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キミと僕の約束、それは世界を守る誓いの聖約  作者: はるたん
第一章 『彩菜サルベーション』
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07 兄を追い出したい妹vs妹たらしな兄

「え、なんだなんだ?」

「式守さんが……声を荒げた?」


 などと、動揺した声が飛ぶ中、凛祢の隣に座っていた少女が、あーっ!と何かを思い出したように目を丸くした。


「なんか名前に聞き覚えると思ったら、もしかして凛祢のお兄さん……⁉」


 するとそれを合図とするように、クラスメートたちにざわめきが伝播していく。


「えっ? 凛祢のお兄ちゃんって、八歳の時の式守があげようとしてたバレンタインチョコを食べたっていう、あの?」

「産みの両親(クズ)に捨てられて、引きこもりかけたのを式守が引っ張り出して、無理やり公園を連れまわして高熱をだしたっていう、あの?」

「一年前の正月に目にミカン汁が飛んで、目がァァァ!って大騒ぎしてたっていう、あの?」


 ——待て待てなんでクラスにそれ知られて……というかちょっと落ち着け。

 ——ここは魔術師を育成する機関……そんな場所にうちの妹がいるわけが。


 と思い、改めて顔を見るがもう否定できないまでに瓜二つ。というか完全に本人——茉弘の妹・式守凛祢その人だった。


「…………」


 しかし凛祢は、そんな周りの声が聞こえていないのか、睨みつけるように茉弘を見つめたと思えば、姿がかき消えた。

 気づけば一瞬のうちに凛祢が目の前にいた。そして、物凄い剣幕と憤りの色を帯びた目で茉弘を見上げながら、言葉を続けてくる。


「——もう一度聞くわ。なんであんたが〈庭園〉にいて、魔女様と一緒にいたの? いえ——そもそも、どうして魔女様はあんたをここに連れてきたの? さっきの魔女様のお言葉が聞き間違いじゃなきゃ魔術師の素質があるらしいけど?」


 凄まじい威圧感を発しながら、凛祢が問うてくる。

 殺気でもあり、覇気でもあり、剣気でもある——ありとあらゆる感情が含まれた不可視の威圧力。茉弘はこの瞬間、不倫したらこういう風に女性につめられるんだろうなあ、などとくだらない事を考えた。それに気づいてか、溜まりに溜まった苛立ちをぶつけるように机を思いっきり叩いた。


「今、別のこと考えてたでしょ」

「な——何のことでしょう?」


 凛祢が言うと、茉弘は喉を震わせた声を発しながら目線をそらした。

 当然、凛祢が逃がしてくれるわけもなく。


「今ならまだ間に合う。荷物まとめてさっさとこの〈庭園〉から——」


 と、凛祢が言葉を紡ごうとしたとき。


「……っ、凛祢!」

「——へ? は、はいっ!」


 それよりも早く、茉弘は凛祢の名前を叫び、凛祢の身体がビクッと浮いた。


「凛祢——」

「な、なによ……」


 色々、頭の整理が追いついていない。

 凛祢がなぜこの学園にいるのかとか、この邂逅が彩菜によって意図して仕組まれたものなのかとか、気になることがたくさんありすぎるのだ。

 ——が、とにもかくにも今もっとも気にしなくてはこの状況をどうするかだ。

 相手は凛祢。むやみに安易な偽りを囀れば確実に見透かされてしまうだろうという確信しかない。

 だから茉弘は——開口一番に言おうとした、偽りなき本心を口にすることにした。

 驚いて告げられなかった、最初の言葉を。


「プレゼントしたシャンプー使ってるんだな。嬉しいよ」

「——へふぁあ⁉」


 茉弘が言うと、凛祢はどっからでてるのかわからないような声を発しながら、近くの机に頭を打ちつけた。

 頬が真っ赤に染まり、目は右往左往。更におでこはちょっと赤くなっている。


「……こ、こんな手でわたしを手負いにしても逃がさないわ。さあ、どういうことか説明を——」

「髪も伸びてて大人っぽくなったね」

「ぐぇっほげっぶぐぉ……ッ!」


 凛祢が、あまり大人っぽくない残念な咳き込み方をしながら、足元が危なっかしくふらふらし始めた。


「大丈夫か? 今背中擦ってやるから——」

「………………ッ⁉」


 瞬間、凛祢はビクッと身体を震わせると、茉弘の手から逃れるように物凄い速さで距離を取った。

 そしてそのまま、今度は顔全体を真っ赤にし、涙の滲みかけた双眸を以て茉弘を睨みつけてくる。


「な、なにする気よ! この変態! 気安くレディーの身体に触れようとするなんて不潔よ不潔! 汚物よ!」

「いやだって、おまえが辛そうに咳き込んでから」

「………………っ、許さない! あとで絶対問い詰めてやるんだからぁぁぁぁぁっ!」


 凛祢はそう叫ぶと、教室の扉を乱暴に開けて、廊下へと走り去ってしまった。

 それかすぐになぜか破壊音が聞こえ、やばい止めないと、と言って数名の生徒たちが大慌てで凛祢の後を追いかけていった。

残された茉弘とクラスメートたち、そして教室には何とも形容しがたい空気が流れ、ホームルームの終了を示すチャイムが鳴り響いた。


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