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キミと僕の約束、それは世界を守る誓いの聖約  作者: はるたん
第二章 虚歌の再臨祭
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40-1 車内のひと時

「問7――魔術師の素養において、重要とされる三大要素を答えよ」

「魔力制御と魔術教養と物質の創造力ね」

「友情と努力と勝利」

「茉弘、不正解。凛祢さん正解です」

「そ、そんな馬鹿なっ!? 復習したはずなのに!」

「なにを参考にしたのですか(したののよ)?」


 希愛が茉弘にぴしゃりと言い放つ。

 現在は、京都にある帝安の煉城を目指して車で移動中。乗員は式部茉弘、白波希愛、式守凛祢。

 運転は庭園所属の熟練運転手。

 本来、凛祢が同伴する予定など微塵もなかったのだが、希愛が把握していないところで外出申請をティア当てに出していたようで、気づいた頃には受理されており、あまつさえ茉弘と希愛しか知らないはずの出発時刻と集合場所まで把握して、集合の三〇分前に来た茉弘よりも早くいたのである。

 集合一五分前に来た希愛が、数秒ほど金縛りにあったかのように微動だにしないで凛祢を半眼で見つめたのだが、「ああ、見間違いではないのですね」とあっさり事実を受け止め、すんなり同伴を許して現在は茉弘の右隣に座っている。

 ちなみに現在は、日課の魔術座学の授業中。

 内容はシンプルで一〇問の座学問題のうち七割を正解させるというものであるが、現在の茉弘の成績は七問中三問正解で、次間違えたらゲームオーバーの崖っぷちである。


「お渡しした参考書の中に少年漫画を入れた覚えはないのですが」

「え、でも確かにそう書いてありましたよ。ほら」

「どれどれ……『これであなたも魔女の弟子、誰でもわかる魔術の基礎知識集』……【庭園の騎士】第三位による名言セレクション?」

「ああ、それ私が貸した本じゃない」

「どう見てもそうでしょうね。というかいつの間に出版を? 庭園の書店でこのようなものは見かけてないのですが」

「出してないわよ。申請はしてみたんだけど、なんでか要件通らなくて世界で二冊だけの限定本になったわ」


 やれやれと凛祢が首を振るのを横目に希愛がパラパラと中身を読んでいく。

 そして数分したのち、凛祢が感想と完成度の高さについて聞くと、希愛の口からは「凛祢先生の次回作にご期待ください」とのコメントが吐き出され、彼女の中で即打ち切りとなったようだ。


「茉弘、今後自己学習や復習をする際は、わたしのほうに何の参考書を使うのかを報告するようにして下さい。あなたの教育に必要かどうかを彩菜様に確認していただきますので」

「ちょっ、それされたら私の未申請参考書とかを魔女様に見られるんじゃないのよ!」

「まだあるのですね」


 希愛が半眼のまま言ってくる。

 茉弘と凛祢がバックの中を漁り、各々がこれはどうだと言わんばかりに参考書を車内で広げるが、その半数以上が凛祢作の参考書で、希愛が貸し出していた参考書の一〇冊のうち三冊しかなかった。

 ちなみに凛祢参考書は七冊入っていたが、やはり使い物にならない本だった。


「次に外出する機会があるのであれば、持っていく物もわたしがある程度精査します」


 希愛が淡々とした口調でそう言うと、小さくため息をついた。


「凛祢さん、今更過ぎますが質問してもいいでしょうか?」

「なによ改まって。聞きたいことがあるなら何でも聞きなさい」

「では。――なんでここにいるのですか?」

「あんたが乗っていいと言ったからだけど?」

「では次に。――何しに来たのですか?」

「なにって――暇つぶし?」

「……次に、まさかとは思いますが、その暇つぶしのためだけに貴重かつ特別な()()()()を使ったわけではないですよね?」

「そうだけど?」

「…………騎士に対して大変失礼であると承知の上で申し上げますが――あなた馬鹿ですか?」


 凛祢がそれはもう澄ました顔で答えると、希愛が頭痛が痛そうな様子で頭を抑えた。

 言葉をだいぶ選んだのだろうが、それ以上の表現が見つからなかったのか、彼女にはあまり似つかわしくない暴言が飛び出し、中の人(さいな)がどんな表情と心境なのかを茉弘は憶測交じりに察するのだった。


「しょうがないじゃない。『騎士』は庭園での最高戦力の一角で普通の外出申請だけじゃ庭園からでれないし」

「それはわたしとて理解していますが、そもそもなぜ暇などと言い出したのですか。第一級の討伐ができないとは言え、それでも十二分に騎士の責務を全うできるだけの任務や急務はあるはずですが」

「そんなのもう一〇〇件近くも処理したわよ。そしたら報告部から「壊滅(ワンパン)しすぎです。下の者が育たないので壊滅(ワンパン)するのやめてください」って言ってきたのよ!」

「「ああ……なるほど……」」


 凛祢の嘆きにもにた言葉に、茉弘と希愛は苦笑いでそう返した。

 使用していい権限の階位に制限がかかっていても、そもそも第二顕現時点で殲滅力の高い凛祢の武装術式では放置したら世界を終末させる因子の第三級は当然、第二級でも皆等しく雑魚(モブ)扱いなのだ。

 だからこそ騎士に任命されてるのだろうが、今の凛祢はその強さゆえに暇になったのだ。

 左隣に座る希愛からも「だからあんなに討滅報告書が山積みだったのか……」と中にいる学園長(むかばなさいな)の心の声を小声でぼやいていた。


「でも、だったら昨日の時点で言えばよかったくない?」

「言ったらこの子に拒否られるのは目に見えてたもの。だったら当日に押しかけて正式な書類を叩きつければ押せるって思ったのよ」

「え、希愛って押しに弱いんですか?」

「そういうわけではないですが、まあ勢い任せにいろいろ言われるのはあまり好きではないです」

「ほらね!」

「なぜドヤ顔」


 希愛が怪訝な顔で半眼を作る。


「まあ、もうとやかく言っても仕方がありません。先ほど彩菜様に依頼し『帝安の煉城』への入場許可証を発行していただくように手配いたしましたの。――あとできついお叱りがあると思いますが、逃げずに謹んで受けて下さい」

「うひょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「なぜそこで喜ぶのですか」


 奇声を上げて喜ぶ凛祢に、希愛が半眼を作って見つめながら続ける。


「改めてお伝えいたしますが、くれぐれも粗相のないようにお願いします。――茉弘。今回の目的はあくまでも治療であることを忘れずに」

「……わかってます」


 言われて、茉弘は開いていた参考書を閉じると、しゃんと背筋を伸ばした。それに倣ってか、右隣の凛祢もまた居住まいを正す。一つ結びで後ろに束ねられた長い髪がさらりと揺れた。

 そう。今回の目的は再三言われているように、治療が目的である。

 帝安の煉城と呼ばれる、極彩の庭園と同じ魔術師育成機関にいる茉弘の癒え切らない魔力回路の修復のための旅である。


「あ、あとこれもお伝えしておきますが、ことが順調に運び、滞在時間が余るようでしたら多少の観光は許しますとの彩菜さんからの伝言が――」

「レッツゴー京都ぉぉおおおおお!!!!」

「レッツゴー金閣寺! 映画村! 八つ橋ぃぃぃいいいいい!!!!」

「――先が不安すぎる」

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