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第4話:邂逅。策謀家。

ソフィア父登場。

 あの哀れにも木材に潰された男たちは、ソフィアから報告を受けた兵士たちに捕まって、今は牢屋に居るらしい。ざまあ。ソフィアに害をなそうとした罰だ。


 しかし、例の件をソフィアが興奮しながら多くの人に吹聴した結果、なんか最強人間みたいに言われ始めた。

 勘弁してくれ。俺は少しだけ特殊な能力があって、それなりに近接戦闘が出来る程度の、極普通の人間だ。








 今日も今日とて絶賛戦時中。だが、ソフィアの護衛? らしきものな俺は休暇である。

 いや、そもそも正式にこの帝国軍の人間になった訳ではないが、現時点ではその役目と引き換えに衣食住を提供してもらっているので、こういう言い方になる。

 こちらに来てから、ゆっくり考える暇が無かったが、今の俺には考えなくてはならない事がある。だから、今日のこの休暇は素直に有難い。


 そうして俺は、宛がわれた部屋で、物思いに耽ることにした。

 例えば、この世界について。

 魔法と言うものがあること、そして見せてもらった地図により得た情報。そして、外見がヨーロッパ圏の人間が(今のところ俺が会った中では)全員なこの世界において、日本語が通じていること。と言うより、公用語であること。いや、文字は知らんけど。


 これらを一致すると、少なくとも俺の知る世界ではないという答えが導き出される。つまりは、「異世界」。

 もう気付いてはいたし、受け入れたつもりではあったが(ソフィアという存在理由も出来たしね)――――なかなか改めて考えると重い。

 とはいえ、それは騙し騙しやって行くしかない。俺のいた世界で俺がどうなったとか、残した家族や友人のことを考えても仕方が無い。

 今すぐ吹っ切ることは出来ないなら、自然に受け入れるまで待つだけだ。

 それに何より、俺は一人じゃない。ソフィアが居る。それが――――この上ない救いだった。






Side:ソフィア


 今日は、お父様とお母様が、この要塞に来る日です。きっと、ひどく怒られてしまうんでしょう、うう…………。

 とはいえ、元はと言えば勝手に荷物に紛れて前線に行った私のせい。ギンヤが居なければ、実際私は今、碌な事になっていなかったでしょう。だから、おとなしく怒られることにします。

 本当は、凄くイヤですけど…………。





「えっと、お久しぶりです、お父様、お母様…………」

「ああ、ソフィア、無事でよかった……!」


 気まずい思いを打ち消して、覚悟を決めて会うなりお母様に抱き付かれました。普段はしっかりしている方なのですが……。

 それ位、心配させてしまったと言うことでしょう。

 そして、お母様の後ろから、お父様がいらっしゃいました。


「まずは無事でよかった、ソフィア。だが、私の言いたい事は、わかっているな?」

「はい。勝手な真似をして、申し訳ありませんでした」

「本当にわかったのだな」

「はい……」


 私とお父様は、未だ泣きじゃくるお母様を見ました。これ程までに心配をかけてしまった私は、とんでもない親不孝者です。


「ふむ。本当は罰の一つでもしっかり与えるべきなのだろうが、どうやらしっかり反省したようだ。ソフィア、次は無いからな」

「はい」


 もう二度と、こんな勝手な真似はしません。



「それはそうとソフィア、お前を助けてくれたと言う方は……?」

「そうです、しっかりとお礼をしなければ」

「あ、ギンヤですね。ギンヤなら、多分錬兵場にいるかと思います」


 強大な力を持ちながらも、決して慢心や油断をすることが無い彼は、一日とて鍛錬を欠かしません。いつも彼はこの時間帯に錬兵場で、見たことも無い体術の型などをやっています。


「そうか。ではそこに行くとしよう。会えれば良いのだが…………」


 そうして。久しぶりに家族3人で並んで歩いて、錬兵場に行きました。







Side:銀也


 いつも通りに錬兵場。明日を得るため、生きるため。今日も銀也は頑張ります。おー。




 とりあえず、俺が出来ることについて整理しておこう。

 近接格闘が少し、特殊能力と膨大な魔力がある。ただし、特殊能力は魔法を吸収して、自身の魔力に還元する能力。つまり、俺は、物理攻撃に関してはいたって普通の人間だ。

 とりあえずは、物理攻撃に対する対策を考えることが第一。

 次、膨大な魔力。ただし俺が使えるのは「身体強化」のみ。魔力を物質化する術も出来るかもしれないので、それについては修行中だが。「魔法」は使えないと見たほうが良いだろう。




 これらを総合すると、俺は「高速移動+それによって威力を増した一撃による一撃離脱」戦法を取るしかないように感じる。あるいはそれ+間合いに入ってからの近接戦闘。それなら遠い間合いからの踏み込みを鍛錬しよう。


