40-2 車内のひと時
そうして、車内での兄妹と侍従の間で雑談に花が咲いたり、魔女の一面が伺える座学が進んだりする中。
「そういえば、『帝安の煉城』ってどんなところなんですか?」
ふと、思い出したかのように茉弘が二人に問う。
知ってる情報は、『極彩の庭園』と同じ魔術師育成機関であることと、兎咲雛がそこにいるということだけで、帝安についてのことは茉弘はあまりよく知らなかった。
「どんなところと聞かれると、少々説明が難しいですね」
「そうね。あそこは国内にある育成機関の中でも少し特殊な場所だし」
「特殊な場所?」
茉弘が首を傾げると、希愛が端末を手にして説明を始めた。
「茉弘も知っての通り、雛さんは現在『帝安の煉城』に属しています。その理由は、彼女が持つ「調律術式」が煉城が抱えている問題の対処に最適だったためです」
「その問題って、『終末因子』の?」
「その通りです」
終末因子――。
『世界を終末させる可能性』を持った事象や存在の総称。
この世界は常にその可能性に脅かされており、その終末に対処するのが魔術師の役割だ。
茉弘が庭園に来てから、三度相まみえる機会があり、その脅威と総称の由来となる『終末』を身を以て体験している。
「『帝安の煉城』は、かつて神話級終末因子が出現した場所であり、その爪痕が残る場所なのです」
「神話級終末因子って、確か彩菜さんでしか対処できないっていう、とんでもないやつじゃないですか」
「はい。出現したのは十五年前になりますが、彩菜様と当時の煉城の学園長によって追い詰め、あと一歩というところで逃げられてしまいました。その結果、討滅期間を超えてしまい多くの死傷者と爪痕を残すことになってしまったのです」
「彩菜さんと煉城の学園長が組んでも倒せなかった……?」
「驚くのも無理はないわ。わたしでさえ、初めて聞いたときは驚愕したもの」
驚くべき事実に茉弘が驚愕した表情をすると、凛祢が過去の心情を思い出したのか冷や汗を垂らしながら言った。
「わたしも実際に目にしたことはないけど、あれが残した『災禍の爪痕』は何度か見たことがあるわ。でも、正直見ない方がいいわよ」
「それは……なんで?」
「耐性のない人間、もっと言えば高い魔力を有してるじゃないと見ただけで魂を強制的に壊されるのよ」
「魂を壊す?」
「人が持つ固有の精神性に干渉することで力任せにそれ破壊し、精神の死――ありていに言えば『終末』をもたらします」
「なっ……」
希愛の口から語られたその情報に、茉弘が驚愕の声を漏らす。
それを見たうえで希愛はこう続けた。
「それこそが、神話級終末因子――【至高天】。あなたも耳にしたことがある【黒龍】と同じ、世界で一一番目に発見された必ず討滅しなければならない『生きる終末』です」




