗している侵略者を瞬きの間に”終わらせた”

 しかして第5世界は侵略者の手から守り抜かれた唯一の世界となった。しかし、夫である始まりの神はもういない。残された終わりの神はその悔しさと悲しみ、せめてもの弔いになればと残りの4つの世界の侵略者の眷属たちもその権能を前に終わらせることに成功した。かくして5つの世界は終わりの神の力の元に侵略者からの脅威を取り除くことに成功した。

 しかし第1世界から第4世界の状況は絶望的。世界としては終わっているこの4つの世界をまたいつ時、別の侵略者に狙われかねないとし、終わりの神に残された全ての力を使い終わらせる。そして終わりの神もまた力を使い果たしその活動を終わらせることとなる。

 

 この時、始まりの神が創りしそれぞれの神器は時空を超え、ほんのわずかに残る始まりの神の力の元へ集まったとされているが、今に至るまでその姿を確認した記録はない。

 かくして、始まりの神〔エンペザアル〕は世界を5つ作り、終わりの神〔エルミナル〕は4つの世界を終わらせ1つの世界にまとめたのだった。




 聖典第1章「世界の始まりと終わり」から一部抜粋し、さらに分かりやすく今の言葉にあてはめたのが今の内容になるが、私はひとつ疑問が残っている。後半の侵略者の主と始まりの神が戦うところからの話から終わりの4つの世界の神器がこの世界に集まったとされる話。これは一体誰が観測したことなのだろう、いやむしろ神の行動を観測し現代までつないだのは一体誰なんだろうかと。

 私の考えはこうだ。管理する神の居なくなったこの世界。終わりの神エルミナルは最後、他の神々のもとへ助力を乞いに行っていた。そのうちの神が女神からの説明をもとに記録に残し、この第5世界へ託したものではないかと。


 この話が事実であれば、侵略者というのは突然現れるということだ。いつ来るかわからない者に怯える必要はないが、この世界をお守りくださった2柱の神々の為にも今の私たちができることを頑張っていかなくてはいけない。と君たちは覚えてくれればいい。将来、侵略者が来た時の為に力をつけるもよし、歴史を読み解き更なる事実を見つける学者になるもよしだ。

 私たちはこの世界を守り抜いた2柱の神々のためにもいつまでも平和に過ごさなければならない。これがこの世界に生きる者の義務であることは間違いないことである。みんなもそのことだけは忘れないでくれたまえ。」



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