「まずは魔力を纏って、と……」


 身体強化。このとき込める魔力の分量と移動速度の関係を正確に把握することから始めよう。足に溜めた魔力を、開放。


「っと、行き過ぎたな……」


 次は抑え目。


「ううん、今度は距離が足りない……」


 中々難しい。しかし、間合いと言うものはとんでもなく大事だ。更に言うなら、今の俺の戦闘スタイルから考えれば、最重要といって差し支えない。何度でもやって、正確さを上げないとな…………。ひたすら練習あるのみだ。







 そんなことを繰り返しているうちに、ソフィアとその両親と思しき人たちがこちらに来た。



「ギンヤ!」

「ん、何? どうしたの?」

「君が、ギンヤ君かね?」


 ソフィアに声をかけたら、ソフィアの隣に居た、とんでもなく威厳のある人が話しかけてきた。この雰囲気と状況から推測される答えは…………


「……ソフィアのお父さんですか?」

 

 娘さんをください。


「ああ、その通りだ。話は聞いているよ。うちの娘が随分と、お世話になったようだ。ありがとう」


 頭下げられた。ちょ、止めてくださいそんな、貴方みたいな威厳溢れる人に頭下げられえると、むしろ逆にダメージです。


「ああいえいえ、頭なんか下げないでください。本当、当たり前のことをしただけなので」

「私からもお礼を申し上げます。しかし、なんと言っていいか……」

「ええと、こちらはお母さんですか。本当に気にしないでください」

「君は謙虚な若者だね……とはいえ、娘の命を助けられておきながら何も礼をしないなど、我が家の沽券に関わる。何か欲しいものはないかね?」

 

 娘さんをください。


「いえ、特には無いですね」

「そうなのか?」


 なんか拍子抜けした顔してるなあ。とはいえ、無いものは無いし。頭に浮かんだことは冗談でも口に出せないし。だからまあ、強いて言うなら……


「それなら一つ、御願いが。ソフィアの護衛をさせて欲しいのですが…………」


 正式に契約して欲しいなあ。衣食住の確保のために。たとえ正式に認められなくても、俺はソフィアを守るけど。


「そんな事は、こちらから御願いしたいくらいだ。だが、それだけで良いのかね?」

「それだけ、といわれましても。私にはこれが無上の喜びですから」


 衣食住を確保できる、これ人間にとっての最重要事項。更に言うなら、今の俺にとって、ソフィアはこの世界での最重要人物で存在理由だ。依存? そうなんだろうね、きっと。


「あらあら……」


 はて、なんかお母さんは上品に笑ってるし、ソフィアは顔を赤くしてるし。お父さんはお父さんで、なんか微笑ましいものを見るような目でこっちを見てるし。いや、どちらかというと、いい拾い物をした、って感じ?


「そうか、そうか。あい分かった。娘をよろしくな、ギンヤ君」

「いえ、こちらこそ」

「私も次の戦に出るために、ここにしばらく滞在する。何かあったら、遠慮なく私の部屋に来たまえ」

「あ、ありがとうございます。」


 いい人だ……。こういう人が本当の「貴族」なんだろうなあ。


 その後しばらく雑談をして、ソフィアの両親は去っていった。あとは若いお二人で、というよく分からない発言と、紅顔の彫像と化したソフィアを残して。


 だ、大丈夫か、ソフィア?


 しかし凄い人だったな……威厳が。あれが人の上に立つ人間なのだろうか。









Side:ソフィア父(ライトアーシェント公爵)


 不思議な少年だった。それが私の、彼に対する第一印象。

 外見ももちろんだが、あそこまで無欲で清廉な、そして芯の強そうな人物は、久しぶりに見た。あの若さで、という条件が加味されれば、初めて会う人物だった。最近は骨も能力も無い男が数多いが、彼ならばソフィアの護衛、あるいは結婚相手としてさえ申し分あるまい。

 今回の反乱で、こちらが勝てば(もちろん絶対に勝つつもりだが)、貴族もそれなりに居なくなる。そうなれば、彼に爵位を与えても全く問題ないだろう。公爵令嬢の救出に成功し、また前線の兵士と共に戦い、攻勢魔法を扱えない身でありながら特務魔道師を葬り去った人物。むしろ爵位が与えられないほうがおかしいくらいだ。


「珍しく上機嫌ですね、あなた」

「む、そうか。いや、そうだろうな。そういうお前こそ」

「それはそうでしょう。大切な一人娘を任せるに値する人物が現れ、そしてその彼自らソフィアを守ると言ってくれたのですから」

「そうだな。彼のような人物がソフィアの近くに、ひいては姫様の周りに必要だ」


 欲にまみれ、王家の血筋や公爵家などといった付加価値に目を奪われている輩が、姫様たちの周りには多すぎた。今回の件でかなり居なくなるだろうが……それでも全員が駆逐されたわけではない。


「穢れを吹き飛ばす新風となるか。ギンヤ君、勝手ではあるが、期待させてもらうよ」


 そういって、私は妻と笑い合った。


別にソフィアは落ちたわけではありません。照れてるだけです。多分。

公爵にしてみれば、主人公は力があって(実際はさほどでもない)、娘にご執心な人間。駒としては最適です。

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