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キミと僕の約束、それは世界を守る誓いの聖約  作者: はるたん
第二章 虚歌の再臨祭
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39 出発前《プレリュード》


 ――京都旅行出発日、その朝。

 希愛の姿ではなく本来の彩菜の姿で、庭園最深部の地下に訪れていた。

 兎咲雛の力を借りるために『帝安の煉城』へ赴くため、数日庭園を開けることになる。

 そのため、ティアに一度会う必要があった。


「――あら。そちらのお身体でとは……大丈夫なんですの?」

「白波希愛のままではここに入る権限がないからね。希愛には悪いが、やむないだろう」

「いっそ仮申請してしまえばいいのではないですの?」

「そんな軽々しく秘匿区画への入館IDを発行出来たら苦労していないよ。ちょっぴりここのルールを決めた過去のわたしの軽率さに腹が立つけどね」


 秘匿区画に制限なく入れる者は、彩菜とティア。

 そして彩菜の承認を経て任命される『騎士』、あるいは庭園の重要機関の最高責任者クラスたちのみ。

 ここを創ったときに彩菜本人がそう決めたのだ。

 だから中身が”無華花彩菜”であっても、外身が庭園の一生徒である”白波希愛”へは許可できない。

 我ながら面倒、というか対応力にかける規則を設けたものだと頭を掻いた。


「それで、これから愛の逃避行に行かれるあなたがここに何の用ですの?」

「数日とはいえ、庭園を留守にするからね。挨拶ついでに返すものを返しにきただけさ」


 そう言って彩菜が手をかざすと、手元にいくつもの色を灯しながら光が滑らかに揺らめく水晶玉が出現した。

 それは二か月前、イリ―ティアを介して手にしていた『無華花彩菜の術式』。

 その複製を納めたものである。


「あらあら――てっきりそのままお持ちになるのかと思っていましたのに、返されるんですの?」

「本来これは、特別な緊急措置の最終手段の一つだ。バタついてて返還は遅れたが、役目が終わったならばあるべき場所に戻すのが筋だろう」

「それはそうですけど――本当にいいのですか?」

「君の懸念はわかるが、今回はただの治療目的で『あれ』の討滅じゃない。だから置いていくんだ」


 今回の旅の目的は、ただの『視察』と茉弘の治療だ。

 あの時とは違い、『帝安の煉城』には『最強の魔術師』の力は必要ない。

 そう判断しての、自身の術式返還だ。


「――わかりました。あなたがそうおっしゃるのでしたら、お預かりいたしますわ」


 彩菜の意思を汲み取ったのか、ティアは小さく頷くとコンソールを操作する

 ティアの操作で起動した運搬用の小型滑空機が、彩菜の手元にある水晶を手にすると、それをしっかりと抱えて保管庫内に格納すべく飛び去って行った。


「以前と変わらずの『最令承認(マスターアプルーブ)』での保管設定にしましたわ。」

「助かるよ、ティア」


 ここで用は済んだ。


「じゃあ失礼するよ。庭園のことは任せたよ」

「ええ。存分に愛の逃避行を楽しんでくださいまし」

「…………別に逃避行じゃないんだけど」

「あら、”愛”に関しては否定しませんの?」

「………………行ってくる」


 そう言って耳と頬を赤くしたまま、早足に去っていく彩菜が出ていく。

 扉が閉まると、ティアは(さいな)が先日弟子(まひろ)にしたのと同じ表情を浮かべた。


「恋を知らなかったあなたが、そんな表情をするなんて――『娘』として少し妬いてしまいますわね」


 ここにはいない、出生の異なる同族の少年の顔を映像で見つめながら。

 『娘』は暗き仮想の空を見つめ、複雑な娘心を高鳴らせるのだった。



 





 

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