アンマッチではあるけれど
あれ!? うーん。作者が違う路線行きたそうにしてるのに・・・。 あれ!? (物語のはなし)
痛ててっ。身体の関節という関節全てが悲鳴をあげている。やはり夜中にバカみたいに騒ぐものではないな。可動域がリミッターを超えていたのかもしれない。
背中が痛くなりぐぐっと伸ばしてみる。私はいったいこの世界に来てなにをやっているのだ?
人は独房に閉じ込められると閉塞感やらなんやらで息がつまってしまい、絶望するらしい。そしたら嫌いな猫でも、本でもたとえ人でも魅力的に感じるのかもしれない。
疲れ果てて死相をおびている男の寝顔を見やる。
ゲームのNPCたちに囲まれたこの世界。つまり私はコイツと一緒にいる必要なんてないんだ。ゲームのイベントのときだけ利用しあう関係であれ。
なぜこうなってしまったのか。あの思いが頭をよぎってしまった。一瞬私らしからぬ弱気になってしまった。
ドアをあけると無機質な空間。自身で選んだわけでもない家財宝具に囲まれ・・・。私はゾッとしてしまったのだ。
お化け屋敷とかでもいっさい怖がることもない私。かなりグロ耐性もあることを自覚している。
それなのにどうして・・・。とてつもなく寂しくなってしまったんだ。
無言でスッと足音を忍ばせベットに潜り込んだ私。
彼は無言でそっと背中をむけ受け入れてくれた。(ただ寝返りをうっただけ。)
*****
「ねえ。私たち現実世界に帰れるかな?」
小声でぼそりと弱音をはく私。夜弱音をはくことは多いが朝はくのは私史上初のできごとである。
そして。信じられないことだが、私たちと言い切ってしまう私がいた。
もし、私がこの世界に一人取り残されてしまったら、ものの数時間のうちに発狂してしまうに違いない。
もしコイツが私をおいていったら、幽霊になって子孫までたたるだろう。当然だ。
いったん頭をリセットして今日起こりうるイベントを頭の中でトレースした。
今日はたしか・・・。そう。悪役令嬢の私が鳥に姿を変えられてしまい、オツカレッスさまが本物の王子さまであるがゆえのファインプレーで悪役令嬢のことを救ってくれるのだが・・・。
これではヤツに借りを作ってしまうことになる。大問題だ。
なんとしても避けたい。ヤツに借りだなんて・・・。想像するだけでゾッとする。ああなんてことだ・・・なんてことなんだ・・・。
どうにかしなければ・・・。
起きてから問おう。君は鳥になりたいか、救う方になりたいかと・・・。どっちかというと、コイツが私を救う保証なんてないから。
いや待て。そう悲観してはダメだ。これからはいやいやながらも手を取り合って行く仲ではないか。
なんだまだコイツ寝ているのか。全く肝っ玉が座ったやつだ。被告席に座るあいつらのように!!(怒)
*****
目を覚ますと痴女がいた。おれの上に布団越しにまたがっており、どうやらおれになんか命令をしてきそうな顔をしてやがる。
「おい。お前なにしてるんだよ!? 夜這いか?」
「む、むう。いやこれが私流の起こし方だが!? あ、いや。そうじゃない。そうじゃないんだ。」
「早くどけよ! 重いんだよ!」
ドゴオンと打ち付けられる拳で枕がえらい音で凹んだ。ブルルッ。このゴリラ女めえええええ!
「もう良い・・・。お前がなれ。私はお前を助けない。」
「なにが!? おい。早まるな。」
「はーはっははっはは! そうだ。最初からそうするべきだったのだ!」
ヤバい。ヤバいって。コイツとうとう正気を失いやがったなああ? 目があれだメンヘラあなたを殺しますバージョンである。
どうしよう。コイツ以外人がいない世界だとおれはほんの少しだけ、ホントの雀の涙程度だが不便を感じてしまうだろう。
この世界の知識があるコイツを利用できなくなるのもかなり手痛いことである。
どうにか正気に戻さなくては。なら仕方ない。気が全くもって進まないが、コイツの言う通りにしてやろう。
「ああ。分かった。お前にはこれからもお世話になるだろうしな。要求をのもう。」
「本当か!?」
「ああ。」
「二言はないな!?」
「当たり前だろ。」
「そう。では朝食へ行きましょうか。」
そういってヤツはおれにそっと手を差し伸べたたせた。
鼻歌まじりに廊下を軽やかにかけ振り返りおれを誘う彼女の表情は、きっと彼女が愛するひとへむけるものなのだろう。
まあとにかく、イベント開始時まで彼女は多いにご機嫌だった。
時間、場所、シチュエーションすべて彼女の言うことに従った。
もう窓から夕陽がみえる。一見そとからみると2人は完璧なおしどり夫婦のようにベットにお互いを見つめあいながらうつ伏せになり。お互いの瞳を見つめて微笑みあう。
「ああ。やっぱりオツカレッスさま外見だけは美形ね。」
「おう。なるほど。ファンタジア、顔だけは可愛いらしいな。」
2人のセリフはおもっくそクソであるのはおいておいて。
そっと互いに優しく頬に手を触れ合う。
ふわりと舞う花びらのように優しく。
「んで。どうする? この後。」
「うるさい。」
ああ良い笑顔だ。
「ほら、窓から光が差し込んできたでしょう? 紫色の危険な光が。」
「おう。」
「あなたは今から鳥になるのは話していたわよね!?」
「ああ。」
「そして私が助けることになる。あなたを見つけ出して。」
「分かった。約束だからな。」
「もちろんよ。私を信じて。」
ほら良い笑顔だ。
「ほらもう変わり始めた・・・。準備は良いかしら?」
だから笑顔が。
写り始めた景色。おれは紫の呪いの光の中へ彼女を道ずれに飛び込んだ。
彼女はまるで敵を丸のみにした蛇のような艶やかな笑みでおれににこういっていた。
”さ よ な ら ”
誰がお前なんか信じるかよ。噓のような笑顔に価値はない。
お前ならこうするって思ってたさ。しかし誤算がある。どうしよう。冗談半分だと思って聞き流していたものの、おれの姿は本物の鳥へと変えられてしまっていた。
最後の腹いせとばかりに巻き込んでやった。
フハハハハハ。どうしてこうなった。
こうしておれたちは異世界鳥生活1日目がスタートしてしまった。
読んでくれてありがとう♪