乙女ゲームに恐怖する
ロビ〇ソン・クルー〇ー。昔読んだなあ~。乙女ゲームだとこんな感じかなあって感じです。
いったん考えをまとめてみる。
そう今の私は悪役令嬢のファンタジア・・・。そしてこの世界は私が中学生のときに大変ハマっていた、”「ヒロイン不在の悪役令嬢ってもはや私がヒロインなのでは!?」”という悪役令嬢ものの作品とシチュエーションと物語の始まりが全く一緒だったのだ。
確かそう始まりは・・・。こうだった。
~突然湯気に視界が包まれて私は思わず眉をひそめた。
ここはどこ!? そして私は何をしているの? 手に握っているタオルとそれが押し当てていたものに思わず悲鳴をあげた。
「キャアアアアアア!!」
「どうしたんだファンタジア?」
腰にタオルを巻いただけのイケメンがクルリと振り返った。
「え、え? えええええええ!?」
これは私が中学の頃読んでいたネット小説の”「ヒロイン不在の悪役令嬢ってもはや私がヒロインなのでは!?」”に出てくる王子さまではないですか?
物語は中盤まで進んでいたのだろうか? 一緒にお風呂に入る仲まで進んでいたようである。
そしてこの容姿の男性。こんな素敵な男性は間違えようがない。私の推しキャラのオツカレッスさまである。
金色の絹のようなストレートヘアに星空のようなダークブルーの瞳、筋骨隆々の肉体美。
あああああ。考えるな・・・! 私!!!!~
確かそういう流れの話だった。
転生者が物語の中に取り込まれ、推しと結ばれるハッピーエンドを迎えてから現実世界に戻るというストーリー。
安直ながらも話のテンポの良さと悪役令嬢とオツカレッスさまとのやり取りが尊かった。大変ご愛読させていただいたものである。
それがあのチキン野郎と一緒にくることになるなんて(涙)
思わず枕に涙をこぼした。ヨヨヨ・・・。私は無力だ。なんて情けない。
「あのまだ起きているかしら?」
「おう。」
王子がおうなんて言うなっての。(大変理不尽)
「私に手を出したりでもしたらもいでやるわ。」
「なんだと!? 誰がお前なんかに? 笑わせてくれるな。早く寝ろよゴリラ裁判官。」
カッチーンときたが売り言葉に買い言葉である。それにお互いさまなのだ。
2人はお互いにすぐに両想いになり、厳密には違うがその晩のうちに蜜月関係になる。
だが、相手はオツカレッスさまではない。少なくとも中身が。
そう彼は私の一番知られたくない唯一の秘密を知る、現実世界の隣人。にっくきやつである。
ああもう! そんなやつと良い感じの夜なんて過ごせるわけないじゃない。
だいじょうぶ。時間さえたてばきっと元の世界に戻れる。
それはそうとして彼と屈辱の同衾をすることになった。
夜がふけていく。となりの男が不安でなかなか寝付けない。自意識過剰なのは分かってるけど。どうにもこの気持ちは拭えない。
「なあ。まだ起きてるか?」
「・・・。」
「おれには好きな女がいるから。そいつ以外には興味ねえよ。まあ寝れているならべつに良いけどな。」
そのひと事で私はひと息つくことができた。彼が嘘をついていないとも限らない。だけどそのひと言はきっと真実に違いない。
なんせ裁判官の私が言うんだ。間違いない。思わず微笑んでしまった私に自分でも驚いた。
*****
朝目覚めと犬猿の仲の男が側で眠っている。
私が元悪役令嬢で男が攻略対象で私の現夫である。お互いに中身が違うけれどそれは問題ではない。必ず元の生活に戻りたい。
何としても現実世界に戻らなくては。こんな男と関わっている場合ではないのだ。
ただこれだけは言わせてくれ神。なんで最初の場面じゃなくて私たちもう結婚してハッピーエンドを迎えているんですか!?
確かに! 原作はそこからがメインの話でしたよ!? それは分かる。分かるのだが・・・。納得がいかない! いかなすぎて死にそう。
ああ神よ私を守りたまへなんて心もないセリフを吐くときが来るなんて。
だが運命のいたずらというひと言では済ませられないだろう。許せない。私の身体を休日の1日がかりで奪い去り、貴重な時間をつぶす。
それだけでは飽き足らず、悪役令嬢ものの本の中へ飛ばすとは!
この中途半端な時期に! そう今は物語中盤。
これからいろいろイベントが待ち受けていて! ああ考えるだけでキレそう。
今朝はヨーグルトを食べて胃を守らなければ。
最初は見かけだけでも一緒にいれば周りに怪しまれないと思っていたので不本意ではあるが彼と一緒に食堂に向かっていた。
だがゲームの強制力とでもいうのだろうか。これは推測であるが、日常生活を過ごしていて、周りはなにも言ってこない。
何というんだろう。周りがNPC感が拭えないというか。動いて話して生きているとうな振る舞いをするものの魂が感じられない。
というのも、私が思いがけず突き飛ばしてしまった小姓が床に転んだものの痛そうなそぶりもなく、ただ何事もなかったように歩き出すのを今朝見てしまった。
私は心配になって彼の元へ駆け寄り、肩をゆすった。
「ねえ。だいじょうぶかしら? 痛かったでしょう? ごめんなさいね。」
今でも忘れない。彼の虚ろな瞳が・・・。
あれは人形だ。NPCだ。
人が人形を怖がってしまうという傾向にあるというのは有名な話なので私も知っていた。
ホラー映画に殺人人形や模型などが出てくるのはその影響だ。
おかしい。この世界観は私の知っている乙女ゲームなのは間違いないのだ。
だが、それだけではなかった。ここは生きている人、生き物がいない世界。
形こそ生きているもののデストピアの世界だったのだ。
それに気づいて私は寝室へと猛ダッシュでベットにいうる彼をたたき起こした。
「ねえ。ちょっと! ねえってば!? 大変なのよ! とにかく起きて!」
「なんだよゴリ、すまない! ごめんマジで寝ぼけていたんです! つい心の声が漏れてしまって! ゴゴホンッ。どうしたんだい。ファンタジア。」
「キモっ。」
「その悪態をつく口はこれか~!?」
怒りに身を任せて飛び掛かってきた奴の拳を一発食らってやってから返り討ちにし、私はフウとため息をついた。
「どうだ!? 落ち着いたか?」
「ええ。おかげさまで・・・。」
親の敵でも呪い殺せるような恨めし気な目で彼は睨んできた。
「落ち着いたかしらだろ? このアホ。」
なんだもっと強くドツいてやろうか?
「なんだよ!? お前が言っていたんだろ? この世界で私に合わせなさいとかなんとかよお!? おれも現実世界に帰りたいからなるべくボロを出さないように外に出るのも控え、召使いどもともお前の指示どうりにしかしゃべってねえよ。それをお前が破るってんなら。なにしやが・・・。ムグッ。」
「私の勘違いだった。すまない。いいか。この世界には生きている人が存在しないんだ。今さっき確認してきた。」
「ハハッ。異世界転生でんな話聞いたこともねえよ! おれが信じるとでも!? 全くふう。バカにするのもたいがいにせえよ!?」
せせら笑う男に私はとどめをさす。
「なら・・・。見て来れば良い。なんならそこのテーブルの上にある果物ナイフで小姓でもメイドでも刺してみろ。彼らからは血が出ない。文字通り生きていないんだ。NPCなんだよ。」
私の真剣な悲しい響きの声に彼はようやく焦りだした。
「おい・・・。マジかよ。マジなんだな!? 噓だったらお前・・・。分かった。おれは何をすれば良い?」
「なんだ? やけに素直だな・・・。まあ良い信じてくれて助かった。」
「とりあえず、ゲームを進めるにあたってイベントというものがあるのは知っているな。」
ゴクリと唾を飲み真剣に見つめて来る彼のまなざしを肯定ととろう。
「これから先、もしかしたらいくつものハプニングが起きるかもしれない。」
「あ、あれとかか?」
「なんだ!? 先にしゃべってくれ。あまり時間はないが。」
「おれが風呂にいったら、お前が先に入っていて理不尽に暴力をふるわれたりだとか? ゴクリ。」
ちがうちがうちがーう! 時間の無駄だから怒らない。がまんだ私。
神、なんでこんなアホと異世界生活送らねばならないのですか?
「例えばだ・・・。この先悪役令嬢こと私がなんども敵の襲撃をうけたり理不尽な事故に巻き込まれたりする。そしてこのゲームはわりと自由度が高いゲームでな。主人公はいくども危ない目にあいながらも綱渡りの選択を重ねていく。」
「ほうほう。」
「そして、コホンッ。ここが重要な部分だが、主人公が命がけで生き残りを目指さないと攻略対象そう君のことだ・・・。君との親密度は上がらず、現実世界に戻ることができない。」
「え・・・。え・・・!? それってつまり・・・。」
「ああ。」
「おれがお前を好きにならないといかんのか?」
「ああ。」
おいおいおいおーい! こらアホのくせに死神をみたみたいな顔するな! 私とて乙女のはしくれ(たぶん)傷つくぞ普通に!?
だが私はあえて怒らないで・・・。グググッ。
「この後のイベントオツカレッスは死ぬ。」
「ん!? いやちょっと待って。おれ死ぬの? なんで? いやほんとどうにかならないマジで!?」
微笑ましいほどのうろたえっぷりだ。
「ああ。」
「助けてくれ! ゴリ、女神さま。どうか! おれはこんなとこで死ぬわけには! まだアイツとの約束も果たせていないのに!」
「なんだと!? 誰がゴリ女神さまだ! お前なんか死んでしまえ!」
ついでみたいに死亡フラグを立てまくるな!
「そんなこと言うなよ。。。いや待て。ゲームなら生き返る展開とかあるはずだ。そこんとこどうなんです?」
「ああ。私が中学のときにハマっていた乙女ゲームの小説だからなあ。ファンタジアとの真実の愛によるキスだそうだ。どうする? 私はお前が嫌いだ。」
「あああああ。終わった・・・。詰んでるやんこれ。どうすんの? これマジでどうすればいいんだよおおおおおお!(涙)」
「そこが私も頭が抱えているところでな。オツカレッスさまならともかく、中身がお前となると。うん・・・。無理だな。」
「諦めるなああああ! 諦めたらそこで試合終了だあああああ! おれを好きになって? なあマジで頼む。」
「いや何度頼まれても私には無理だ。」
「だよな。右に同じだ。」
「いやお前は違うだろ? 自分で言っちゃなんだがまあそこそこ美女な私と一緒にいる時間がもらえているのだぞ? ありがたく思え。」
「フッ。」
コイツ。。。鼻で笑いやがった!? クッ。こんな屈辱は初めてだ。
あえて頼みごとをしてみる。
「大人しく死んでくれ。そしたらなんとか頑張って蘇生してやる。」
「あの。おれ蘇生されたら何になるんですか。」
「良くてゾンビだな。」
彼は右手を大きく振りかぶりストレートパンチをしてきた。
「良いパンチだ。」 平手で防いでみせる。
仕事終わりにキックボクシングジムに通っている私を舐めるなよ。しかしコイツなかなか身体鍛えているな。良い体幹をしている。
自分の身体でもない身体をここまで操ってみせるとは。いや転生だとまたなにか違うのか?
「なるほど。とりあえず身体を動かしてからだな。」
悪役令嬢と攻略対象はその晩熱い拳を打ち付けあった。
読んでくれてありがとう♪ 更新予定日。。。前倒しで投稿してしまいました。3連休なので頑張って後2話ほどかけたらなあって次第です。そのかわり水曜投稿ぶんないかもです。